「双極症(双極性障害)についての100の質問」企画、第97回目です。
今回のテーマは、
「双極症、家族歴を明らかにすべき?&主治医と家族のコミュニケーションについて」
です(・∀・)
以下、質問者さんからのメッセージです。2つの質問にそれぞれ回答します。
「私の主人が双極症と診断されており、家族の側からの質問になります」
①家族歴をどこまで明らかにすべきか
「夫は父を自死で亡くしており、夫の母が苦労して夫を育てたそうです。夫の父(義父)に精神科の入院歴があり、今まで聞いたエピソードなどをふまえると、義父は双極症だったのかなと思います。それを主治医に推測の状態で言っていいか(主人の前で言うには憚られる)、それとも義母に義父の病名を確認してから言うべきか、または言わなくてもいいのか(義父の死因は初診の際に記入してるので)をお伺いしたいです」
精神科では初診時に必ず、「家族歴」を聞きます。
(※他の診療科でも聞かれますが)
双極症を含め、遺伝的な要因が発症に影響する疾患があるためです。
診療や治療に家族情報は影響するの?
現時点では「うつ病」や「不安症」などと診断されている患者さんの家族に双極症の人がいる場合、
「現在の本人の症状からはそう診断できないけれど、いずれ双極症と明らかになるのでは?」
と、考えながら診療することになります。
また、本人の病状から明らかに双極症であると診断されるケースでも、本人の近しい家族に双極症の方がいることは、その診断をより強固にします。
質問者さんの旦那さんの場合、すでに旦那さんは双極症と診断されていますから、診断においては前述したような意義はあまりありません。
ただ、旦那さんは双極症Ⅱ型の診断で、義父がⅠ型だった場合、
「今後、大きな躁病エピソードが現れるのではないか」
と、家族歴のない方より慎重に経過を見ていくことになります。
治療においても、双極症Ⅱ型の場合は通常気分の状態がある程度持続した後も薬物療法を維持するかどうかは、明確なコンセンサスが無いのが現状ですが、家族にⅠ型の方がいる場合は維持療法が推奨されます。
(その他、頻繁に起こり、また、症状が重度なうつ病エピソードがある場合も維持療法が勧められます)
よって、Ⅰ型の家族歴のないⅡ型の患者さんには、
「安定した気分が続いているから、お薬を減らして、やめていくことを試してみましょう」
と、提案する可能性があるのに対して、Ⅰ型の家族歴のあるⅡ型の患者さんには、
「落ち着いた状態が続いていますが、再発のリスク、またその際のダメージが大きくなるリスクが高いため、お薬を継続しましょう」
と説明する可能性が高くなります。
(Ⅰ型の場合は維持療法を行うことが多いですが、やはり家族歴がある場合には維持療法がより推奨されます)
以上を考慮して、義父の情報が必要そうであれば、何らかの方法で伝えてもいいと思います。
ただ、質問者さんの立ち位置からは、懸念されているように、勝手に主治医に報告することは控えた方がいいでしょう。
自死は、家族にしてみれば衝撃的な事件ですから、慎重に行動しないといけません。
少なくとも、義母に聞くよりは本人(旦那さん)に、
「主治医にこの情報を伝えた方がいいかもしれない」
と相談して、本人の意向を確認し、それに沿って行動すべきです。
そもそも、初診時の問診票にて「本人の父親が自死している」と主治医が知れば、それは重要な情報ですから、その疾患や自死の詳細を本人や付き添いの家族に聞くものです。
(本人の病状から、情報聴取のタイミングをはかるケースはあります)
質問者さんが知らないだけで、本人(旦那さん)はすでに主治医から問われて答えているかもしれません。
新しい主治医とのコミュニケーションについて
2つ目の質問です。
②主治医が変わった際の主治医とのコミュニケーション
「主治医の転勤で主治医が代わりました。先生が変わったばかりで、質問したいこともうまく伝えられなかったり、先生の考えもまだわからず、できれば一緒に診察に私もいきたいのですが、毎回というわけにいきません。質問事項を箇条書きにしてメモで伝えるのは失礼ではないでしょうか?主人は自分から質問しません」
主治医との円滑なコミュニケーションは治療において大切なポイントです。
まだ慣れないうちは、質問者さんのように、聞きたいことがうまく聞けないことがあるかもしれません。
主治医とのコミュニケーションに厳格なルールや画一的なルールはありません。
一般的に、医師は主に患者さんから話を聞きたいものですが、病状によっては家族さんなどからの補足説明が必要なケースがあります。
質問者さんの旦那さんはあまり質問されないタイプの方のようです。
家族さんの同席が難しいときはもちろん、紙に最近の様子をまとめたり、質問事項を書いてお持ちいただければ大丈夫です。
注意点があるとすれば、以下のようなことです。
①あまり長文にならないこと
②質問も気になる点に絞って書くこと
長文すぎると、医師は本人の話を聞く時間も必要なのに、その時間が不十分になるかもしれません。
また、質問が多すぎると、本人に説明しても、すべてを記憶して持ち帰ることは難しいかもしれません。
医師によっては、お返事を紙にまとめてお渡しするかもしれませんが、それでも重要なことに絞って質問するのがいいと思います。
あまり、「こうすべき」「こうしては失礼かもしれない」などと考えすぎず、色んなやり方を試してみましょう。
その中で、現主治医とのコミュニケーションの取り方が構築されていくと思います。
(おそらく主治医側も模索中だと思いますよ^^)
以上、「双極症、家族歴を明らかにすべき?&主治医と家族のコミュニケーションについて」について解説してみました(‘◇’)ゞ