「双極性障害についての100の質問」企画、第10回目です。
今回のご質問は、
「うつ病相でもできる範囲で活動したほうがいいと聞きますが、やっぱり寝ているだけより、何かしたほうがいいですか?」
の続編。
「双極性障害のうつ病相で状態に応じて行うべき具体的なやることリスト・その1」
です(・∀・)
前回、うつ病相のしんどい時にもその時々でできる活動をしていくべきということを、理由とともに解説しました。
参考:双極性障害、うつ病相ではできる範囲で活動すべき?or 寝ているべき?
エネルギーのある時期に、次のうつ病相に備えて「病状のレベル別やることリスト」を自身で、または支援者・医療者とともに作っておくのが吉です。
それが時間的に難しい人、一緒に考えてくれる人が今はいない人、病気の診断から間もない人に向けて、具体的な活動内容・うつ状態のレベルに応じてやることリストを解説していきます。
単極性のうつ病の方にも共通することは多いので、参考にしていただければ幸いです。
では、うつ状態の度合いが重い順番に見ていきましょう。
Contents
レベル①精神症状がMAX、寝たきり、自身では何もできない状態
抑うつ気分は重度、何もする気が起きず、食欲もわかず、何かモノを口に入れても砂を噛んでいるようで、夜は眠れず、朝は早くから目が覚め、入浴はもちろん、歯磨きや髪の毛を梳かすこともできず、悲観的な考え、躁状態での行き過ぎた行動への後悔、自分を責めるような考えに憑りつかれ、終日ベッドに張り付いているような状態です。
人によっては言葉を発することも、ほんの少しの身動きもできなくなる場合があり、その時は入院しているでしょう。
また、非定型うつの症状が出る方は上記と違って、過眠・過食(長時間眠る、食べすぎる状態)となります。
こんな時にできる活動はあるでしょうか?
お察しの通り、ほとんどありません(;´・ω・)
これほど重度のときは、心身ともに休むことが最優先事項で、内服だけはきちんと守り、食べられるだけのものを食べ、ひたすら休むしかありません。
逆に言えば、お風呂なんて入れなくていいですし、歯磨きは虫歯が心配なのでせめてうがいだけでもしてほしいところですが、まあ良しとして、食事だって誰かに買ってきてもらったもの食べるだけで、簡単な料理すらできなくていいんです。
やることリスト①「お薬にしっかり頼る」
この時期は睡眠薬もしっかり使って、とにかく十分な時間眠ることが回復につながる行動となります。
ネガティブな思考もあまりに強度であれば頭が休まりません。
この時期はぐるぐる思考のセルフコントロールは難しいでしょうから、適宜頓服を使うなど、お薬で和らげることも大事です。
やることリスト②「カーテンを開けておく」
もし可能なら、カーテンを少しだけ開けておきましょう。この時期はベッドから出てカーテンを開けることもつらいと思いますので、常時少し開けておくのが良いです。
朝、自然と日差しが部屋に入ります。
ガラス越しでも日光の成分は目の奥に届き、24時間を超える体内時計がリセットされ、健康的な生活リズムが戻ってきます。
ちなみに、メラトニンやセロトニンの適切な分泌に大事なのは可視光なので、UVカットのガラスでも大丈夫です。
1階に住んでいる方は視線が気になり、難しいかもしれません。通常気分に回復したときに、窓にすりガラス様のフィルムを貼っておき、次のうつ病相に備えましょう。
(フィルムは100円ショップで買えます)
レベル②精神症状がやや和らぎ、家の中で最低限の活動はできる
しっかり休息がとれたら、次の段階です。
生活リズムは乱れがちでも、日中少しは体を起こせて、少なくても何か口にでき、着替えや週に1〜2回の入浴は何とかこなせ、ちょっとスマホをいじったり、TVを見たり、家族がいたら簡単な会話はできる状態です。
まだ、外出することは難しく、予約した通院日に行けるかどうか不安になるくらいでしょう。
ただ、このレベルになると、意外とできることは増えてきます。
やることリスト②「午前中に日差しを浴びる」
レベル①の②と同じ主旨ですが、朝に日差しを浴びるようにします。
窓辺にイスを持ってきて、体調に応じて、5分でも10分でもいいので、座って過ごしましょう。
やることリスト③「呼吸法、瞑想をする」
座った状態で、しんどければ横になった状態でもよいので、呼吸に集中したり、瞑想する時間を作りましょう。
意欲や体力によって、はじめは1分間からで大丈夫です。少しでもネガティブなぐるぐる思考から離れることが大切です。
やることリスト④「朝起きたら何か噛む」
起床後の食事は何でも食べられるだけで良しですが、可能ならしっかり噛む必要のあるものを用意しましょう。パンやおかゆしか口にできないときは、ガムやグミを少し噛んでみましょう。
