「双極性障害についての100の質問」企画、第3回目です。
今回のテーマは、
精神科医が患者さんにこれだけはやって欲しいと思うことは何??
後半の「診察の場面編」です(*^^*)
※番号順に記事にするのではなく、目についたものから回答させていただきます。
病気と付き合う長い時間の中で、診察の占める時間はわずかですが、治療においてとっても大事な時間です。
下記の点を意識して通院すると、実りの多い診察になると思います。
Contents
①必要な情報をしっかり伝えること
まずは、現状を医師が把握するために必要な情報をしっかりと伝えることです。
当たり前のようでいて、十分できている人は意外と少ないかもしれません。
診察は、患者さんが思いつくままに話して、医師が追加で質問・聞き取りをするパターンと、医師が項目ごとに質問・聞き取りするパターンがあります。
医師側も漏れが無いように必要な情報を聞きりますが、
「これ、言っておくべきかな?まあいっか」
「先生、忙しそうだし、また今度にしよう」
などと、情報提供をためらったり、諦めていませんか??
医師との関係が良好でないと言いにくいこともあるかもしれませんが、あなたが伝えそびれたことは、実は治療においてとっても大事な情報かもしれません。
そのことについて下記にまとめます。
また、帰宅してから「あ!大事なことを伝え忘れた!」と思いだすタイプの人は、手帳やスマホのメモアプリに箇条書きにして伝え忘れのないように工夫しましょう。
症状についての話
とくに診断されたばかりの人は、何が症状なのか、何が悪化の注意サインなのかピンとこないことも多いでしょう。
毎回必ず話題にするべきことは、個別のケースにもよりますが、おおむね以下の通りです。
①気分レベル
-5 ~ 5の範囲内で、0の「正常気分」を含めて11段階で評価します。-5は最もひどいうつ状態、 5は最もひどい躁状態です。
「この〇週間は-1~ 1でした」などと表現し、マイナスorプラスの数字が大きくなってくると悪化を考えて対処することになります。
②睡眠状況
必要な睡眠時間は個人差があり、日本人は世界的に見て睡眠時間が短い傾向にありますが、病気の有無にかかわらず7時間は必要とされています。
双極性障害では、通常、軽躁・躁状態で睡眠時間が短くなります。
うつ状態では睡眠時間が短くなるタイプの人と長くなるタイプの人(過眠)がいるので、自身のタイプを把握することが大事です。
睡眠時間は現在の気分レベルを推し量る材料です。
今のところ正常気分圏内でも、睡眠時間の短縮が躁症状をひき起こすこともあるので、睡眠時間が短ければ適切な睡眠をとるように話し合うこととなります。
③食事状況
こちらも睡眠と同様、気分変動のバロメーターです。
軽躁・躁状態では、極端に少ない食事量で十分と感じたり、たくさん食べているのに活動量が多いために体重減少をきたすことがあります。
うつ状態では、単極性のうつ病と同じく食欲が落ちて食べられなくなるタイプの人と、非定型的なうつ症状の過食が出るタイプの人がいます。
食事量や体重の増減を話題にし、気分を評価したり、食生活の助言をします。
④活動状況
1日の活動の量や質を検討します。
仕事や趣味に長時間没頭する、普段より外出が増える、遅くまで帰宅しない、普段しないような活動をすんなり行える、遠方に出かけるなど、活動の量や質の亢進が目立つようなら、軽躁・躁状態を考慮します。
いつもできていることができない、作業効率が落ちている、やる気が起こらない、誘いを断ってしまう、家事ができない、お風呂に入ることや歯磨きも億劫など、活動の質や量の低下が目立つようなら、うつ状態を考慮します。
⑤対人関係
軽躁・躁状態では、感情的な表現、誇大的な発想、行動を制止・考えを否定されることへの反発、金銭トラブルなどから、家族や友人・職場の人とのいさかいが増えることが多いです。
うつ状態では、人付き合いが減り、こもりがちになります。
躁とうつが交じり合う、混合状態でもイライラが目立ち、大事な人との関係にヒビが入ることがあります。
意識せずして周囲の人との関係が良好に保たれていれば正常気分であることが多いでしょう。
⑥その他
