双極症(双極性障害)100の質問

双極性障害、うつ状態での過食のコントロールが難しい人への4つのヒント。

精神科医・さくら(@sakura_tnh)です。自身の知識と経験を活かし、人をワンランク上の健康レベルに底上げ=幸せにすることを目指しています。

「双極性障害についての100の質問」企画、第33回目です。

今回のご質問は、

「双極性障害のうつ傾向の時に特に過食が激しくなります。意思の力で抑えようとしても我慢ができず食べてしまいます。何か対処方法はあるでしょうか?」

です(・∀・)

双極性障害のうつ病エピソードでは、一般的に食欲低下・体重減少の見られる「うつ病」と違って、過食・体重増加の見られる「非定型うつ症状」を呈することがあります。

※うつ病と診断されている人の中にも非定型うつ症状が出現することはあります。

参考:うつ病でみられる「日内変動」。躁病エピソードの時も日内変動はあるの?

健常な人から見ると、「食欲があるなら元気なんじゃないの?」「外見からはとても病気には見えない」などと感じられがちですが、

食べ過ぎてしまうことは、本人にとって大変苦痛な症状です。

双極性障害の患者さんにおいては、

「ストレス・不安・抑うつ気分から過食⇒食欲・摂食量のコントロールができない⇒体重増加⇒自信喪失・抑うつ⇒そのストレスからまた過食」

というパターンに陥りがちです。

特に女性では、TV・ネットの情報や周囲の言動から「やせている=価値がある」との認識を知らず知らずのうちに植え付けられている人が多く、食行動についてはナーバスになる方が少なくありません。

双極性障害に摂食障害が合併することは多い

質問者さんの「過食」がどの程度かは分かりませんが、少なくともコントロール不能だという実感はあるようですし、「食べてストレス解消」と言った、健康な人のストレス解消法の範囲は超えているようです。

双極性障害と摂食障害の併存はよく見られるものです。

2000~2011年にスタンフォード大学のクリニックに通院した503人の双極性障害・外来患者について観察した研究を紹介します。

主な結果は以下のとおりです。

①503例の患者のうち、76例(15.1%)に摂食障害を認めた。

②摂食障害と関連が認められた因子は以下のとおり。

女性である、不安障害がある、アルコールおよび物質使用障害がある、パーソナリティ障害を持つ、小児期に双極性障害を発症、10回以上の気分エピソードがある、自殺企図歴がある、現在うつ病エピソード中である、悲哀・不安の症状がある、抗うつ薬を使用中、双極性障害の発症年齢が低い、現在の全体的な双極性障害の重症度が高い

③現在うつ病エピソード中の患者のうち、摂食障害を合併した29例は、摂食障害の合併の無い124例と比較してうつ病の回復が有意に遅れていた。

④8週間以上、気分エピソード(うつ・軽躁・躁のいずれも)が寛解している患者のうち、摂食障害を合併した10例は、摂食障害の無い95例と比較し、急速にうつ症状が再発する傾向があった(有意差は無し)。

参考:Int J Bipolar Disord. 2017;5:25

うつ病エピソード中、毎回過食に悩むという方は、②の因子に思いあたることがいくつかあるかもしれません。

そもそも、うつ病エピソード中は不安が強まる方が多いですし、ケースによっては抗うつ薬を使用する方もおられるので、摂食障害の症状が出やすい時期なんですね。

15.1%の患者さんに摂食障害が見られたとのことですが、診断基準を満たさない程度の食べ過ぎる症状に悩む方もそれなりの数にのぼることが推測されます。

サンプル数は少ないものの、双極性障害患者の18.6%で過食行動の基準を満たしたとの報告もあります。

この報告では、過食行動のない患者と比較し、過食行動のある患者は、下記の特徴が認められました。

①双極性障害にかかった期間が短い

②不安および感情反応レベルが高い

参考:Boulanger H, et al. J Affect Disord. 2017 Aug 30.

