「双極症(双極性障害)についての100の質問」企画、第64回目です。
今回のテーマは、
「双極症、躁状態での浪費で自己破産した人の願い。まずは問題を直視すること」
です(・∀・)
以下、質問者さんからのメッセージです。
「躁状態の時の浪費がたたり自己破産に追い込まれました。手続きはすべて終え、いまは地道に生活していますが、これからのキャッシュレス時代に10年間もクレジットカードが作れないことなど考えると、自業自得ですが不安感や自己嫌悪に耐えられません。カードローンのCMやキャッシュレス化のニュースを見るたびに、気分が不安定になり、将来の不安感でいっぱいになってしまいます。同じような人を出さないために、浪費癖がある人に先生からアドバイスお願いします!」
躁状態での「浪費」は、双極症あるあるですよね。
たしかにキャッシュレス社会に移行しつつある今、クレジットカードが作れないことなどはストレスに感じるかもしれませんね。
ただ、自己破産後もデビットカードは作れるようですし、事前にチャージするタイプの後払い方式でない電子マネーなども利用できるので、キャッシュレス化が進んだ社会での困り度はその人のお金の使い方によるかと思います。
質問者さんは今は地道に生活しているとのことで、これまでの経過から、ご自身の弱みをよく理解されたのだと思います。
実際、クレジットカードを持たなくなったことで手元にあるお金以上の支払いはできなくなり、銀行や消費者金融での借金もできないでしょうから、今後は躁状態に移行しても簡単には高額のお金は使えない状態になっています。
理想を言えば、自己破産にまで至らなくとも簡単に浪費できない体制を整えられるといいですよね。
Contents
躁状態ではコントロール不能になると心得る
浪費しないための工夫をこの後解説しますが、みなさんうっすら分かっていらっしゃるように、躁状態が悪化するとその工夫が通用しなくなることも事実です。
「うつ状態はしんどいし、寛解期は何か物足りない。躁状態に早くならないかな」
と思ったことはありませんか?
「躁への嗜癖(しへき)」と言いますが、躁状態を望む気持ちのある人は要注意です。
躁状態にまで至るⅠ型の人はもちろん、軽躁状態に留まるⅡ型の人でも金銭的なダメージが大きい人はいます。
もしくは、ひとつの波におけるダメージはさほど大きくなくとも、経過の長い双極症では、その波を繰り返すことでボディブローのように効いてくることでしょう。
まずは、自身の躁状態や軽躁状態を振り返り、金銭面でのダメージがどれほどだったか振り返ってみましょう。
躁状態の時のことを振り返るのはつらいものですが、今後同じことを繰り返すと、質問者さんのように自己破産に至り、社会的信用を損ねることも、場合によっては大事な人との関係を壊してしまうことも十分あり得ることです。
アルコール依存症の併存についての記事でも同様のことを書きましたが、
「そんな人もいるんだなぁ。でも、自分自身に限っては大丈夫」
「前回は親にカードの返済を協力してもらったけど、今度の躁状態はうまく乗りこなす自信がある」
「いざとなったら、ヤバいラインの手前で踏みとどまるし、自分でコントロールできることだよ」
こんな風に楽観視していませんか?
または、
「前回大きなトラブルにならなかったから、これからもまあ大丈夫だろう」
と甘く考えていませんか?
アルコール依存症は「否認の病」とも言われますが、自身の問題点を軽視したり、自身の問題と認識することを拒否する点が似ています。
参考:双極症の人は「アルコール依存症」になりやすい?セルフメディケーションとは?