リズムよく噛むことで覚醒が促され、セロトニンが分泌されることで、抗うつ効果を得られます。
やることリスト⑤「決まった時間に起きる」
これはどの病相でも(うつ病相でも躁病相でも通常気分時でも)大事なことです。双極性障害の病状コントロールには、生活リズムの安定が最優先課題です。
寝る時間は日中の過ごし方やさまざまなイベントにより変動しがちなので、まずは起きる時間を一定にすることです。
はじめは2度寝してしまったり、寝過ごしてしまうこともありますが、できる日が少しずつ増えていきます。
やることリスト⑥「体を起こす時間をつくる」
レベル①のときに体力が低下していることもあり、次の段階にレベルアップしたときに備えて、日中少しずつ体を起こして過ごす時間を意識して作っていきましょう。
この際、何かしなくちゃと焦る必要は無く、可能なら先ほどの呼吸法や瞑想をするか、リラックスしてボーっと過ごしましょう。
もちろん無理は禁物。まだ休息する時間もたくさん必要ですから、座って過ごす時間はじわじわと増やしていきましょう。
レベル③精神症状がさらに和らぎ、家の中で最低限の活動+αのことができる
ここからは今まで挙げたことにプラスする形で書きます。
①〜⑥はレベル②のときより、少し量や質を上げていきましょう。
やることリスト⑦「何か家事をひとつする」
とくに家族がいる場合、一方的にお世話になっていて、自身は無力な存在と感じてしまいがちです。
病状から家事が厳しいときは、もちろんそれらは免除されて治療に専念することが前提ですが、少し何かできそうになればハードルの低い活動から取り組みましょう。
はじめは、夕食の皿洗いのみ、洗濯の取り込みのみなどの活動とし、「できない時はごめんね」のスタンスで、ゆるくでも「継続できること」が大事と考えましょう。
「一日でもできないとダメ」思考は回復のために手放しましょう。
これは、本人も家族もです。
ささいなことでも家族に貢献でき、感謝を伝えてもらうことで自己効力感がうまれますし、体力の向上にもつながります。
やることリスト⑧「朝、日中用の服に着替える」
外出は通院以外には厳しいレベルですが、夜の衣類からは着替えて過ごしましょう。
うつ状態の時は非常に面倒くさく感じることですが、気分の切り替えに着替えはてきめんですし、今後の安定した外出のために朝の着替えの習慣を作っていきましょう。
こちらも、できない日があっても「そういう日」とだけ認識して、自分を責めたり悲観することはしません。
コツとしては、無難な組み合わせの服を2パターンくらいで「今日はAセット」「明日はBセット」などと決めて定位置に置いておくこと。メンタルへの負荷を少しでも軽減する工夫をしましょう。
やることリスト⑨「週に1回お風呂に入る」
うつ状態では、ほかの整容と同レベルかそれ以上に、お風呂に入ることも相当な難関となります。単身生活だとお風呂の準備からスタートなのも厳しいですね。
しんどいときはお風呂に入らないのも1つの選択です。
ただ、お風呂はリラックス効果や、深部体温を上げることでその後に深部体温が下がって寝つきやすくなる効果があるので、頑張れそうな日は入れるとベターです。
まずは週に1日だけは入浴してみましょう。それも、段階を踏んで、最初はシャンプーできなくてもOK、体を洗えなくてもジャブンと湯船に浸かれたらOKなどとします。
それ以外の日はシャワーのみ、濡らしたタオルで拭くのみ、もしくは洗髪だけするなど、しんどさに応じて行動しましょう。
繰り返しますが、「どれもしない」選択ももちろんありです。
やることリスト⑩「体調の記録をする」
レベル②からできればベストですが、このレベルくらいになれば確実にやり始めたいことです。
これも通常気分の余裕のある時期にどんなやり方で記録するかを考えておきます。アプリでも、紙のノートでも、取っつきやすいやり方、ハードルの低いやり方を選びましょう。
記録内容は、睡眠時間、食事回数、気分レベル、服薬チェック、対人の状況などなどを、個々で設定しましょう。
考えがまとまらずしんどい時は「睡眠時間」だけでも記録しておくと良いです。
「いつも通り不調な気がするけど、記録では睡眠時間が増えている。少し良い方向に向かってるのかも?」
などと認識できます。
この他にも、音楽を聴く、ぬり絵をする、負荷が軽度で楽しめそうな娯楽があれば少し取り入れてみましょう。
以上、「双極性障害のうつ病相で状態に応じて行うべき具体的なやることリスト・その1」について解説してみました(‘◇’)ゞ
長くなったので、2つに分け、次回は同テーマの「その2」をお送りします。
「その2」のレベル設定は④〜⑥としています。