精神科医・さくら(
@sakura_tnh)です。自身の知識と経験を活かし、人をワンランク上の健康レベルに底上げ=幸せにすることを目指しています。
「双極症(双極性障害)についての100の質問」企画、第43回目です。
今回のテーマは、
「双極症、他の患者さんの情報を得る時の注意点。軽症なら病気と言えないのか?」
です(・∀・)
以下、質問者さんからのメッセージです。
半年ほど前に双極性Ⅱ型と診断を受けて薬を飲んでいます。Twitterでいろんな方の様子を見ていると「自分は軽い方なのかな?と」思うくらい、周囲の方は病状がはっきりしています。躁うつエピソードに当てはまる過去ももちろんありますが、そこまで重い症状は思い付きません。でも、服薬を始めてから落ち着いている感じはあります。自分は本当にこの病気なのでしょうか?
インターネットが普及する以前は、同じ病気を持つ他の人の病状や普段の様子を知ることはほとんどできませんでした。
勉強会や当事者会などで出会うことはあっても、それは少数で、精神疾患の偏見もあり、病名をオープンにして他者と交流することは限定されていました。
ところが現在では、TwitterをはじめとしたSNSやブログなどで個人が簡単に情報発信ができるようになり、同じ趣味や病気などの属性を持つ人をネット上で簡単に見つけることができ、匿名での交流も容易になっています。
このことは特に、日常で病気をオープンにしていない、もしくはできない人にとっては福音で、この記事を読まれている方のほとんどがそういった資源を利用し、情報収集をしたり、交流により励まされたり、癒しを得たりしていることでしょう。
一方で、質問者さんのように、他の人の病状を具体的に知ることで不安になる方もおられるでしょう。
Contents
SNSなどで得られる病気の情報について
まず、前提として、同じ診断名であっても、AさんとBさんとCさんの病状はもちろん、その背景にあるもの(成育歴、性格、発達特性、現在その人を取り巻く環境など)もそれぞれ異なります。
色んな情報に触れる中で、
「そうそう!私にも同じ症状がある」「この人が言う通りだよなぁ」
などと感じることもあれば、
「この症状は私には全然無いみたい」「この人の意見は私には合わないな」
などと感じることもあるわけです。
同じ診断でも100人いれば100人の双極症があるので、前者のように感じることも、後者のように感じることもあって当然です。
(同じ病気なので、合致する部分が多数を占めるとは思いますが)
ただ、後者が高じれば質問者さんのように、自身の診断を疑うに至るかもしれません。
他者の病状や体験はあくまで「参考」とし、自身の病気の認識に影響しない程度にお付き合いしましょう。
語弊があってはいけませんので付け加えますが、他の人の情報は「参考」として「大いに役立つもの」です。
「症状が軽い」=「双極症ではない」のか?
ここで質問者さんが悩まれていることを整理してみます。
①ほかの人と比べて症状が軽いようだ。症状がハッキリしていない。
②過去には軽躁病エピソードもうつ病エピソードも明確にあった。
③薬物治療で落ち着いている気はする。
双極症の診断
まず、双極症の診断についてですが、明らかな躁病エピソードが1回でもあれば双極症Ⅰ型と診断され、軽躁病エピソードとうつ病エピソードが1回ずつ確認できれば双極症Ⅱ型と診断がつくことになります。
過去記事に各気分エピソードの診断基準を記載しているので、こちらも参照ください。
参考:双極性障害、Ⅰ型とⅡ型の区別・診断はどうやってするの?基準は?
質問者さんは②で明らかに軽躁病エピソードもうつ病エピソードもあったとのことですから、双極症の診断がついたのでしょう。
今後の経過は予測できない
①については、現在診断から半年ほど経った時期のようですから、気分変動のサイクルが年単位であれば、今後、時間を空けてハッキリした上下の気分エピソードが出現することが考えられます。
(薬物治療と生活の管理が非常にうまくいっていれば、再発無しに長期に経過するかもしれませんが)
治療が効いている可能性
そして、③について、治療を開始してから気分の波が安定している実感があることから、治療に反応していると見られます。
これは薬物の効果だけでなく、病気について知り、日常生活で気をつけるべきことをしっかり実行されていることが効果を表しているのでしょう。
他の人と比べて症状がハッキリしないのは、うまくコントロールされているからに他ならないと思います。
実際に比較的軽症なケースの可能性
また、質問者さんの仰るように、軽躁エピソードにしろ、うつ病エピソードにしろ、症状が実際に軽度で、期間も短いケースも考えられます。
このケースは双極症とは言えないでしょうか?
前述の通り、同じ診断名でも症状や経過は千差万別です。
診断の項で書いた通り、以前に気分エピソードに該当する症状があったわけですから、双極症の診断は揺らぎません。
また、軽度とは言え、病気の無い人には無い気分変動があるわけですから、やはり、診断は揺らがないと考えます。
※診断についての記載をしていますが、質問者さんが一般的な診断基準で双極症と診断されたのであれば、質問者さんの心配する点において診断が翻ることは無いだろうということです。直接診察していませんので、その点ご容赦ください。
まとめ
双極症に限らず、軽症の場合は「○○病です」と言うことがはばかられるような感情を持つことがあるでしょう。
誰かに言うのでなくとも、自身の中で、
「これは病気ではなく、ただの甘えではないか」
「より大変な人がいるのにこれくらいでつらいとは言えない」
などと考えたりもするものです。
でも、それとこれとは別の話です。
あなたは「自身の病気」で悩んだり苦しんだりしていて、「自身の病気」と向き合って、うまく付き合っていく方法を模索しているわけです。
なので、他者の情報は上手に取り入れて、「自身の病気」は「自身の病気」という認識はぶれないようにしてくださいね。
以上、「双極症、他の患者さんの情報を得る時の注意点。軽症なら病気と言えないのか?」について解説してみました(‘◇’)ゞ
\ フォローはこちらから /
記事が気に入ってもらえたら下部のシェアボタンをポチっとしてください☆