「双極症(双極性障害)についての100の質問」企画、第95回目です。
今回のテーマは、
「双極症、病気について、いつ子どもに打ち明けるべき? or 隠しておくべき?」
です(・∀・)
以下、質問者さんからのメッセージです。
「私は双極症Ⅱ型との診断を受け、通院服薬しながら働いています。小学校3年生の子どもに、私の病気についてどのように明かしたものか悩んでいます。現在のところ、子供は私の病気が何であるか知りません。私が毎日服薬し、定期的に通院していることは知っています。子ども向けの双極症の絵本(「きょうのお母さんはマル、お母さんはバツ」のような)も出ていることから、今のうちに打ち明けるかどうかを妻に相談したところ、妻は絶対に伏せておく派でした。いつ、どのような形で打ち明けるべきでしょうか?自然と悟るまで待つべきなのでしょうか?」
お子さんがいる双極人なら、いつの段階で病気のことを伝えようか、悩む方は多いでしょう。
Ⅰ型の人は躁状態が激しいため、お子さんに隠す方が難しいです。
(病気の詳細を伝えるかどうかは別として)
一方、Ⅱ型の場合は入院に至らず、通院と服薬でなんとかコントロールできている人が多いので、より迷うことだと思います。
ちなみに、質問者さんの参考にされた書籍はお子さんに読んでもらうのにピッタリなものです。
書籍紹介サイト:「きょうのお母さんはマル、お母さんはバツ 双極性障害の親をもつ子どもにおくる応援メッセージ」星和書店
気になる方は手に取ってみてください。
Contents
自然と悟るのを待つことについて
病状がコントロールされていれば、双極症の明らかな症状を目にすることはありません。
年齢を重ねることで「悟る」ということを期待するのは難しいと思います。
お子さんがときどき気分症状を目にすることがある病状であっても、「双極症」であると悟れるかどうかは怪しいです。
今はネットで何でも調べられますが、適切な情報にあたることはお子さんには難しく、お父さんの様子から得た断片的な情報からまったく別の病気と認識してしまうことも考えられます。
また、お子さんはお父さんの服薬・通院を知っているとのことで、何らかの病気であるとは認識していらっしゃるでしょうから、親から説明がないまま成長すると、
「家族の一員なのに、自分だけお父さんの大事なことの詳細を知らせてもらえない」
「信頼してもらえていない」
などと感じたり、情報が与えられないがゆえに、得体の知れない不安が高じて、
「お父さんの病気は自分が悪いことをしたせいだ」
「お父さんは子どもに言えないようなこわい病気にかかっているんだ」
などと信じてしまうことが心配されます。
「絶対に伏せておきたい」という考えについて
奥様は「絶対に伏せておく派」とのことですが、おそらく「小学校3年生」という年齢を考慮してのことだと思われます。
・説明したところで、理解すること、受容することができるのか?
・不安や混乱を与えてしまうことにならないか?
・言わなくてもよい場面、言わなくてもよい人に病気のことを話してしまわないか?
・お父さんが精神疾患を持つと知られて何か不利益がないか?
「子どもには隠しておきたい」という気持ちは配偶者でなく、当事者であっても自然な気持ちです。
幼いお子さんは、何かあったときに自分で自分の心を守れないことが考えられます。
また、お子さんに話すことで何かトラブルが起こり、奥様や質問者さんがつらくなることの懸念もあります。
話したことで、お子さんとの関係がぎくしゃくしたり、お子さんが「知りたくなかった」などと泣くことも考えられます。
ただ、子どもに何も伝えないままでいいのかというと、病状がかなり安定されていて、例えば高血圧の薬を毎日飲んで、定期的に受診しているのと変わらない生活ができているのなら急いで話す必要はないと思いますが、
年に1回でも気分エピソードが出現していて、その症状をお子さんが認識することがあったり、お子さんとの会話や交流に影響が出る場合には伝える方がいいと思います。
症状が目立つかどうかは打ち明けるかどうかのポイントになります。
それは、お子さんのためでもあります。
情報があることで、子どもの心を守れる
お父さんが一緒に出掛けられなかったり、イライラしていることがあるけれど、それは病気のせいであって、自分がお父さんを疲れさせたり、怒らせたりしたわけではない
としっかり認識できることは重要です。
また、お子さんも家族の一員ですから、家族にとって大事なことを共有することは信頼関係を築くにおいて大事なことです。
お子さんに大きな負担をかけることはいけませんが、
・お父さんの気分レベルのチェックをする
・「もう寝る時間だよ」などと生活リズムに配慮した声掛けをする
・「お仕事遅かったけど、疲れがたまっていない?」などと活動ペースに配慮した声掛けをする
このような役割を持ってもらうことは、とても良いことだと思います。
(もちろん、お子さんがしたくないことを無理強いする必要はありません)
子どもの意向や話し合いをするタイミングにも配慮する
お子さんが「お父さんの病気について知りたい」と思っているか、
「何だかこわいから、まだ知りたくない」と思っているのかによっても、対応は変わります。
親が「こうしたい」という気持ちで突っ走って、お子さんの気持ちをないがしろにすることはいけません。
もし、お子さんが「知りたい」と思っていたとしても、情報は小出しにして、お子さんが理解できているか、不安が強まっていないか、確認しながら話すことが大事です。
精神疾患でなくとも、「病気の話」というものは子どもにとって「難しい話」です。
お子さんの心や時間に余裕があるときに話すことも意識してください。
(もちろん、ご両親にも心と時間に余裕があるときに)
夫婦で話し合うこと
質問者さんはこういった質問をされて、「今の段階から、少しずつ伝えるべきです」と回答していたとしたら、そう実行されるのでしょうか?
奥様の「絶対に伏せておく」という意見をどうするのでしょうか?
文面から察するに、質問者さんはお子さんに病気のことを伝えたい気持ちで、その気持ちを後押しする回答が欲しかったのかなと想像します。
しかし、奥様の意見を放っておいて、お子さんにカミングアウトすることはおそらくされないでしょう。
お子さんへの伝え方、タイミングはとても大事な要素ですが、さらに大事なのは、
夫婦が話し合いを重ね、価値観をすり合わせ、夫婦が「今なら」と思えたタイミングで打ち明けること、また、夫婦が「このレベルの情報なら」と思えた内容を話すこと
であって、これ以上の正解はないでしょう。
このように夫婦の考えが近くなっていれば、伝えたことで、何かあったときにも力を合わせて対処ができると思います。
奥様の気持ちにも配慮し、伝えるレベルをよく考えて、「それでもご自身は○○と思うから、子どもに伝えたい」と話してみてください。
急がず、みんなの心がその方向に向かうときを待つのも大事ですよ。
以上、「双極症、病気について、いつ子どもに打ち明けるべき? or 隠しておくべき?」について解説してみました(‘◇’)ゞ
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