「双極症(双極性障害)についての100の質問」企画、第96回目です。
今回のテーマは、
「双極症、周囲の人に病気を理解、受容してもらいたいと思うのはぜいたくなこと?」
です(・∀・)
以下、質問者さんからのメッセージです。
「私は薬のおかげでなんとか仕事を続けてこられ、破綻まではいかないで済んではいます。一方、周囲からは病気ではなく「甘え」「そういう性格」だと思われてしまっています。身内も含めて人間関係が壊れてしまい、つらいです。身内からは病気について何も聞かれません。私に関わりたくないようです。他者に対しては、自分の中での許せないラインを超えると、後先考えずに気持ちをぶちまけてしまい、人間関係が続けられません。病気であることは自分自身は受容していますが、周りの人にも少しでも理解してもらいたい。「甘え」や「性格」ではなく、症状であることを理解してもらいたいです。これは贅沢な願いなのでしょうか?」
双極症のコントロール、また、病気を抱えながらの生き方を模索する上で、「理解者」の存在は大きいものです。
だからこそ、薬物治療や仕事、経済的な問題などと並んで、もしくはそれ以上に双極人が悩むポイントかと思われます。
「周囲の人に少しでも病気を理解してもらいたい」
「通常気分モードでは見られない言動や振る舞いを症状としてとらえてほしい」
というのは当然の思いです。
周囲の人に理解してもらえないことでつらい経験をされた方も多いと思いますが、「病気を、自分を理解してほしい」という思いを諦めないでほしいです。
ただ、状況がゆえに理解者を得るのが難しいケースもやはりあります。
以前にも書きましたが、理解を求めることにはいくつかコツがあるので、こちらも参照されてください。
参考:双極性障害、同居する家族に病気を上手に伝えたいときの5つのポイントとは?
今回は、精神疾患への理解が得難い理由と、他者に何かを期待することについてまとめます。
なぜ精神疾患は理解されにくいのか?
双極症を含め精神疾患の難しいところは、多くの精神症状が、健常な人でも体験するそれと地続きである点です。
例えば、以下のようなことは、そのひとつだけをピックアップし、その程度を問わなければ、日常に起こりえることですよね。
・気分が憂うつ
・イライラする
・眠れない
・食欲がない
・人間関係がうまくいかない
・お金を使いすぎる
よって、様々な病気からの言動や振る舞いを、
「疲れが溜まったら誰にでもあること」
「何でも病気のせいにする」
「その人の性格でしょう」
などととらえられがちです。
また、人は自分に理解できないこと、許容範囲を超えることが目の前に迫ると不安が高まるので、それを避けたり、自分の中で手っ取り早く納得できるストーリーを作って、不安を収めようとするものです。
自分の近しい人が「精神疾患」にかかったことを否認する気持ちも一般的によく起こる気持ちです。
自分が逆の立場だったらと考えてみると分かりやすいです。
元々精神疾患の知識や理解があれば別ですが、家族や知人が「メンタルの病気になった」と聞いて、スムーズに受け入れられる人は少ないと思います。
また、その人との関係性も影響します。
元々親密で、互いに信頼し、助け合ってきた関係であれば、おそらく精神疾患という未知の事柄についても理解は進みやすい、少なくとも理解しようと努力してくれると思われます。
そうではなくて、家族といえども関係は希薄で、個人主義的に暮らしてきたならば、本人のピンチのときに積極的に本人に関わり、一生懸命考えてくれる可能性は低いと想像されます。
精神疾患に関わらず、本人の何らかのピンチの際には、それまでの家族関係や友人関係が如実にあらわれるものだと思います。
(病気や困難を機に結束が強まることももちろんありますが)
他者に何かを期待することについて
質問者さんはそのようには表現されていませんが、「他者が理解してくれない」というのは自分が中心になった考え方です。
一方、その相手にも相手なりの思考や判断があります。
一方的に希望することは、相手のもともとの精神疾患の知識量や本人との関係によっては難しいでしょう。
「〇〇してくれない」という不満が募るときは、相手との関係はうまくいっていないと想像されます。
相手を変えることはできません。
自分が変われば相手も変わる、というのも少し違います。
それは、相手をコントロールしようとする気持ちが背景にあっての考えになります。
それが証拠に、自分が努力して相手が変わらなかったとき、怒りや悔しさがわき起こるでしょう。
じゃあ、病気を理解してもらうことは諦めなければいけないかというと、そうではありません。
「誰かに理解してほしい」という気持ちは大事に。
しかし、それを直接的に求めないことです。
今できることをコツコツと。
今、医療者や支援職以外の理解者がいない場合、その状況でできることをコツコツと続けていきましょう。
生活リズムの安定、内服の管理、休息や睡眠時間の確保、ストレスケアなど。
「誰も理解してくれない」と自暴自棄にならないことです。
まずは、自分で自分自身をいたわりましょう。
闘病に奮闘している自分をほめてあげましょう。
家族や友人はあなたのことを見ています。
質問者さんの家族さんは無関心なようですが、自身の心の安定を守るために無関心を装っているかもしれません。
質問者さんが病気に、治療に、懸命に向き合い、そして、少しずつ症状をコントロールしていく姿を見てもらうことです。
「うがった見方をしていたけれど、あれは本当に病気の症状だったんだな」
「生活リズムを整えるとか薬を飲むことで、少しずつ良くなってきているな」
人は、親子関係や支配的な関係でもない限り、強要されることではなかなか動きません。
(親が子どもに親の望ましいことを強要するのはもちろん良くないことですが)
他者の行動する姿を見て、考えを改めたり、自らの行動を変えるものです。
繰り返しになりますが、自分が行動すれば、「必ず」他者が考えを改めたり、行動を変えてくれるわけではありません。
質問者のケースでいえば、質問者さんがいくら努力したところで家族さんが理解を深めてくれないことは無いとは言えません。
それでも、コツコツとできることを続けていきましょう。
治療で気を付けることだけでなく、普段の会話やコミュニケーションも意識しましょう。
症状が強く出ているときは難しいかもしれませんが、朝顔を合わせたら笑顔で「おはよう」と言いましょう。
家の中でも役割を持ち、できることで家族に貢献しましょう。
また、家族さんや友人が望むような理解者にならなかったとしても、病状がコントロールされて大きな支障なく生活できるようになれば、「誰も理解してくれない」という考え、苦痛は確実に和らぎます。
質問者さんは治療に向き合うことで、少なくとも仕事は継続できています。
とても素晴らしいことですから、今の状態を維持しつつ、「対人関係での感情コントロール」という次のステップを目指しましょう。
現状で「理解を得る体験」を積み重ねる
質問者さんの場合、少なくとも今すぐには理解者を得ることは難しそうです。
まずは、医師や精神保健福祉士、看護師など、専門職をあなたの理解者とすることが大事です。
「そうじゃなくて、医療者や支援職でない、家族や友人、職場の上司や同僚を理解者としたいんです」
質問者さんはそう仰られると思います。
それでも大事なのは、「現状でできること」です。
今自分の「持てるもの」、「できること」に注目して、それを大切に育てていくという考えが必要です。
ここまで頑張ってこられた質問者さんのことを、少なくとも私は応援しています。
「理解者がいない」ことに囚われすぎず、今できていることや、今日のささやかな幸せに目を向けながら、コツコツと歩みを進めて行きましょう。
以上、「双極症、周囲の人に病気を理解、受容してもらいたいと思うのはぜいたくなこと?」について解説してみました(‘◇’)ゞ
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