「双極症(双極性障害)についての100の質問」企画、第94回目です。
今回のテーマは、
「双極症、うつ状態で子どもに十分な対応ができず、子どもへの影響が心配な人へ」
です(・∀・)
以下、質問者さんからのメッセージです。
「私は未婚シングルマザーです。16歳の時に発症、2回の入院歴があります。今は、イヤイヤ期の真っ只中の娘と二人暮らしで頑張っています。最近気分が落ち込み気味でしたが、最低限の保育園の送り迎えや育児、公園に行くなどはできていました。家事は母親に来てもらい、部屋の掃除以外の家事を全てやってもらっています。一昨日、涙が溢れて止まらなくて、つらくてトイレにこもって鍵をしめて泣いていました。娘が私を探して扉をドンドン叩き、泣き叫ばれましたが、対応できず、何分か後にトイレから出て、抱きしめて謝りました。娘は私の不調について何か感じているようです。今夜は2時間も泣き叫び、中々寝てくれなくてまた辛くなりましたが、これは私の責任だと思うと申し訳なくて一緒に泣きました。今後またそうなった時どうしたらいいですか? 家事を手伝ってくれる母親は週6日フルタイムで働いているので、実家で休養も娘を預けるのも難しいです。娘の父親も、私の父親もいません。でもこれ以上、娘に寂しさや不安を感じてほしくないです」
小さなお子さんがいる中での闘病は、質問者さんのように、一人親であったり、実家の助けを得がたかったり、頼れる身内以外の人がいないなどの条件下では難しいものです。
そもそも病気が無くても、また、家事の多くを誰かが肩代わりしてくれたとしても、乳幼児と長時間一緒に過ごすのは大変なことですよね。
双極人と育児の相性は悪いかもしれない
双極人にとって大事な夜間の睡眠も、十分に時間がとれなかったり、質が悪くなることが想像されます。
基本的に子どものペースに合わせた時間スケジュールとなりますから、自身の休みたいタイミングで横になったり、刺激を少なくして一人で過ごすことも難しいです。
うつ状態の時に、家の外では何とか頑張って、帰宅したら力を抜くというやり方もとれません。
軽躁状態になれば、短時間の睡眠時間に加えて、お子さんの騒がしさなどが刺激となって病状を悪化させることも考えられます。
質問者さんは保育園を利用されているようなので、平日の日中は一人時間を確保できているかもしれません。
ただ、そうであれば、余計に心配になります。
それなりに休息できる時間がありながらも、平日は夕方〜翌朝までの対応に限られながらも、お子さんの前で感情コントロールができないほどの病状なわけですから。
主治医や支援者に相談は?
「主治医や支援者に相談できているのか?」という点も気になります。
病状は悪化傾向ですから、本来なら薬の調整、環境調整の話があってしかるべきです。
もし、そういったことを相談できない関係性なら、また心配です。
主治医や医療機関にいる看護師や精神保健福祉士に相談すれば、質問者さんの状況に即した助言が得られるはずで、ここで質問するよりずっと有意義なはずです。
「援助希求力」という言葉があります。
これは文字そのままですが、「助けを求める力」です。
双極症に限らず、精神疾患を患う方は、病気に至る前段階でヘルプを出せていなかった人が多いと感じます。
「自分はまだ頑張れるはず」
「自分でなんとかしないといけない」
「助けを求めても、誰も何もしてくれない」
思考パターンは様々ですが、軽症のうちにヘルプを出さない(出せない)ことで、事態が悪化します。
(上記の思考パターンがすでに病状に影響されていることも往々にしてあることで、患者さんを責める意味合いはありません)
質問者さんも、医療機関や精神保健センターなどの相談を考えたけれど、しんどくて出向くこととも、電話をかけることすら行動できなかったのかもしれません。
頼れる身内や知人が少なく、何かあったときには困ることが予想される環境にいる双極人は、落ち着いている時にこそ、いざとなったときに、
「どこにヘルプを出すか?」
「自分はどうするか?」
「子どもはどうするか?」
「母にはどう動いてもらうか?」
などの事案を相談しておくことが必要です。
病気のためにやむをえない事態もある