その他、軽躁・躁状態では、アイデアがどんどん浮かぶ、浪費する・ギャンブルにのめりこむ、性的逸脱があるなど、女性では生理周期に合わせて気分変動への影響があるなど、ほかにも話題にするポイントはあるので、気分の波を繰り返す中で、自分独自のポイントを把握していくことが大事です。
しっかり情報を伝えていただき、医師と話し合う中で、躁(軽躁)状態、うつ状態になりそうな予兆、注意サインを見つけて、共有しますので、ささいなことでもまずは伝えてくださいね(‘◇’)ゞ
薬についての話
双極性障害の患者さんは病状コントロールのためにほとんどの方が内服をされています。
一般に、薬には主作用と副作用があり、主作用がいまいちの場合・副作用が許容範囲を超える場合には薬の量の増減や、変更・中止が必要となります。
双極性障害でよく使われる薬でも、軽い副作用から重い副作用(命に関わることも)まで色々起こりえます。
例えば、以下のような薬。
・炭酸リチウム(リーマス)
⇒脱水状態、発熱時など、体内のお薬の濃度が上昇したときにリチウム中毒を起こすことがあります。
・ラモトリギン(ラミクタール)
⇒投与初期と、増量したタイミングで特に注意が必要ですが、皮疹(皮膚にできるブツブツ)から致命的な状態をきたすリスクがあります。
双極性障害では、気分安定薬として、リチウム、抗てんかん薬、抗精神病薬が主に使用され、症状によっては睡眠薬や抗不安薬の併用、まれに抗うつ薬が使われることもあり、様々な副作用、有害事象が起こりえるため、気になったことがあれば早めに相談してください。
よくある、眠気などの副作用も日常生活に支障がある場合などは我慢せずに主治医に伝えてくださいね(*^^*)
②宿題をやること
診察の時間外にもかかわることですが、「宿題をやること」も非常に大切です。
「宿題って何??」
と思われた方も多いでしょうか。
精神科医は診察の中で色々な宿題を出しています。
「睡眠時間や気分レベルの記録をしてみましょう」
「こういった兆候があったときにはこんな風に対処してみましょう」
「家族さんと○○について話し合ってみましょう」
「寝る前に○○する習慣をつけていきましょう」
「しんどい時の対処行動をピックアップしてみましょう」
などなど(*^_^*)
医師から投げかけることは治療にとって、要するにあなたにとって大切なことです。
その場限りの提案になってしまったらもったいないです。
持ち帰って、次の診察までの間に手をつけましょう。
もちろん症状がつらい時もあるので、完璧にできなくても大丈夫です。
「毎日は無理だったけど、2日に1回は記録できた」「少し対処法について考えることができた」「家族の一人には思い切って話してみた」など、宿題の結果を持って次の診察にのぞめたら、より有意義な診察になりますよ。
医師側も治療に前向きに取り組む患者さんのことはより応援したくなるものです。
宿題の結果を確認して、より良い助言ができるように心がけていますので、無理ない範囲で取り組んでくださいね。
③家族、支援者に診察に入ってもらうこと
最後の「してほしいこと」は家族や支援者に一緒に診察に参加してもらうことです。
症状の重い人(躁状態、うつ状態どちらも)は付き添いの家族など同伴で受診することが多いですが、症状が軽い人、家族や支援者との関係が不良な人はしていないかもしれません。
双極性障害は、その病気の理解を周囲にしてもらうことはもちろん、「現状はどうか」を本人と家族・支援者で確認し合うこと、「この状態になったら○○する」とルール作りをすることが病状コントロールに有用です。
医師が介在しなくても上手に上記のことができている人もいますが、そうでない方はぜひ検討してみてください。
同席することで、家族・支援者には「○○はこの先生に診てもらってるんだなぁ」と安心していただけ、何かあった時に主治医に相談するハードルが下がります。
必須ではありませんが、家族・支援者から「一度診察に同席したい」と言われたならチャンスです。
「私の病気について主治医から話を聞いてほしい」とお誘いするのもいいですね。
現時点で同席できていないのは「家族・支援者との関係が不良だから」という場合も、病気に対する無理解や偏見がそうさせていたり、患者さん自身が病状のためにうまく家族・支援者とコミュニケーションできないことも関与しているかもしれません。
きっとそんな場合にも助けになれると思います(*^_^*)