「双極性障害についての100の質問」企画、第15回目です。
今回のご質問は、
「朝、決まった時間に起きるコツについて知りたいです。自宅で治療に専念する生活を送っていますがこれだけはどうしても出来なくて、ずっと出来ないままでもいいのか?と思ってます。」
です(・∀・)
双極性障害に限らず、精神疾患のある方は、いや、現時点で明らかな病気はない方でも、朝決まった時間に起きることの価値は大きいものです。
起床時間のばらつきは、メンタル面への悪影響、日中のパフォーマンスの低下、さらには夜の睡眠の質の低下を引き起こします。
これは逆もまた然りで、メンタルの状態の不良や、日中の活動の不十分さ、睡眠の質の不良は起床時間に影響します。
定時起床の前提条件と、定時になかなか起きられない背景を3つあげて解説していきます。
Contents
定時起床をしたいならまずはコレに取り組もう
起床時間を一定にしたいなら、睡眠の質が良好であることが前提となります。
良い眠りが十分にとれてこそ、自然な覚醒が得られます。
良質な睡眠をとるための工夫は以下の通りです。
・軽くでもいいので朝食をとる(できればしっかり噛めるもの)
・午前中に少なくとも15分、日差しを浴びる
・日中の活動量を増やす。少なくとも30分の散歩をする(就寝時間間近の運動はNG)
・就寝の2時間前より入浴。40℃の湯舟に15〜20分浸かり、深部体温を上げ、寝つきをよくする
・カフェインは15時以降はとらない
・就寝時は靴下をはかない
・室温を適温に保つ(局所が温まる方法はNG)
・夕食後は部屋の照明を落とす
・スマホやPCの画面を見ない
・眠気が来てから布団に入る
・寝室は完全に暗く・静音にする
まだまだ睡眠の質を上げる方策はありますが、上記を参考に生活習慣を改善し、まずは夜間の睡眠の質を上げることに注力してください。
睡眠の質が上がると自然と決まった時間に起きられるようになるケースも多いので、定時起床が目標の方は、必ずここまでは達成してください。
ちなみに、「7時間は眠れないとダメ」などと、時間数にこだわる人がいますが、現在ではその考えは否定されています。
一般に、7時間前後の睡眠が理想で、それより短時間過ぎたり、長時間過ぎると寿命を縮めるという報告はありますが、その人その人に適した睡眠時間があるので、それを自分の体を使って実験し、確認していく作業が必要です。
朝目覚めたときに「スッキリ」しており、日中の活動がスムーズに行え、自身の力が十分に発揮できていると感じ、昼食までに眠気が起こらない状態のときの睡眠時間があなたにとってベストの睡眠時間です。
本題に戻りますが、「決まった時間に起きれない」には3つのシチュエーションが考えられます。
1つ目は、アラームを設定しているのに、止めてしまって覚醒できない状態。
2つ目は、覚醒はするけれど、億劫感が強く、布団から出られない状態。
3つ目は、「定時起床」の設定時間がその人のクロノタイプに合っていないため起きづらい状態。
順番に見ていきましょう。
①アラームを設定しているのに、止めてしまって覚醒できない
アラームの設定を工夫する
決まった時間に起きたい人はアラームを設定していることがほとんどだと思います。
人の睡眠は、ノンレム睡眠とレム睡眠を繰り返しており、睡眠の序盤にノンレム睡眠と呼ばれる深い睡眠が現れ、明け方になってくると、レム睡眠の割合が多くなってきます。
レム睡眠のタイミングで目が覚めると、起きやすく爽快感が得られるとの報告がある一方、ノンレム睡眠中はアラームが鳴っても気づかなかったり、不快な目覚めになりがちです。
よって、レム睡眠中に覚醒することを目指すわけですが、レム睡眠がいつ起こっているかを予測することは難しいため、7時に起きたいならアラームを6時40分と7時に2回セットするやり方がオススメです。
スヌーズ機能でも同じだと思われるかもしれませんが、間隔が短すぎるとノンレム睡眠中に何度もアラームが鳴ることになるので、2回アラームを設定するのがやはりオススメです。
睡眠計を取り入れる