①については一つ目の報告と相反するように見えますが、サンプル数が少ないため参考程度にしてください。

②については一つ目の報告とも重なります。不安の強い人、何らかの刺激やエピソードに対しての感情反応が強く出る人は、過食行動のリスクが高そうです。

まずは主治医に相談を

過食に悩んでいる方は、主治医にそのことを相談し、それが摂食障害に該当するほどの症状かどうかを確認してもらいましょう。

気分エピソードが落ち着くとともに食行動の異常が落ち着くならまだ良いのですが、気分エピソードが落ち着いても食行動の異常が持続したり、食行動の異常がただ「たくさん食べてしまう」だけでなく、代償行為と言って

「食べたものを吐く」
「下剤や利尿薬を乱用する」
「極端に食事を制限する」

などの行為を伴うようになることが危惧されます。

明らかな摂食障害であれば、専門医への受診や、認知行動療法などの治療が必要となることがあります。

内服薬の見直し

先ほどの研究にもありましたが、まれに使用される抗うつ薬により摂食障害のリスクが上がるようです。その場合、抗うつ薬を減量・中止することが病状から困難であっても、他の抗うつ薬に変更することは検討可能と思われます。

また、摂食障害のリスク因子には入っていませんが、バルプロ酸(デパケン)やオランザピン(ジプレキサ)、クエチアピン(セロクエル、ビプレッソ)で食欲亢進の副作用があるので、これらの薬を飲み始めてから、もしくは増量してから過食傾向が出現・強まったケースでは、その影響も考慮する必要があります。

ただ、病状からやむを得ず使い続けなければならないこともありますので、ご了承ください。

過食をコントロールする方法

ここでは、明らかな摂食障害ではないけれど、うつ病エピソード時に食べ過ぎてしまう方を想定して、過食衝動や食べる量や質をコントロールする方法についてまとめます。

①過食をコントロールしようとしない

逆説的ですが、「コントロールしなければ」と思うことがストレスとなり、いっそうの過食をひき起こしてしまうことが考えられます。

それよりも、うつ病エピソードから脱することを優先事項と考えて、生活リズムの是正や日中の活動に取り組むことです。

通常気分に回復すれば、それに併せて過食の問題はおさまるものだからです。

うつ病エピソード中は少しぽっちゃりな自分でOKとし、気分安定を得られたら、「腹八分目、おやつ少な目」の食生活を心掛け、気分のアップダウンと体重のアップダウンが反比例するイメージで過ごします。

実際、気分エピソードにより数キロの体重増減はよく見られ、体型が大きく変わる方もおられます。

内科疾患など、体への影響はまったく心配が無いわけではありませんが、「過食してしまう」ことで自分を責めたり、後悔の念に打ちのめされるくらいなら、

「今は過食してしまう時期」

と割り切ることも手です。

②食べ物を買い置かない

人目につくところでは少し食欲を抑制できるけれど、「1人でいると歯止めが効きにくい」という人は多いでしょう。

また、「手の届くところに食べ物があるので、つい食べてしまう」ということも共通することと思います。

よって、自宅や自室におやつや簡単に食べられるものを買い置きしないことが大事です。

ひどいうつ状態では買い物に行くのが難しいので、やっと出られた時に買い込んでしまいがちですが、基本的にはその日に食べる分をその日に買ってくるスタイルにしましょう。

「面倒だな」と思われるかもしれませんが、その面倒さと過食によるつらさと天秤にかけてみてください。

家族が買ってくる場合は、食行動のことで困っている旨を説明し、まとめ買いスタイルを変えるのが難しければ、本人の手の届きにくいところに食べ物を仕舞うなどの工夫をしてもらいましょう。

③「食べてはいけない」思考を変える

有名な「シロクマのことを考えるな」という実験がありますが、人間には「○○のことを考えるな」と言われると、「いっそう○○について考えてしまう」という心理があります。

また、何かを禁止されると、それを破りたくなる「心理的リアクタンス」という心理が働くことも知られています。

上記から、過食に悩んでいる人は「食べ物について考えることを禁止」したり、「食べることを禁止」することは逆効果です。

もしくは、一時的には意思の力でコントロールできても長くは続かないでしょう。うつ病エピソード中にある人なら、すでに意思力は損なわれているわけですから、より困難なことです。

