兵庫県三田市の心療内科・精神科ならさくらこころのクリニックへ

ブログ

ブログ

双極性障害、躁状態の性的逸脱行為がコントロール困難。どうしたらいい?

2019/04/27
双極症(双極性障害)100の質問
精神科医・さくら(@sakura_tnh)です。自身の知識と経験を活かし、人をワンランク上の健康レベルに底上げ=幸せにすることを目指しています。

「双極性障害についての100の質問」企画、第13回目です。

今回のご質問は、

「女ですが性的逸脱に困っています。夫がいながら他の男性からも性的な目で見られたい気持ちが強いです。夫との夫婦生活は週に2,3度ありますが、それでも満たされません。SNSに半裸の写真を載せたり、ネット上でいやらしい会話などを楽しんでしまいます。不倫するつもりは無いですが、夫にバレたら…と思うと罪悪感でいっぱいになります。精神科医は、性的逸脱についてどう考えているのでしょうか?また治療法などあるのでしょうか?」

です(・∀・)

双極性障害の躁・軽躁状態においては、性欲の亢進や性的逸脱行為が見られることがあります。

通常気分、本来のその人なら絶対にしないような行動や言動、軽度であれば露出の多い服装となる、性的な言動を公然とする、それ以上だと、パートナーがいるのに浮気をする複数の人と性的関係を持つなどの、分別のつかない行動を「性的逸脱行為」と呼びます。

入院レベルの躁状態では、そういった問題が浪費や無謀な運転など、他の逸脱行為とともに多少なりとも明るみになっているケースが多いです。

一方、軽躁レベルでは、本人自ら性的なエピソードを自慢気に語るケースもありますが、分別が多少なりとも残っていれば、診察の場面で言い出しにくい話題であること、

また、家族は性的逸脱行為を把握していても家族の恥と感じ、医療者に情報として話さない傾向があることより、主治医が本人の性的逸脱の症状を正確に把握できていないことがしばしばあると感じます。

双極性障害の性的逸脱行為に限らず、精神症状による性機能の問題、悩み、薬の副作用による性機能不全や乳汁分泌、生理不順などを含めて、基本的に性にまつわる話題は、とくに異性の主治医に対しては打ち明けづらいものです。

ちなみにこの記事では、双極性障害と診断されていても、気分変動に関わらず(躁・軽躁状態でないのに)、そういった志向のある方は想定しておりませんのであしからず。

この質問の困りごとは「気分の高揚とともに現れている」と想定して解説します。

精神科医は性的逸脱行為についてどう考えているか?

まず、精神科医はこういった性的な逸脱行為をどう考えているかですが、

「躁・軽躁症状のひとつ」

として認識しています。

浪費や無謀な運転と同列に考えています。

性的逸脱行為はすべての躁状態のケースに出現する症状ではありませんが、躁状態では、普段のその人と比べて、気が大きくなり、アイデアが次々に浮かび、様々な意欲が亢進し、社会的に抑制すべき行動・言動・感情が心のままに表れてしまうものです。

Aさんは、服を買いすぎる、旅行に頻繁に行くような症状が顕著

Bさんは、誇大的な言動が目立つ、人とトラブルを起こすような症状が顕著

など、人によって目立つ症状は違います。

そのひとつとしてとらえるのみです。

ただ、上記の例のAさんは、お金を使いすぎる点から経済的な心配が主で、対するBさんは、Aさんより対人関係を損なうことが主な心配となり、症状の結果として損なうおそれのあるものが異なります。
(現実には複数の要素が絡みますが、ここでは説明のため分かりやすく表現しています)

性的逸脱行為は、対人関係、大事な人との関係を破壊する恐ろしい症状です。

「大事な人を失うリスクは健康な人より高い」と肝に銘じる

社会的地位を失うおそれもありますが、それ以上に、パートナーや家族、本来なら病気とともに生きていく中で支えとなってくれる存在を失うことは致命的です。

浪費や暴言などの症状と同様、本来のその人が望んでそうしたわけではなく、「病気がさせたこと」ではありますが、逆の立場になってみて、想像してみましょう。

「いくら病気がやらせたこととは言え、許せることと許せないことがある」

多数の人は、上記のように感じるのではないでしょうか?

患者さんの回復や病状安定をはかる上で大事なパートナーや家族など、キーパーソンとなる方には、主治医から「これは病気の症状なので、おつらいとは思いますがご理解ください」と説明はしています。

しかし、支援者の心情をあまりにも乱すことになれば、長年寄り添ってきた仲であっても患者さんを支えていく気持ちが無くなってしまうことは十分に考えられます。実際、そういった話し合いの場面に立ち会うこともありました。

そうならないためにも、躁・軽躁症状の兆候に気づくコツの記事でも書きましたが、そのリスクを直視し、性的逸脱行為が極力起こらないように通常気分を保っていくことが大切です。

参考:双極性障害、躁状態を防ぎたい!躁状態への移行に気づく5つのコツとは?

性的逸脱行為の治療法とは?

躁症状としてこういった症状が顕著となっているわけですから、躁状態の治療が、イコール性的逸脱行為の治療となります。

気分安定薬である炭酸リチウム(リーマス)やバルプロ酸ナトリウム(デパケン)、抗精神病薬であるアリピプラゾール(エビリファイ)やオランザピン(ジプレキサ)などの量を調整したり、追加することで高まった気分を落ち着かせます。

躁状態に伴う症状ですから、気分が平静になってくれば、おのずと性的逸脱行為も消退していきます。

性的逸脱行為のリスクを下げるコツ

今回の質問者さんの状況を考慮して、性的逸脱行為が起こるとしてもできるだけダメージが抑えられるコツをまとめます。

・ネットの使用に制限をかける(スマホ、PCとも)

・何かのサイトに登録しているならアカウントを削除する

・性的な関心や衝動を、別のやり方で解消する方法を考える
(受動的に性的な情報を得るだけにするなど)

・夜の外出を控える

・どうしても抑制が効かないときに静穏に働く頓服を使用する

軽躁以上の躁状態に至った場合は上記の対策も不能となりますので、早めに手を打つことが大事です。

上記の対策に躊躇するようなら、いつか自身が大きな代償を払うことになるかもしれないことを忘れないようにしてください。

また、全体的に活動を控える、刺激を避ける、睡眠を十分とるなど、一般的な躁状態での自己対処行動も並行して行ってください。

アリピプラゾール(エビリファイ)の服用時の注意

余談になりますが、双極性障害の治療薬として頻繁に使われるアリピプラゾール(エビリファイ)は、ときに衝動制御障害を起こすことがあります。

これは、病的な賭博(ギャンブル)、病的な性欲亢進、過剰で無計画な買い物、暴食などの衝動的な行動がコントロールできなくなる症状です。

アリピプラゾールの服用を開始してから性的逸脱行為が出現した場合は、すぐに主治医に相談してください。

双極性障害では基本的に抗うつ薬は使いませんが、抗うつ薬で性欲亢進の副作用が見られる場合もありますので、その点もご注意ください。

性的な症状はなかなか実臨床の場では話題にしづらいテーマではありますが、本当はとても大事なテーマです。

「今まで言えていなかったいけど、伝えておいた方がいいな」

と思われた方は、主治医に一度話してみてくださいね。

以上、「躁状態での性的逸脱行為がコントロール困難。どうしたらいい??」について解説してみました(‘◇’)ゞ

\ フォローはこちらから /


記事が気に入ってもらえたら下部のシェアボタンをポチっとしてください☆

一覧へ戻る