「双極症(双極性障害)についての100の質問」企画、第56回目です。
今回のテーマは、
「双極症、うつ状態でも躁状態でも入浴できない。入浴の効用と習慣化のヒント」
です(・∀・)
以下、質問者さんからのメッセージです。
「鬱状態だと気力がなくてお風呂に入る気になれず、躁状態だとお風呂に入る時間すらもったいなく感じてしまい、なかなかお風呂に入れません。習慣化する方法はありますか?」
気分症状によって生活習慣や身の回りのすべきことが乱されるのは、双極人あるあるですね。
入浴のほかにも部屋の掃除や片付け、料理、洗濯なども同様でしょう。
質問者さんのように、うつ状態でだけ「すべきことができない」が目立つのではなく、うつ状態とは違った理由で軽躁・躁状態に「すべきことができない」が気になるケースもあるでしょう。
Contents
本当に必要な活動なのか?
そもそも「入浴」は一日に一度必須の活動でしょうか?
「え?当然でしょ?毎日お風呂に入らないと気持ち悪い」
「毎日入るべきなのに入れないと自分はダメ人間だと感じて落ち込む」
上記のように思う人もいるでしょう。
一方で、下記のように考える人もいるでしょう。
「冬場は2日に1回でも全然OK。人に不潔感を与えなければOK」
「調子の悪いときは入れなくても仕方ない。とくに支障はない」
病気の有無にかかわらず、入浴をどれくらい重視するかは人それぞれです。
入浴はハードルの高い日常活動
Twitterでも書いたことがありますが、日常の活動の中でも「入浴」はかなりハードルの高い活動です。
とくに一人暮らしの人であれば、その工程は例えば「歯磨き」に比べると格段に多いです。
風呂掃除、湯をはる、服を脱ぐ、洗髪する、体を洗う、湯舟に浸かる、体を拭く、湯を抜く、下着をつける、服を着る、髪を乾かす、女性ならさらにスキンケアをする
うつ状態で億劫になるのは当然、躁状態で目的志向の活動に重きを置いているケースでも省きたくなるレベルの活動です。
風呂掃除ひとつとっても、丁寧にやれば時間も手間もかかる作業です。
入浴の目的や効用について
入浴の第一の目的は、身体を清潔にすること、身なりを整えるベースを作ることです。
次に、しっかり湯船に浸かることのメリットをまとめておきましょう。
①温熱効果
血行が良くなり、血液中の老廃物や二酸化炭素の代謝が促進される。
②静水圧効果
水圧により全身に対するマッサージの効果がある。心地よい上に、むくみも改善する。
③浮力効果
水の中では浮力がかかるため、関節や筋肉が緩んで全身がリラックスできる。
主なメリットは以上の3つです。
さらには、40℃のお湯に20分ほど浸かると深部体温が1℃上昇し、その後、深部体温が下降するタイミングで眠りにつくと、寝入りが良くなり睡眠の質が上がることもメリットです。
シャワーでは、これらの効果は薄く、やはり毎日湯船に浸かれると理想的ではあります。
湯船に毎日浸かる人はそうではないシャワーで済ます人などに比べて幸福度が高いことも報告されています。
入浴を段階分けしてみる
前述したような十分な入浴が毎日できれば理想ですが、双極人は色んな状態の時がありますから、精神安定を優先事項とし、入浴は妥協することも大事です。
何もしない。うつ状態にしろ躁状態にしろ諦める。
①ふき取りシートや絞ったタオルで体を拭くのみ。
②体をシャワーで洗い流すのみ。
③ドライシャンプーのみ。
④洗髪するのみ。
⑤シャワーで洗体、洗髪する。
⑥洗体して湯舟に浸かる。洗髪なし。
⑦洗体、洗髪して湯舟に浸かる。
うつ状態で寝たきりの時は⓪でしょう。
それ以外の状態の時は、①~⑦のどのレベルの入浴でも合格とします。
毎日湯船に浸かることを、すべての人が目指す必要はありません。
人前に出る必要がある時は衛生面が気になるでしょうけれど、逆に言えば、不潔感さえ出ていなければOKです。
多少髪の毛がヘタっていても自分の中で許容して、臭いだけは気を付けましょう。
入浴をスモールステップで習慣化する
質問者さんはどの気分レベルでも同様の「入浴」を習慣化したいと考えているようですが、今1週間に1度しか入浴できていないとすれば、スモールステップで習慣化を目指すべきです。
急に「毎日お風呂に入ろう」と奮起しても気分の波もありますから、習慣化するまでに脱落することが目に見えています。
ここはまず、先ほどの①~⑦を参考にして、無理のないレベルの「入浴」をスモールステップの1ステップ目に設定してほしいと思います。
また、習慣化すると言っても双極人は気分の波があることが前提ですから、①~⑦のいずれかが行えれば「できた」としましょう。
習慣化は「起きたらカーテンを開ける」のような単純な活動で21日が必要、「運動習慣を身につける」ような複雑な活動で66日が必要と言われています。
レベル⑦の入浴はその中間くらいでしょうか?
また、6週目の時点で週に4回以上その活動ができていると習慣化の可能性が高まる、との報告があります。
やはりまずはハードルの低いレベルの入浴でいいので、回数を多く遂行できるようにすることが推奨されます。
まとめ
湯船に浸かることの効用は大きく、できたらゆっくり毎日入りたいと思う人が多数でしょう。
一方で、それができないと自分を否定したり、抑うつ的になる人がいることも事実です。
「入浴はできるレベルですること」
「ひどいうつの時はできなくてもOK」
とルール化しておくと、各気分の時期でむやみに悩まずに済みます。
もし、体力・気力的に可能な人は、双極人にとって大事なストレス解消と、質の良い睡眠に効果大ですから、時間がもったいないと思わず、読書したり音楽を聴いたり、もしくは普段は色々考えごとをしがちなら入浴タイムはボーっとする時間と決めて、ゆっくり入浴をするようにしましょう。
以上、「双極症、うつ状態でも躁状態でも入浴できない。入浴の効用と習慣化のヒント」について解説してみました(‘◇’)ゞ