双極症(双極性障害)100の質問

双極症、状態安定のためにベンゾジアゼピン系睡眠薬を飲み続けることの是非。

精神科医・さくら(@sakura_tnh)です。自身の知識と経験を活かし、人をワンランク上の健康レベルに底上げ=幸せにすることを目指しています。

「双極症(双極性障害)についての100の質問」企画、第39回目です。

今回のご質問は、

「双極症、状態安定のためにベンゾジアゼピン系睡眠薬を飲み続けることはどうなの?」

です(・∀・)

以下、質問者さんからのメッセージです。

双極症で、気分安定薬の他に長年ベンゾジアゼピン系の睡眠薬を服用中です。無いと眠れません。「ベンゾは依存性があるから使わない流れになっている」と聞くので、主治医に「私も睡眠薬を減らす努力が必要か?」と質問したら、「減らす?ノー!安定させることこそが大切!」と言って、全然減らす話にはなりませんでした。どうせ双極症の薬は飲み続けるのだろうし、睡眠薬も一緒に飲み続ければいい、と受け止めていいですか?
(※記載してあった商品名は控えました)

双極症の方で、気分安定薬や抗精神病薬に加えて、就寝前の睡眠薬を処方されている方は多いでしょう。

気分安定薬・・・リチウム、ラモトリギン、バルプロ酸、カルバマゼピンなど

抗精神病薬・・・クエチアピン、アリピプラゾール、オランザピン、リスペリドンなど

睡眠薬・・・トリアゾラム、エチゾラム、ゾルピデム、ゾピクロン、エスゾピクロン、ブロチゾラム、フルニトラゼパム、ラメルテオン、スボレキサントなど

内服薬の詳細を把握していない方は、ご自身のお薬手帳を見てみましょう。

上記の睡眠薬のうち、「ベンゾジアゼピン系睡眠薬」と呼ばれるもののリスクが近年、注目されています。
(ベンゾジアゼピン系の抗不安薬も同様)

ベンゾジアゼピン系睡眠薬の問題

ベンゾジアゼピン系睡眠薬の主な問題は下記の3つです。

①耐性
服用を続けるうちに、同じ量では効かなくなる。少しずつ必要量が増えていく。

②精神依存
飲まないと不安になってしまう。渇望するようになる。

③身体依存
中断したり、量を減らすと体調に異変が生じてしまう。

脱抑制を起こし、イライラしたり、普段のその人では考えられないような行動に出るリスクもあります。

以前の研究ではベンゾ系の薬剤は認知症のリスクを高めるとされていましたが、これに関してはその後に否定的な報告が出ています。

依存は数週間のうちに形成されます。過量に飲んだり、乱用したりしなくても、医師が処方する、治療に必要な用量でも依存は起こります(常用量依存)。

②③の補足として、内服を中断したり減薬した時、精神症状として不安、焦りなど、身体症状として筋肉の緊張、知覚の過敏さ、頭痛、発汗などの症状が出現します(退薬症状)

これらの症状は個人差が大きく、中断しても特に目立った症状が出ない人もいれば、少々の減量でも症状が出る人もいます。

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は安全??

上記にあげた睡眠薬のうち、ゾルピデム、ゾピクロン、エスゾピクロンは非ベンゾジアゼピン系睡眠薬で、以前はベンゾ系に比べて安全であると考えられていました。

しかし、例えばゾルピデムは、長期的に内服すると、やはり耐性ができ、内服を中断した際の反跳性不眠を起こすことが知られており、ラメルテオン、スボレキサント以外の睡眠薬は要注意と考えておいた方がよさそうです。

反跳性不眠とは??

「反跳性不眠」はダイエットのリバウンドをイメージしてもらうと分かりやすいです。

食事を制限して体重は減ったものの、食事制限をやめるとダイエット前の体重より増えてしまうことがありますよね。

睡眠薬を中断すると、睡眠薬を使用する前の不眠より強烈な不眠が起こることがあり、それを反跳性不眠と呼びます。睡眠薬の飲み忘れ時に感じたことのある人もいるでしょう。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬の継続への不安

これらの問題は、患者さんの間でもよく知られるようになっており、不安に感じられるのも当然のことです。

「長く飲み続けるのはこわい薬みたいだ」
「飲み忘れた日に眠れなかった。依存ができているのかも」
「心配だけど主治医に言い出しにくい」

など、色々なことを感じられているのではないでしょうか?

質問者さんも、双極症のメインとなる薬は長期的に内服するほかないが、ベンゾ系睡眠薬はやめられるならやめたいとの思いであると感じます。

睡眠薬無しで十分な睡眠が取れるならそれに越したことはありません。

一方で、睡眠薬無しには、不眠を起こす元々の病気のコントロールが難しければ、両者のメリット・デメリットを天秤にかけ、睡眠薬を使用するメリットが大きければ、医師は継続使用を勧めるでしょう。

特に、一晩の不眠からあっという間に躁転してしまうケース、生活習慣などの助言をする「睡眠衛生指導」を行い、それに従った生活をしても不眠が解消されないケースには睡眠薬の使用にメリットが大きいと判断されるでしょう。

双極症は生活リズムの安定がめちゃくちゃ大事ですから、睡眠時間や質の確保には特に注意を払っています。

すでに長期使用をしている場合には難しいかもしれませんが、通常気分モードでは使用せず、躁転、うつ転した際、その兆候が出た時のみ使用する形も検討の余地があります。

継続するなら睡眠薬の変更も

質問者さんがいつからベンゾ系睡眠薬を内服されているかは不明ですが、前述の通り、現在はラメルテオン、スボレキサントといった従来薬とは作用機序の異なる睡眠薬もあります。

ベンゾ系睡眠薬を中止していく過程はつらいかもしれませんが、新薬に切り替えていくことは戦略として良いと思います。

ただ、新薬の方で双極症に伴う不眠をコントロールできるかどうかは試してみないと分かりません。

また、減薬の経過中に状態が不安定になるようでしたら、どちらを優先するかは言うまでもありません。その際はいったん減薬は中止し、また状態が安定してからトライすることになるでしょう。

まとめ

ベンゾ系睡眠薬をできるだけ使用しないよう、精神科医も意識するようにはなってきています。

一方で、ベンゾ系睡眠薬のリスクを過小評価している医師がいることも事実です。

また、外来の短い診察時間内ではなかなかベンゾ系睡眠薬の問題や減薬について話し合えない現実もあります。退薬症状が出るとフォローが大変ですから減薬に及び腰な医師もいるでしょう。

もちろん、それは医師の怠慢であり、言い訳です。

質問者さんのようにベンゾ系睡眠薬を止めたい意向を伝えてもらうことは大きいです。

医師側も減らすタイミングを計っていることがあります。

かく言う私も、現状では双極症に限らず担当患者さんの多数の方にベンゾ系睡眠薬を処方しています。

ベンゾ系睡眠薬のリスクの情報提供とともに時間をかけてでも減らすこと、できれば中止することを説明し、順次取り組んでいるところです。

以上、「双極症、状態安定のためにベンゾジアゼピン系睡眠薬を飲み続けることの是非。」について解説してみました(‘◇’)ゞ

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