「双極症(双極性障害)についての100の質問」企画、第52回目です。
今回のテーマは、
「双極症、躁状態でのトラブルを主治医に話せないのはまずい?伝え方のヒントとは?」
です(・∀・)
「診察で、正直にすべてを話すことができません。特に躁状態でやらかしてしまったことは話せません。きちんとした診断ができないので話すべきなのは分かっているのですけど、医者にも知られたくないと思ってしまいます。精神科医としてどう思われますか?」
軽躁・躁状態での失敗、いわゆる「やらかし」のエピソードは、相手が精神科医でなくとも打ち明けにくいものです。
お金の絡むトラブルであったり、仕事での信用の失墜であったり、家族関係の悪化であったり、性的な事柄であったり、病気の有無に関わらず、話題にしにくいものが多いからです。
「あんな話を診察でするなんて恥ずかしい」
「こんなことを言って主治医にどう思われるだろう」
「医師に言っても仕方のないこと」
などと考えて、主治医に報告することをためらいがちです。
黙っておくことで何も不利益が無ければいいのですが、気分症状に左右されてどのような事態に発展しているかを把握できていないと、
治療が不十分なままで維持されることとなり、同じような失敗が今後も続くかもしれません。
それは本人にとって大きなマイナスです。
診察で話せないくらいのことですから、それが繰り返し再現されると、社会的にも対人的にも経済的にも、ダメージが重篤なものになってしまいます。
Contents
伝えにくいことを伝える際のヒント
伝えにくいことを伝える際のヒントについてまとめます。
①精神科医は症状の末に起こったことと理解するもの
まず、精神科医は気分症状に影響されて様々なトラブルが起こることは想定済みです。
即入院になるようなケースでは、隠そうにも隠すことができないほどのトラブルに発展していることも多々ありますので、多少のことで動揺することもありません。
また、主治医の心証を悪くしないかを心配しているなら、それは全く心配の無いことです。
気分症状による「やらかし」を本人の性格から起こったものと見なしたり、本来そのような願望があったから「やらかした」とは考えません。
なので、可能ならやはり具体的に話してほしいです。詳細な情報があった方がその後の対策も立てやすいことは理解いただけると思います。
②医師には守秘義務がある
診療の中で知り得たことについては守秘義務がありますから、打ち明けた話が外部に漏れるような心配はありません。
診察室の中だけでの話ですから、そういった心配は無用と思ってください。
③具体性は乏しくてもよい
どうしても詳細な内容を伝えることがためらわれる場合、そのトラブルの重大性だけは伝えてください。
・株の信用取引に手を出して200万円の損失を出した
⇒投資で多額の損失を出してしまった
・新規事業を立ち上げるために500万の借金をしてしまった
⇒勢いで起業してしまった
・カードで高額の買い物を次々にして支払い額が払えないほどに膨らんでいる
⇒買い物をし過ぎてしまった
・出会い系アプリで不特定の人と性交渉してしまった
⇒普段ならしない性的なことをしてしまった
・妻子ある人と関係を持ち、相手のパートナーに責任を問われている
⇒性的逸脱行為があった
・会社で上司に怒鳴り散らしてしまい降格処分を受けた
⇒会社で上司を怒らせてしまった
・取引先に上から目線の対応をして怒らせてしまった
⇒取引先ともめてしまった
・不注意から会社に損失を与えるような重大なミスをしてしまった
⇒仕事上のミスをしてしまった
・腹が立った勢いで配偶者に離婚届を叩きつけてしまった
⇒家庭内で不和が起こってしまった
・子どもに向かって大声を出したり、手をあげてしまった
⇒子どもを怖がらせてしまった
例をあげて考えてみましたが、詳細を隠しつつ、その重大性を伝えることはやはり難しいものです。
抽象的過ぎてことの重大性が伝わらないと、今回のエラーが治療に反映されませんから、
「具体的には言えないのですが、大きなトラブルを起こしてしまった」
とは伝えてほしいです。
④間接的に報告する
デイケアや作業所など、主治医と連携する支援機関を利用している場合は、そちらの相談員にまず打ち明けて、相談員から主治医に報告してもらう形もとれます。
通院先が病院であれば、診察前に外来看護師に「伝えにくいことなんだけど・・・」と話してみてもいいと思います。
医師には言いにくくても、PSW、看護師、心理士など、他の職種には言いやすいケースもあるでしょう。
今はまだ相談員への報告に留めたい場合はその旨を伝えておけば大丈夫です。
⑤口頭でなく、書面で伝える
紙に書いて伝える方法は、口で言うよりは少しハードルが下がると思います。
メモアプリにまとめてもらってもOKです。
まとめ
精神科医は「何でも話してくださいね」と言うものの、実際、患者さん側からすると、診察時間の慌ただしさや、主治医からの評価が気になって言い出しにくいものです。
患者さんが本当に「何でも話せる」雰囲気づくり、仕組みづくりが必要だと感じます。
また、治療は医師からお仕着せられるものではなく、双方が語り合い、その時その時にベスト(もしくはベター)な方法を双方が納得して選び取っていくものです。
今回のテーマの「言いにくいこと」に限らず大事な視点ですので、覚えておいてくださいね。
以上、「双極症、躁状態でのトラブルを主治医に話せないのはまずい?伝え方のヒントとは?」について解説してみました(‘◇’)ゞ