「おやつは禁止」「主食はできるだけ食べない」などのルールを作る人は多いですが、否定的なニュアンスにするより、肯定的な表現にすることをおすすめします。

食事なら、「このお皿に乗るだけの量は食べてよい」「野菜は多く食べてもOKとする」

おやつなら、「一日にひとつ、とっても美味しいおやつを食べる」「夜のリラックスタイムに自分をいたわるためにおやつを食べる」

などのように、「食べることに関するルール」を肯定的な表現にしてみましょう。

④極端な食事制限をしない

近年、低炭水化物ダイエットが主流となり、「体重コントロールのためには主食を抜く」ことを多くの人が試したことがあると思います。

過剰な炭水化物をとることは心身ともに良くないですが、炭水化物が全体のカロリーの4割以下になると死亡リスクが高まるとの報告もあります。

また、満腹感を得るには、たんぱく質をとることが大事と言われています。

加えて、メンタルヘルスを向上させる食事療法としては地中海食がおすすめなので、取り入れられる範囲で取り入れてみましょう。

以上より、うつ病エピソード中、食べる量は少し多めになることを許容するとしても、食べるものは選びましょう

うつ状態では思考力が低下していますから、食べるものも通常気分の時に考えてルール化しておきましょう。

例えば、やや割高かもしれませんが、コンビニで調理済みの魚やサバ缶も購入できるので、しんどい時はそれでたんぱく質をとるなどと想定しておきましょう。

もちろんガチガチのルールでは挫折したときに自責的になるリスクがあるので、ジャンクフードも週に1回はOK、一日に少量はOKにするなど、守れそうなルールにしましょう。

④3度の食事と2回の間食をとる

双極性障害では、生活リズムの安定のために、決まった時間に3食とることを勧めますが、加えて、食事と食事の間、10時・15時あたりに少しおやつを食べると良いです。

過剰な空腹感が出ないことで衝動的な食行動のリスクを下げます。

おやつと言ってもナッツやチーズなどでOKです。

⑤食欲を感じた時の対処方法を用意する

不安を感じたら呼吸法をする、少し歩いてみる、などの対処法(コーピング)を持つ人は多いと思います。

食欲に対しても、同様に自分なりの対処法を持っておくことが大事です。

下記に例をあげますので、気になる項目があれば取り入れてみてください。

呼吸法をする

片手をおなかに、片手を胸に当てます。

1.ゆっくり4秒かけて鼻から息を吸う
2.息を止めて7秒そのままでキープ
3.ゆっくり8秒かけて口から息を吐く

この方法で、何度か深呼吸すると、副交感神経が優位となり、リラックス効果が得られます。

身体を動かす

ストレッチ、ヨガ、散歩など、ご自身のやりやすい活動を考えてください。

散歩は外に出るので、一旦食べ物から離れることができて効果的です。

香りで食欲を抑える

ペパーミント、グレープフルーツ、パチュリなど、食欲を抑制してくれる香りがあります。

食べたい衝動が出てきたら、これらのアロマオイルを嗅ぐと食欲が和らぎます。

オリーブオイルの香りも効果があるようなので、わざわざアロマオイルを買わなくても代用できます。

ガムを噛む

とりあえず、何か口にすることで口寂しさを緩和します。

リズムよく噛むことでセロトニンが分泌されリラックスする効果も得られます。

コップ1杯の水を飲む

水を飲むことでリラックス効果が得られます。

1杯のお水をゆっくり時間をかけて飲みましょう。

いずれもマインドフルネスを意識して、ひとつの動作や体の感覚などに集中してみましょう。

身体の手入れをする

マニキュアを塗る、爪を磨く、丁寧に歯を磨く、眉毛を整える、手や顔をマッサージするなど、自分をいたわるような活動をしてみましょう。

自分を大切にする行動により、セルフコンパッションの要素も得られるかと思います。

参考:自分を思いやる「セルフ・コンパッション」を高める6つのテクニックとは?

誰かと連絡をとる

孤独感や不安が食欲につながることもあります。

家族と話したり、友達にラインしたり、ツイッターでやり取りしてみたり、やりやすい方法で人とつながってみましょう。

まとめ

ご存知の通り、食欲のコントロールは健康な人でもとても難しいものです。

うつ病エピソード中は「コントロールできなくてふつう」

と認識して、食べてしまう自分を責めることは止めましょう。

周囲の人はその苦痛を理解し、「食べ過ぎ」「自制心が無い」などと言わずに、一緒にうつ病エピソード中の食事ルールを考え、援助してあげるようにしましょう。

以上、「双極性障害、うつ病エピソード中の過食がコントロール困難な人への4のヒント。」について解説してみました(‘◇’)ゞ

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