ベストな時間に起こしてくれる機能のついた睡眠計も費用面がクリアできれば試す価値があります。
腕時計型、リストバンド型、据え置き型、マット型など、さまざまな商品があるので、一度チェックしてみてください。
カーテンを開けておく
これはすぐにできることなのでぜひやっていただきたいのですが、寝室のカーテンを開けておくことです。
季節や天候によって明るさの変動はあるものの、太陽光は非常に明るく、その明るさだけでも覚醒が促されます。
夏の晴天時は約10万ルクス、冬の曇りの日は約15,000ルクス、雨の日でも約5,000ルクスあり、一般的な室内は750〜1,000ルクスであることと比べると太陽光のパワーは圧倒的です。
太陽光を浴びることで、睡眠を促すメラトニンの分泌が抑えられ、覚醒を促すセロトニンの分泌が活発となり、相乗効果で目が覚めていきます。
不眠症や季節型のうつ病の方にオススメされる光療法に、「高照度光照射療法」というものがあります。
一般的には、5,000〜10,000ルクスの光を30分〜1時間照射します。
高照度光照射装置を導入する
カーテンを開けておくだけで上記の効果は十分あるのですが、人工光でも効果はあるので、興味のある方はAmazonなどで「光療法 ライト」と検索してみてください。
ライトを設置すれば、季節や天候に関わらず、一定の光で覚醒できるのでおススメです。
とにかく行動する
「やる気が出ないから○○できない」
というフレーズをよく聞きますが、実は、
「○○に取り掛かること」によって「やる気が出てくる」
ということが脳科学の研究から知られています。
覚醒も同様で、
「目が覚めないから起きられない」
と考えがちですが、
布団をめくって体を起こし、床に足を付け、歩きだすといった行動によって覚醒スイッチが次々にオンとなっていきます。
逆説的に感じるかもしれませんが、一度試してみてください。
②覚醒はするけれど、億劫感が強く、布団から出られない
この場合は、まだうつ症状が強く、その症状の改善が優先される時期だと考えられます。
定時起床を課すことはハードルが高いと思いますので、まずは決まった時間でなくとも、午前中に起きられたらOKとするなど、クリアできそうな目標を設定しましょう。
もし可能なら、布団の中で覚醒を促す活動をしてみましょう。
・顔のふき取りシート(サボリーノなど)を枕元に置いておき、さっぱり感を得る
・歯磨きシートで口の中をリフレッシュする
・ガムやグミを噛む
・5分だけでも座った状態にトライする
布団から出られないことに対する罪悪感や無力感を和らげる効果も少しあると思います。
③「定時起床」の設定時間がその人のクロノタイプに合っていない
人間は基本的は「昼に活動し、夜間に眠る」生き物ですが、活動に向く時間帯には個人差があることが知られています。
これを「クロノタイプ」と呼び、研究者によってタイプ分けには違いがあります。
「日周指向性」「概日リズム型」と呼ばれたりもします。
俗にいう「朝型」「夜型」はなじみのある言葉ですが、これがクロノタイプです。
クロノタイプのチェックサイトがありますので、興味のある方は調べてみてください。
簡易的には、用事の無い日の活動の傾向をみることで、その人のクロノタイプを知ることができます。
「朝早くに覚醒し、昼間に活動的で夜は早めに就寝するタイプ」
「午前中は調子が上がらず、夕方以降に活動的となり、遅い時間にやっと寝るタイプ」
あなたはどちらに近いでしょうか?
(タイプ分けによっては4つの動物タイプに分けるものもあります)
このクロノタイプは半分くらいは遺伝的に決まるものなので、完全な夜型の人が「6時に定時起床する!」と意気込んでも、現実には厳しいものです。
よって、自身のクロノタイプからずれた「定時起床」を目指している場合、努力の割にうまくいかないことが考えられますので、無難な時間設定に調整することをお勧めします。
以上、「朝決まった時間に起きれない。想定される3つの状況での定時起床のヒントとは?」について解説してみました(‘◇’)ゞ