病状のために、どうしても子どもと向き合えない時は、一時的に質問者さんのような行動を取らざるをえません。
お子さんは不安になって泣きますが、こういったことは病気に関係なく起こり得るシチュエーションなので、一日に一回くらいこのようなことがあったとしても、お子さんへの影響をそこまで心配しなくてもいいと思います。
ママがトイレで用を足すとき、火を使った調理中など、泣きわめくけれど、用事を済まさないといけない場面はあります。
大事なのは、質問者さんがされているように、少し落ち着いてから、優しく対応してあげることです。
難しい言葉が分からない時期でも、
「ママがつらくて、あなたにもつらい思いをさせてしまってごめんね。待っててくれてありがとうね」
と伝えましょう。
数分でおさまらず、長時間お子さんを一人にする事態になるなら、その時はもう一緒にいられないと考えてください。
離れることが、ご自身のためでもあり、お子さんのためでもあります。
最優先は「病状コントロール」
過去記事にお子さんが幼いときの病気との付き合い方について書いていますので、こちらも参考にされてください。
(こちらはパートナーがいると仮定しての記事ですが重なるヒントもあります)
参考:双極症を抱えながらの「育児」子どもが幼いときの育児のヒントと注意点とは?
上記記事にも書いたように、
家事やパートナーへの対応 < お子さんへの対応 < 病状コントロール
です。
病状コントロールがうまくいけば、お子さんにも余裕をもって対応できますよね。
そして、そのために、主治医に相談の上、薬物調整を行い、訪問看護やヘルパーの利用がまだならそれも導入しましょう。
うつ状態になると、自宅にこもりきりになることも多いです。
お子さんへの対応で悩まれていることを話すだけで、誰かがそのつらさを分かってくれるだけで、苦痛は少し和らぐものです。
子育て経験のある看護師やヘルパーが、心の軽くなる助言をくれることも期待できます。
それでも現在の環境では改善しないならば入院も検討しましょう。
お子さんは預けることになりますが、すぐに叶うことではありませんから、近隣の児童相談所にまずは相談しましょう。
ご自身からはハードルが高ければ、通院先で対応してもらえないか聞いてみてください。
その際、お子さんを預けることを「可哀想」「寂しい思いをさせる」と感じるのは当然です。
しかし、このまま病状が良くならず、悪化したときのことを想像すれば、やむなしと思います。
子どもを施設に預けることについて
2015年の厚生労働省の報告では、児童養護施設への入所において、
親の精神疾患を理由とする入所は12.3%を占める
とのことです。
そして、そのほとんどは母親の精神疾患が理由だそうです。
質問者さんのように、シングル家庭で、頼れる身内も少ない方が多いと想像されます。
預け先としては、質問者さんのお子さんの年齢は不明ですが、2歳未満であれば「乳児院」、2歳以上であれば「児童養護施設」が考えられます。
また、「一時保護所」という児童相談所に付属する施設があります。
ここでは、緊急で保護を必要とするお子さん(おおむね2歳以上18歳未満)を一時的に預かってくれます。
単に子どもの世話をしてくれるだけでなく、今後の養育についての相談や対処法の検討などのサポートも得られます。
いずれにせよ、うつ状態が回復基調となるまでの短期間の利用を想定して、話だけでも聞いてみるといいと思います。
まとめ
実際にお子さんを預けるかどうかは別としても、そういった方法が取れることを知っておくことは少し心の支えになると思います。
また、もしお子さんを預ける方向になったとして、「子どもを施設に預ける」ことについて周囲の人が穿った見方をしてくることがありますが、ご自身と、それ以上にお子さんのための決断であることを忘れず、ネガティブな言葉は流すようにしましょう。
さらには、いざとなったらの決断も質問者さんには困難かもしれませんから、その決断はお母様にお願いしておきましょう。
主治医が現状を認識し、薬物調整にて少しでも回復傾向となり、お子さんと離れ離れになることが回避できるよう祈っています。
以上、「双極症、うつ状態で子どもに十分な対応ができず、子どもへの影響が心配な人へ」について解説してみました(‘◇’)ゞ