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双極症「完璧主義」がつらいがやめられない。完璧主義の問題点と改善のヒント。

2019/06/14
双極症(双極性障害)100の質問
精神科医・さくら(@sakura_tnh)です。自身の知識と経験を活かし、人をワンランク上の健康レベルに底上げ=幸せにすることを目指しています。

「双極症(双極性障害)についての100の質問」企画、第54回目です。

今回のテーマは、

「双極症、完璧主義がつらいがやめられない。完璧主義の問題点と改善のヒント」

です(・∀・)

以下、質問者さんからのメッセージです。

「双極症です。完璧主義はやめましょうと本等に書いてあります。完璧を求めるから苦しいんだとわかった上で、完璧を目指さずにはいられません。『70%を目指しましょう』という言葉は、私にとっては『テストで赤点を取りましょう』と言っているように聞こえます。

そもそも、完璧を目指すけど その通りには全然できないので苦しいです。完璧主義の人は、完璧を求め完璧にこなすから 完璧主義であって、自分は完璧主義ではないと思っています。でも、周囲の人からしたら完璧主義に見えるらしいです。テストで赤点を目指す以外に、完璧主義から脱却する良い手立てはないでしょうか?」

完璧主義に悩む人は多いですよね。

まず、完璧主義は「完璧であろうとする」「90点でも許せない」という志向なので、実際に完璧にモノゴトをこなせているかどうか、今の自分が理想の自分であるかどうかは関係ありません。

完璧主義には「仕事を丁寧に仕上げる」「向上心がある」「自分に妥協しない」「細部にもこだわる」などのポジティブな側面もあり、「完璧主義=悪」ではありません

一方で、完璧主義のためにストレスを抱えて、「完璧主義をどうにかしたい」と質問者さんのように苦しんでいる人が多いのも事実です。

完璧主義によるマイナス面が大きい場合

双極症に限らず、精神疾患を抱える人にとって過剰なストレスは大敵です。

完璧主義によるストレスは様々です

・理想が高すぎて追いつけない

・周囲の評価を気にし過ぎる

・完璧にできないとモノゴトを投げ出したくなる

・完璧な流れを理想とするためにモノゴトに取りかかるのが遅れる

・完璧にこなせないときに強い不全感を抱く

・他者にも完璧を求めてしまう

完璧主義の人はそうでない人に比べて抑うつや不安を抱きやすく、自殺率が高いという報告もありますから、どちらかというと悪い方に影響している人が多いと思われます。

もし、そのストレスが気分症状の再発につながったり、気分症状の回復の妨げになっているなら、完璧主義のプラスな側面よりマイナスの側面が大きいのでやはり考え方と行動を変えていくことが必要でしょう。

完璧主義者ゆえに改善策の受け入れは難しい

完璧主義者は完璧主義者ゆえに「70%を目指しましょう」「ほどほどで合格にしましょう」などの考え方が受け入れにくいものです。

理論的には理解できるけれど、その方がラクだろうけど、「自分にはできない」と思う人も多いでしょう。

ベースにこだわり等の発達特性がある人は、変化に対する拒否感も強く、より改善の行動を取りにくいかもしれません。

幼少期から「完璧」でないと親に認められなかった体験をした人は、自己肯定感が低く、「70%の自分」を想像するだけで不安になるかもしれません。

他者の評価でしか自分を認められない人も同様ですね。

てゆうか「完璧」って何?

さて、ここで「完璧」について今一度考えてみましょう。

本当にモノゴトを「完璧に遂行」することなどできるのでしょうか?

人は非の打ちどころのない「完璧な自分」になどなれるのでしょうか?

質問者さんの書いているような「完璧に仕事などをこなせている人」というのはイメージとしては理解できますが、それが完璧かどうか、判断できますか?

例えば仕事なら、「完璧に仕上げた」ことでも、さらに手をかけてより良いものにすることは可能でしょう。

例えば家事なら、「完璧に終わらせた」ことでも、視点を変えればまだまだ手を加える余地があるでしょう。

例えば人間なら、「完璧な人間になった」と思ったとしても、日々学ぶことはありますし、環境の変化により、考えていた「完璧な人間」ではなくなることもあるでしょう。

例えば学生時代のテストですら、「満点を取った」としても、余裕で満点なのか、ギリギリ満点なのか、質には差があるでしょう。

モノゴトや人において、「完璧」や「100%」という概念はそぐわないものだと感じます。

完璧主義の背景に「自分に力があると感じたい」「他者から力があると思われたい」気持ちがあるのなら、尚更70点の合格を目指す方がよいでしょう。

例をあげてみます。

・100点のモノゴトを目指すけれど、とても時間がかかり、期日には到底間に合わない

 ⇒70点の仕上がりだけど、とりあえず期日までに終わらせられる

・100点の自分を目指すけれど、感情が不安定だったりストレスフルで、日々がつらい

 ⇒70点の自分だけど、感情が安定していてストレスも少なくて、日々はそこそこ楽しい

・100点の他者を要求するけれど、その水準では他者は動いてくれない。その気持ちが伝わり他者もストレスを感じる

 ⇒70点の他者だけど、その水準でも大きな支障はない。他者にストレスを与えず、他者との関係性も安定する

100点合格主義と70点合格主義では、どちらが自分に力があると感じられ、他者からも力があると感じてもらえるでしょうか?

70点で区切りとして、ブラッシュアップする方法

グーグルなどの先進的な企業では、モノやサービスの開発を見切り発車でスタートさせることが有名です。

下準備が十分に完成してからではなく、完成度が低いうちにスタートし、顧客の反応を見ながらモノやサービスを洗練させていくスタイルです。

完璧主義をやめられない人におすすめしたいスタイルです。

70点でいったんの合格ラインとします。

そこから余裕があれば80点、90点にレベルアップさせます。

とりあえずモノゴトは「できている」ので、不十分でも自分も周囲も納得できます。

そして、時間や精神面で余裕があれば、その質を高めるようにします。

前述の通り、本当の「完璧」はありませんから、質を高めるにもどこかで終わりにせざるを得ません。

その際は期日や、仕事であれば上司の判断、家事や自分自身のことならマイルールの設定が必要です。

双極症と完璧主義

双極症かつ完璧主義の人に対して心配になるのは、症状のために「完璧」を実現することが難しいからです。

気分の波があると、「いつも同じレベルの合格ライン」を設定することもなかなか叶いません。

また、軽躁状態などでできていたレベルを「完璧」と認識すると、それ以外のうつ状態はもちろん、気分症状の無い寛解期にも自己不全感に苦しむことが懸念です。

難易度が高いですが、双極人は気分症状に合わせた合格ラインの設定が必要です。

軽躁・躁状態では、むしろ高得点を目指さないことが後々のうつ病エピソードにとって良かったりもします。

まとめ

前述のように、世の中に「完璧」はありません。

よって、人は望めばいつまでも成長できるものモノゴトもどこまでもブラッシュアップできるものです。

「伸びしろを残しておく」

「出来上がってしまったら後がつまらない」

「どんなモノゴトも磨けば磨くほど高みを目指せる」

そんな発想の転換も、生きづらさを緩和してくれるひとつのアイデアかと思います。

以上、「双極症、完璧主義がつらいがやめられない。完璧主義の問題点と改善ヒント。」について解説してみました(‘◇’)ゞ

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