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双極症に「カウンセリング」は有効?お薬以外の治療法について解説しました。

2019/06/10
双極症(双極性障害)100の質問
精神科医・さくら(@sakura_tnh)です。自身の知識と経験を活かし、人をワンランク上の健康レベルに底上げ=幸せにすることを目指しています。

「双極症(双極性障害)についての100の質問」企画、第50回目です。

今回のテーマは、

「双極症にカウンセリングは有効?お薬以外の治療法について解説しました。」

です(・∀・)

「カウンセリングに向き不向きはありますか?双極症にもカウンセリングは有効なのでしょうか?精神療法との違いについても教えてください」

「カウンセリング」という言葉は誰もが聞いたことのある言葉でしょう。

カウンセリングとは、悩みや困りごとを抱えた相談者(来談者)に対し、援助者となる「カウンセラー」が専門的な知識をベースとし、様々なテクニックを用いながらその悩みや困りごとの軽減や解消を援助する技法です。

一般的には相談者のことを「クライエント」と呼びます。

広義のカウンセリングと狭義のカウンセリング

広義のカウンセリングは、生活、経済、社会などのあらゆる面において行われているもので、就職カウンセリング、美容カウンセリング、婚活カウンセリングなどの表現を目にしたことのある方も多いでしょう。

狭義のカウンセリングは、心理面にアプローチするもので、心理的な悩みや困りごとをカウンセラーとの対話を通じて自分の抱える悩みやつらさの解消を目指していくものです。

質問者さんの意図するのは狭義のカウンセリングですから、ここからはこれを単純にカウンセリングと記載します。

ちなみに、カウンセリングのほかに「心理療法」や「精神療法」という言葉がありますが、日本では厳密に言葉の使い方が区別されていません。

精神科医が診察で患者さんのお話を聞き、困りごとを明らかにして、その解決法を一緒に探していくことも、上記の定義からすると「カウンセリング」と呼べますよね。

心理療法は「心理士」が、精神療法は「精神科医」が行うもので、扱う内容は類似しますが、心理療法は病的水準が比較的軽度、精神療法は病的水準が比較的重度の人を対象にすると認識してもらえればよいと思います。

心理療法・・・心理士が行う。臨床心理学がベース。病的水準が比較的軽度

精神療法・・・精神科医が行う。精神医学がベース。病的水準が比較的重度

カウンセリングでは、基本的にカウンセラーは「答え」や「解決策」を提示しません。

カウンセラーは、「傾聴」「相槌」「繰り返し」「要約」「明確化」「解釈」などの技法を用いて、クライエントがクライエント自身に向き合うこと、新たな気づきを得ることを援助します。

クライエントが自身の問題に主体的に取り組み、問題への対処方法や現状への適応方法を自身でつかみ取っていくことがポイントとなります。

双極症にカウンセリングは効果あり?

さて、本題の「双極症にカウンセリングが有用かどうか」ですが、カウンセリングで有名な「来談者中心療法」は現時点ではその有効性は証明されていません。

科学的根拠が無いということですね。

ちなみに、「精神分析療法」も効果が無いとされています。

精神分析療法とは、精神病学者のフロイトが始めた精神療法です。

現在では、強迫性障害、心気症、解離性障害、摂食障害などの患者さんを対象に行われています。1つの分析に数年かかるような長期にわたる治療です。

患者さんは治療者と対面で椅子に座った状態、もしくは患者さんが寝椅子に寝た状態で、頭に浮かんでくることをそのまま話す「自由連想」を治療者が促します。浮かんできたことから、患者さんの心の中で何が起こっているのかを治療者と一緒に検討していきます。

双極症に効果のある、薬物治療以外の方法

双極症における薬物治療以外の治療を「心理社会的治療」とまとめて呼びます。

心理社会的治療の中で、双極症の再発予防に効果があると実証されているものは、以下の5つです。

①心理教育

②集団心理教育

③対人関係・社会リズム療法

④家族焦点化療法

⑤認知行動療法

③④については、再発予防効果が無いとする報告もあるので、今後のさらなる検証が望まれます。

簡単に①~⑤までを解説します。

①心理教育

精神疾患などの受容が難しい病気が対象となるもので、病気の症状・経過・治療法などについての正しい知識や療養における心構えを伝え、病気による様々な問題への対処スキルを身につけてもらうことが目的です。

受け入れがたい病気を抱えた患者さんに対する心理面の十分な配慮が必要となります。

②集団心理教育

①の心理教育を集団で行うものです。

病院で行われる場合には数名の同じ病気の患者さんが集まり、一緒に学び、質問や意見交換をしながら理解を深めます。医師、薬剤師、心理士、看護師、作業療法士、精神保健福祉士など多職種で行われます。

③対人関係・社会リズム療法

元々うつ病を対象としていた「対人関係療法」と、生活「社会リズム療法」を組み合わせた治療法です。

双極症では、対人関係を主としたストレスと、生活リズムの乱れが相まって気分エピソードが起こります。

対人関係療法では、対人関係の改善、対人関係から起こるストレスを小さくすること、環境変化への適応スキルを身につけること、社会リズム療法では、睡眠や様々な活動にリズムを一定にすることを目指します。

④家族焦点化療法

患者さんの家族さんへのアプローチも大きな治療の柱です。下記の6つの点を盛り込んだ治療法です。

・双極性障害エピソードを伴う患者とその家族が経験した体験を整理する

・将来の双極性障害エピソードに対して脆弱性があるということについて、患者や家族
の理解を促す

・症状管理のため気分安定薬を服用することの重要性について、患者と家族の理解を促す

・患者と家族が双極性障害による症状と元来の性格との違いを見分けられるようにさせる

・双極性障害の再発のきっかけとなりうるストレスフルなライフイベントへの対処法を患者と家族が理解、習得するのを支援する

・機能的な家族関係を双極性障害エピソード後に再構築できるよう支援する

⑤認知行動療法

うつ病をはじめとして、様々な病気で有用な治療法です。

双極症でも、偏った考え方のクセを変えていくことが再発予防につながりますが、双極症がほかの病気と大きく異なるのは、気分エピソードによって、考え・ものごとの捉え方・行動のパターンが違ってくる点です。

よって、気分エピソードによる考え・ものごとの捉え方・行動のパターンの変化を把握し、気分エピソードそれぞれの対処法を身につけていく必要があります。

まとめ

カウンセリングの概要と、カウンセリングは双極症には無効であることを説明しました。

また、ほかに有用な心理社会的治療について説明しました。

医療機関によって上記のうち、すべてが施行可能ではなく、「受けたいな」と思っても叶わない方も多いかもしれません。

主治医も短い診察の中ではありますが、上記のような治療のエッセンスを取り入れた診察を心掛けています。

ご希望があれば、主治医にこういった治療は受けられないか尋ねてみてくださいね。

以上、「双極症にカウンセリングは有効?お薬以外の治療法について解説しました。」について解説してみました(‘◇’)ゞ

参考:「双極性障害の家族焦点化療法」2017 大野、三村監訳
    日本うつ病学会治療ガイドライン

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