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双極症の「うつ状態のつらさ」を増す要因。なかなか浮上できない人へのヒント。

2019/08/31
双極症(双極性障害)100の質問
精神科医・さくら(@sakura_tnh)です。自身の知識と経験を活かし、人をワンランク上の健康レベルに底上げ=幸せにすることを目指しています。

「双極症(双極性障害)についての100の質問」企画、第87回目です。

今回のテーマは、

「双極症のうつ状態のつらさを増す要因。なかなか浮上できない人へのヒント」

です(・∀・)

以下、質問者さんからのメッセージです。

「双極症のうつ状態がとてもつらいです。薬を飲む、病院を受診する、ポジティブ日記をつける、運動をする、朝日をあびるなど、よいと言われることはなるべく実践していますが、なかなか上がってこれません。こんなとき、他に何か、自分でできる回復のための努力はありますか?じっと我慢して嵐が過ぎ去るのを待つしかないのでしょうか?」

うつ状態が続くことはとてもつらいものです。

つらさには、やりたいことができない、外出できない、朝起きれない、人と交流できないなど、色んな要素がありますが、その大部分を、

「いつこの状態から回復するかが分からないこと」

が占めていると感じます。

例えば、仕事の繁忙期で、残業続きの時でも、

「今月中にこの苦しさは終わる。来月からは早い時間に帰宅できる。ゆっくりできる日が来る」

と、先の見通しが立っていれば、目の前にあるつらさも何とか乗り切っていけるものです。


浮上を予期できるかどうか

医師としても、その経過が多少長くとも「あと3カ月で必ず浮上できますから」などと具体的に言えたらいいのにと思いますが、現状その予測は難しいです。

双極人によっては、かなりパターン化していて、同じペースで上がり下がり、また回復することを繰り返している人もいるかと思います。

季節の影響が大きい人も、例えば

「11月に入った。いつもの落ち込みが来そうな予感」

などと、毎年の波にしんどい思いはするものの、

「2月も終わる。3月にはきっと浮上している」

などと、先が読めることで何とか乗り切ろうとモチベーションも維持できることが多いとも思います。

何度か同じパターンが続いているなら、医師や支援者も「今回もあと2カ月の辛抱だから、今できることをコツコツやっていきましょう」などと助言できます。

先の見通しがつきにくい3つのパターン

質問者さんの場合は、以下のいずれかに該当するのかなと思います。

①まだ発症して間もない

②毎回パターンが違っていて予測が困難

③毎回うつ病相が長く、浮上までの期間の苦痛が強い

とくに③の場合は、「長いうつ病相」がパターン化しているわけで、非常につらいと思います。

双極症は、「うつ病相」「軽躁・躁病相」「寛解期」を繰り返す病気。

そう知っている人は一般の方でも多いかと思います。

一方で、

病気にかかってからの期間の多くを「うつ病相」が占める

ことはあまり知られていません。

質問者さんがⅠ型かⅡ型かは不明ですが、過去記事に書いているとおり、とくに双極症Ⅱ型ではうつ病相の割合が大きいです。

参考:双極症でⅠ型とⅡ型を診断し区別することの3つの必要性とは?

質問者さんがうつ病相に入ってどれくらい経っているのか分かりませんが、半年を超える期間に及ぶ場合は、社会生活上の支障も大きく、苦痛は強いと想像されます。

周囲の人の意見を聞いてみる

少し視点を変えてみます。

うつ状態からの回復によくあることですが、本人は「まだまだ回復できていない」と認識している一方で、周囲の人は「少し良くなってきているな」と認識していることがあります。

自覚する状態と、他覚的に見た状態とのギャップです。

質問者さんは「まだまだ」と感じているけれど、他覚的には浮上しつつあると感じられているかもしれません。

「先月の自分と比べてどう感じるか?」
「何か変化したところは?」

など、家族や友人に尋ねてみましょう。

自分と周囲の人との認識にギャップがあった場合は、「本当はつらいのにそう感じてもらえていない」と落ち込むのではなく、

「自分は気づけていない回復のきざしがある」

と、とらえましょう。

「嵐が過ぎ去るのを待つ」こと

質問者さんの仰る「嵐が過ぎ去るのを待つ」ということですが、

「待つ」ことも治療のひとつの柱です。

そして、浮上を待つ間どう過ごすかは、回復にとっても今後の再発予防にとっても大事です。

うつ状態でできることはすべてされている質問者さんの場合、待つ体勢はパーフェクトです。

「人事を尽くして天命を待つ」

のような気持ちで、もちろんうつ症状で苦しいのですが、その波に漂うイメージも必要かと思います。

双極人の気分の波は、通院、薬物治療、認知行動療法、対人関係社会リズム療法、運動などで緩和することは可能です。

ただ、どこまでコントロールできるかは個人差が大きいものです。

上述のように、気分の波がパターン化されにくい人、または、毎回非常に長いうつ病相を過ごすパターンの人は、薬剤調整や新しく分かってきている知見を基によりよいコントロールを目指すことは怠らない一方で、

「今日一日、またつらい日だったけれど、浮上のために必要な一日だった」

と考えること、

また、しんどい時期にでもできる、ささやかな活動や楽しみを落ち着いた時期に用意しておき、

「短時間・低負荷の活動でも、うつモードですべき・やりたいことをする」

というスタンスで波に漂ってみると少しラクに過ごせるかと思います。

次回は、うつ病相でほかにできることのヒントについて書きます。

以上、「双極症のうつ状態のつらさを増す要因。なかなか浮上できない人へのヒント」について解説してみました(‘◇’)ゞ

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