「双極性障害についての100の質問」企画、第19回目です。
今回のご質問は、
「躁病エピソードの時も日内変動はありますか?」
です(・∀・)
「日内変動」という言葉、あなたは聞いたことがありますか?
おそらく、双極性障害の方より、「うつ病」の方によく知られた言葉だと思われます。
「うつ病」の患者さんでは、朝起きたときに、抑うつ気分や億劫感などの症状が最も強く、「死にたい」「消えたい」気持ちなども、起き抜けに強く感じるケースが多いです。
そして、午前中まではそれなりに症状が強いのですが、夕方以降に徐々に和らいできます。
こういった一日のうちの症状の変動のことを「日内変動」と言います。
夕方以降に本人の自覚症状もですが、周りから見ても少し元気に見えるので、「怠けているだけじゃないか?」などと誤解を生む原因にもなる症状です。
どうして日内変動は起こるの?
この日内変動ですが、どうして一日のうちで、症状がパターン化して変動するのか不思議ですよね。
日内変動が起こる原因はすべてが明らかにはなっていませんが、概日リズム(サーカディアンリズム)の異常が関わっていると考えられています。
私たちの概日リズムは、個人差はありますが、「24.2時間」と言われており、地球の自転周期である「24時間」とは少しズレがあります。このズレを、朝起きて太陽の光を浴びることでリセットしているんですね。
覚醒と睡眠のパターンだけでなく、体内のホルモンの分泌や体温や血圧の調節もこのリズムに従って行われています。このリズムに異常をきたせば、心身ともに不調をきたすことがイメージされると思います。
概日リズムと気分障害に関する研究
2018年5月、概日リズムが乱れると、気分障害(うつ病や双極性障害)のリスクが高まるとした研究論文が発表されました。
・英グラスゴー大学の研究
・37歳〜73歳の9万1105人分の健康データを分析したもの
・夜間勤務、フライトでの時差ボケの繰り返し、概日リズムを乱すような生活をしたことのある人では、気分障害、不快症状、認知機能障害などの生涯リスクが高まる傾向にあった
・気分障害リスクの原因が概日リズムの乱れによるものであり、その逆ではないとの結論を導き出すまでには至らなかった
・気分障害が、概日リズムの乱れに関連していることは示唆された
生活リズムについて主治医から口酸っぱく指導されている方も多いかと思いますが、上記のように気分障害の方にはとっても大事なことなんですね。
双極性障害のうつ病エピソードでは日内変動は見られる?
本題に戻りますが、単極性のいわゆる「うつ病」では、「朝つらく、夕方以降にラクになる日内変動」が典型的な症状です。
一方の双極性障害のうつ病エピソードでは、この逆のパターン「朝は比較的ラクで、夕方以降にグッとつらくなる日内変動」が見られることがあります。
先ほどの概日リズムの異常はうつ病と双極性障害のどちらにも共通するものですが、その異常の質は両者で異なると考えられますね。
夕方以降につらくなる日内変動は「非定型うつ症状」のひとつです。
うつ病の症状としては典型的でない症状を、双極性障害のうつ病エピソードでは比較的多く認めることがあり、それらを非定型うつ症状と呼びます。
「食欲低下」「不眠」「体重減少」「朝方悪化」「気分反応性なし」
などがうつ症状の典型で、その逆の
「食欲亢進」「過眠(寝すぎる)」「体重増加」「夕方悪化」「気分反応性あり」
などが非定型うつ症状です。
ご自身がどちらの症状に近いかチェックしてみましょう。
躁病エピソードに日内変動は??
躁病エピソード時に「日内変動が有るか無いか」についての記載は調べた限りでは出てきませんでした。
(ただ、明確に「無い」とも言えません)
自身の臨床経験でも、例えば「朝にすごくハイテンションで気分もいいけど、夕方以降は比較的落ち着いている」などの訴えも聞いたことがありませんし、入院中の方を見ていても一日の周期的な症状の変動を感じたことは無い気がします。
そういった特徴があるかもしれないと想定して観察していないので、見逃している可能性はあります。
質問者さんはおそらく躁病エピソード時に一日のうちでの症状の変動を感じているのでしょう。
特定はされていないけれど、そう感じている方はもしかするとそれなりにいらっしゃるのかもしれませんね。
もし、毎回の躁病エピソード時に同じ日内変動があるとしたら、病状のコントロールにおいて有益な情報かと思いますので、ぜひ主治医に伝えてみてくださいね。
以上、「うつ病でみられる日内変動。躁病エピソードの時も日内変動はあるの?」について解説してみました(‘◇’)ゞ