「双極症(双極性障害)についての100の質問」企画、第80回目です。
今回のテーマは、
「双極症、躁状態で爽快さがなく、イライラが多いケース。不機嫌躁病とは?」
です(・∀・)
以下、質問者さんからのメッセージです。
「現在おそらく躁状態なのですが、全く爽快感はなくイライラしてばかりです。本を読んだら「不機嫌躁病」というものを知りました。質問は3つです。
①躁状態で爽快感ではなくイライラが強いというのはよくあることなのでしょうか。
②不機嫌躁病について解説してください。
③どの程度のイライラならば許容範囲なのでしょうか。
よろしくお願いします。」
軽躁や躁状態で「イライラ感」に悩まされる人は多いと思います。
一般に「躁状態」というと、気分が上がり、明るく、笑顔の陽気なイメージがあります。
質問者さんは爽快感はゼロで、イライラが目立つとのことですが、実は、躁状態でイライラが目立つことは珍しいことではありません。
躁状態でイライラが目立つことは意外に多い
過去記事に双極症の診断基準を載せていますが、躁病エピソードの診断基準をピックアップしてみましょう。
参考:双極症、Ⅰ型とⅡ型の区別・診断はどうやってするの?基準は?
この記述にあるように、開放的な状態ではなく、易怒的な状態であっても「躁状態」です。
易怒的というのは、文字の表すままなのですが、「怒りっぽくなる」「ささいなことで怒る」ような状態です。
イライラ感と一口に言っても多様な状態がありますが、この易怒的な状態に当てはまることも多いでしょう。
躁状態の最初は爽快な気分であったのが、時間が経つと、イライラが目立つようになることはよくあります。
または、ニコニコして上機嫌のようでいて、その人に誰かが何か反論すると途端に激高するということもあります。
易怒性が高まると、ささいなことから怒りが爆発して、暴言や暴力に至ることもしばしばあります。
また、易怒性は「周囲の人が困る症状」と見られがちですが、実は本人も苦痛な症状です。
爽快感が目立つタイプの双極人は、心地よい軽躁や躁の状態を心のどこかで望む心境が少なからずありますが、イライラの目立つタイプの双極人はそういった心境は少ないかと思われます。
「不機嫌躁病」とは?
さて、質問者さんが目にした「不機嫌躁病」についてですが、これも文字そのままで、不機嫌が目立つ躁病エピソードを意味します。
過去記事に双極症の「混合状態」についてまとめましたが、不機嫌躁病はその状態によってはこの混合状態と見なされます。
不機嫌躁病は、躁病エピソードの診断基準を満たしつつ、さらにいくつかの抑うつ症状を伴うものとされていましたが、DSM-5という現行の診断基準では抑うつ症状を3つ以上満たすと混合状態とされます。
最近ではあまり不機嫌躁病という表現は使われず、厳密に3つ以上の抑うつ症状を満たさないケースでも「混合状態が疑われるね」などと表現されているかと思います。
どの程度のイライラなら許容範囲内か?
言葉で「程度」を表現することは難しいですが、そのイライラを外に出さないために自制することが非常に困難であるレベルであれば、イライラ感をターゲットにした治療が必要です。
ましてや、暴言や暴力行為に至る場合は当然必要です。
前述したとおり、本人にとってはイライラ感は不快な症状なので、それを感じた時点で主治医に相談してもらって全く問題ありません。
イライラの強いタイプはリチウムよりバルプロ酸が合うケースも多く、薬物調整によってイライラは軽くなります。
特にイライラした時用の頓服を用意しておくことも有用です。
また、イライラしてしまってつらいことを話し合えるだけでも苦痛は和らぎます。
イライラ感のために思わぬことを口にしてしまったこと、人間関係に支障をきたしたことは、その後、うつ状態に移行した際に自責的になる原因となりえます。
軽く見ずに、早めに相談、対処していただきたいと思います。
以上、「双極症、躁状態で爽快さがなく、イライラが多いケース。不機嫌躁病とは?」について解説してみました(‘◇’)ゞ