精神科医・さくら(
@sakura_tnh)です。自身の知識と経験を活かし、人をワンランク上の健康レベルに底上げ=幸せにすることを目指しています。
「双極症(双極性障害)についての100の質問」企画、第42回目です。
今回のご質問は、
「双極症『軽躁状態』とフラットな『寛解』の判断が難しい人への5つのヒント」
です(・∀・)
以下、質問者さんからのメッセージです。
不安が少なく、やる気に満ちている時を「軽躁」、やる気はそんなにないけれども、日々の生活に必要な活動は出来るところを「フラット」と自分では認識しています。この判断基準は妥当でしょうか?
軽躁状態とフラットな寛解期の状態をどこで線引きするかは、患者さん本人も家族もハッキリ分からないことが多いものです。
今回の質問は非常にお答えが難しいです。
質問者さんの仰る「不安が少なく、やる気に満ちている」レベルが、文面だけではどの程度の「不安の少なさ」や「やる気の多さ」か判断できませんし、その程度によってはフラットな寛解期でも「不安が少なく、やる気に満ちている」と表現できるかもしれません。
健常な人を想像してください。
病気とは言えない範囲での気分のさざ波のある中での生活です。
「不安が少なく、やる気に満ちた」日々を送っている人
もイメージできれば、質問者さんのフラットのイメージのように
「やる気はさほどないけれど、日常生活に支障はない」日々を送っている人
もイメージできます。
よって、ここで軽躁状態と寛解期の状態をいくら文字で表現しようとしてみても限界があります。
Contents
そもそもフラットな「寛解期」とは?
寛解期は簡単に言うと、「気分症状を認めない時期」です。
「気分症状」とは、うつ・軽躁・躁などの気分変動からくる症状のことです。
うつ病エピソードで見られる症状
①気分が落ち込む
②興味や喜びを感じなくなる
③食欲が無くなるor増える
④眠れないor寝すぎる
⑤焦りが強いor考えも行動も止まってしまう
⑥疲れやすくなる
⑦自分を責める
⑧集中力に欠ける
⑨死にたい気持ちになる
軽躁病・躁病エピソードで見られる症状
①気分が高揚する
②怒りっぽくなる
③自分が偉くなったと感じる
④目標に向かって活動することが増える
⑤リスクを過小評価した行動(浪費、性的逸脱など)
⑥少ししか眠らなくても元気
⑦注意が散漫になる
⑧よくしゃべる
⑨アイデアがどんどん浮かんでくる
上記のような症状が認められなければ「フラット」な状態にあると考えてよいでしょう。
双極人はいかにこの「フラット」な状態、もしくはそれにできるだけ近い状態を維持できるかが、人生のカギを握ると言えます。
客観視しやすいポイントを現状の判断の補助に
スマホのアプリでも下記のようなチェックシートでもかまいませんので、やりやすい方法でご自身の気分の波を可視化していきましょう。
参考:睡眠・覚醒リズム表
①睡眠時間を指標に
前述のうつ病エピソード、躁病エピソードの症状にはどちらも「睡眠」の項目がありましたね。
まずは、
「睡眠時間が〇時間とれていたらフラットの時期のようだな」
とゆるく判断しましょう。
睡眠時間は双極初心者さんには分かりやすい判断基準になると思います。
そのほかの例もあげますので、ご自身が使いやすそうな判断基準をいくつか組み合わせると精度が上がるでしょう。
②イレギュラーなイベントを指標に
その日のイレギュラーな出来事を記録した場合は、
「イレギュラーな予定を2つ以上入れている時は少し上がっている気がする」
「1つまでならフラットと言えそうだな」
などと考えます。
③出費を指標に
お金の使用状況を記録した場合は、
「1日に5千円以上使用した。すでに今月の小遣いを使いきりそう。少し軽躁に入っているかも」
「1万円以上の買い物は家族と相談できている。フラットだな」
などと判断します。
④日々行う活動の時間数を指標に
日課のようにする趣味や読書、運動がある場合はその時間を記録し、
「〇時間もぶっ通しでやっていた。軽躁状態かもしれない」
「1時間くらいで終えた。まあフラットかな」
などと判断します。
⑤食事の量や体重を指標に
気分の変動とともに食事量が変化する人は、食事量や体重を記録し、
「〇kgを切っている。上がってきているようだ」
「〇kgをキープできている。フラットの範囲にいるな」
などと判断します。
1人だけで考えようとしない
判断材料となりそうな指標をいくつかあげてみましたが、より大事なことは、1人だけで気分のチェックをしないことです。
「周囲の人から見たあなたの気分レベル」と「あなたの感じている気分レベル」には、ギャップがあることもしばしばです。
「今、自分ではフラットな状態と感じているんだけど、どう見える?」
「少し睡眠時間が短くなっているんだけど、あなたから見て軽躁の症状は感じる?」
などと、近しい人に聞いてみましょう。
これを繰り返すことで、あなたもその周囲の人も、気分レベルの把握の精度がアップしていくことと思います。
以上、「双極症『軽躁状態』とフラットな『寛解』の判断が難しい人への5つのヒント」について解説してみました(‘◇’)ゞ
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