「双極症(双極性障害)についての100の質問」企画、第41回目です。
今回のご質問は、
「双極症、医師として患者の家族や身近にいる人にお願いしたいことを教えてください。」
です(・∀・)
双極症に限りませんが、精神疾患・障害を持つ人にとって、家族、職場の上司や同僚、友人などはとても大事な存在となります。
お願いしたい3つのことと、具体的なお願いに分けて解説します。
Contents
「双極症(双極性障害)についての100の質問」企画、第41回目です。
今回のご質問は、
「双極症、医師として患者の家族や身近にいる人にお願いしたいことを教えてください。」
です(・∀・)
双極症に限りませんが、精神疾患・障害を持つ人にとって、家族、職場の上司や同僚、友人などはとても大事な存在となります。
お願いしたい3つのことと、具体的なお願いに分けて解説します。
Contents
既出の内容になりますが、やはりまずは双極症についての正しい知識を身につけてもらうことです。
どのくらいの人がかかる病気なのか、原因は分かっているのか、どんな症状が出るのか、どんな経過をたどるのか、どんな要因で悪化するのか、薬はどんなものを使うのかなど、知っておくにこしたことはありません。
患者さん本人のためだけでなく、家族や支援者にも有益なことです。
本人が安定すれば、家族や支援者の負担やストレスは少なくて済みますし、症状と認識できていれば避けられるいさかいもあります。
本人は様々な場面で「分かってもらえない」という気持ちを抱くことが多いものです。
家族・支援者が本人のすべてを分かる必要はありませんし、本人の要求が過度な場合もありますが、基本的なことはおさえておきましょう。
せっかく良好だった双方の関係を壊さないためにも、正しい知識は必須です。
病気とは言え、患者さん本人の症状に振り回されたり、普段の本人とは違った様子を見ることで、家族や支援者は本人に対してネガティブな感情を抱くものです。
病状を把握するのに必要なレベル以上に行動を詮索したり、やることなすことにブレーキをかけるなど、過干渉・過保護になることがあります。
心配も行き過ぎると本人にとってストレスとなります。病気の有無に関わらず、とくに親子関係では過干渉・過保護がトラブルの元になりますが、同様のことと考えましょう。
本人の病気への向き合い方、病状コントロールへの本気さにもよりますが、過度な干渉や保護は関係を悪化させてしまいかねません。
関係が悪化すると、本人の病状コントロールに関与できなくなりますから、ひいては家族もしんどい思いをすることになります。
また、「可哀想」「不憫」などの言葉も控えてください。
本人は「病気を持つ○○さん」であり、「病気の○○さん」ではありません。
病気を持つことは確かに不自由だけれど、必ずしも不幸なことではありません。
お互いに尊重し合い、協力し合う関係でいるよう意識し、病気が安定しているときは「嬉しいことだね」「普段から生活リズムに気をつけているもんね」など、一緒に喜び、本人の努力を支持してあげましょう。
患者さん本人の病状が不安定であれば、家族や支援者は心身ともに余裕の無い日々となるかもしれません。
また、献身的になりすぎて、家族が体調を崩すこともあります。
しかし、心身共に健康であってこそ良質な支援ができるものです。
本人のためを思えばこそ、家族や支援者は自身の健康を気遣い、趣味や元々あった人付き合いを続けること、一日のうちで楽しみだったり、ホッとする時間を持つことが大事です。
「そんな時間は無い」と仰る方もいるでしょう。
本人だけでなく、支援者を支えるための様々なサービスがあります。
訪問看護やヘルパー、デイケアや地活などの通所施設を活用し、家族や支援者の自分だけの時間を確保しましょう。
身を削って本人のために頑張るようなことは、きっと本人も望んでいませんし、意識にはのぼらなくとも、本人の負担となるものです。
本人の病気に覆われた人生でなく、その援助はしつつも家族・支援者自身の人生を謳歌してほしいと思います。
以下は具体的にお願いしたいことをあげていきます。
本人特有の気分の変動をつかむことは病状をコントロールする上で外せないことです。
同居しているなら、毎日気分のレベルを確認することを日課とし、「今日は+2くらいかな?」「私もどう思う」などと、認識を共有しましょう。
気分安定をはかる上で、薬物治療は多くの方で必須です。
とくに服薬が習慣化するまでは、うっかりの飲み忘れや、「たまに飲まなくても大丈夫だろう」という慢心からルーズになることがあります。
指示的になることは避け、「私はあなたに安定してほしいから、飲んでくれたら嬉しい」のような表現ですすめましょう。
100円ショップで売っているカレンダー式のお薬管理ポケットや、服薬チェックアプリなども活用しましょう。
定期的な通院も病状安定に欠かせません。
うっかり忘れることのないよう、カレンダーに書きこんだり、スマホのリマインダー機能を利用しましょう。
本人が診察の同席を望むことがあれば、できるだけ付き添ってあげてください。
落ち着いているときにルールを作り、気分エピソードの兆候が出てきて通院を渋ることがあれば、そのルールを一緒に確認しましょう。
毎回はうまくいかないかもしれませんが、「お互いのために、定期的な通院を約束してたね。私も一緒に行きたいから病院に行こう」と冷静に受診を促してください。
ほかにもあげればキリがありませんが、基本的なことを押さえておきました。
家族さんを含め、本人に近しい人は本人が病気にかかったことに少なからず動揺するものです。
それを乗り越え、本人を支援することは、誰にでもできることではありません。
本人に寄り添えているご自身を、認め、いたわり、癒してあげてほしいと思います。
以上、「双極症、医師が患者さんの家族や身近にいる人にお願いしたい3つのこと。」について解説してみました(‘◇’)ゞ