また、質問者さんのようにとことんのところまで至って、ようやく自身の問題に向き合えるようになる点も似ています。
アルコール依存症では「底つき体験」と言って、家族や友人から見放され、経済的にも厳しくなり、身体的な問題も大きくなることでやっと問題を直視できるようになります。
繰り返しますが、「底つき体験」をするまでに「浪費」を「自身の問題」と認識し、寛解期を中心に対策をしっかり講じましょう。
お金を簡単に使えない仕組みづくり
今、大きなお金を簡単に使える状況にある人は「お金を簡単に使えない仕組みづくり」が必要です。
・日々の使用金額の記録をする
・クレジットカードは家族に預けるか破棄する
・後払い方式、クレジットカードで支払う電子マネーなどは登録を解除する
・基本的に現金のみで生活する
・財布に日常的に困らない程度のお金しか入れない
・デビットカードや先に入金するタイプの電子マネーを活用する
・躁状態になると、浪費の懸念があることを家族や友人と共有する
・躁状態で自分がお願いしても絶対お金を貸さないようにお願いする
・通帳やキャッシュカード、自宅の重要書類などを家族に管理してもらう
クレジットカードが手放せない場合
どうしてもクレジットカードが必要であったり、軽躁・躁状態でもそこまで浪費しないタイプの方も、少なくとも、
・キャッシング枠はゼロにする
・ショッピング枠の上限を下げる
・リボ払いはしない
この3つは基本としましょう。
双極症に関わらず、浪費癖のある人は上記のような工夫をしていると思います。
いわんや双極人をや、ですね。
クレジットカードを使うメリットとは?
そもそも、クレジットカードを使うメリットは、以下のようなものです。
①今手元にお金が無い時にも買い物やサービスの使用ができる
②分割やボーナス払いなど支払い方法が選べる
③ポイントやマイルがたまる
④履歴が残り、家計簿代わりになる
⑤現金管理の手間がない、財布がかさばらない
⑥旅行の傷害保険やショッピング保険が付帯している
⑦クレジットヒストリーが作れる
①や②に関しては、メリットではあるけれど、同時に大きなデメリットにもなり得ます。
これらのメリットと、多額の借金を抱えたり、人間関係を壊してしまうデメリットを天秤にかければ、カードのメリットも霞みます。
後払い方式の電子マネーも同様です。
軽躁・躁状態で、毎回「浪費」が問題になる人
浪費が激しい人は軽躁状態の予兆があれば早め早めの対処が大事です。
今、家計簿など、お金の使用状況を記録する習慣の無い人は、手帳でも家計簿アプリでも、1円単位ではなくてもいいので、ざっくりと記録していきましょう。
金銭感覚は人それぞれなので、通常気分時に使う金額のデータも比較のために必要です。
一日の使用額が「普段の金額+1万円を超える日」が連日となってきたら、家族に手持ちのお金の管理をお願いする、早めに受診するなどの対処行動をしましょう。
自己破産まで至った先人の想いを受け止める
「同じような人を出さないために、浪費癖がある人に先生からアドバイスお願いします!」
このように質問者さんは書かれています。
質問者さんにとって、躁状態に翻弄されての負債、そして自己破産は、キャッシュレス化のニュースやカードローンのCMを見るだけで、将来への不安感や自己嫌悪がわくほどにつらかった出来事です。
それを、双極症の入り口に立っている、質問者さんの後に続く双極人たちが「自分と同じようなつらい思いをしないように」との想いを込めて質問くださったと感じます。
これを読んだ方は、質問者さんの想いを受け止めてもらい、躁状態によって経済的な社会的な損失を被らないように、上記のヒントを参考に対策をしてほしいと思います。
加えて、質問者さんもそうですが、病気の症状によって失ったものに注目し、何かにつけて後悔の念に囚われるより、今、手の中にあるものを大事にしていってほしいと思います。
あなたが本意でそのようなつらい状況に陥ったのではないことを、私はもちろん、双極症という病気の難しさ、恐ろしさを知っている人なら十分分かっていることを覚えておいてください。
勇気と優しさのあるご質問をありがとうございましたm(_ _)m
以上、「双極症、躁状態での浪費で自己破産した人の願い。まずは問題を直視すること」について解説してみました(‘◇’)ゞ