「双極性障害についての100の質問」企画、第14回目です。
今回のご質問は、
「軽躁の時の自信があって他人から見ると自慢げに見えてしまう性格と、うつの時の前に出れないネガティブな性格と、どちらが本来の自分の性格なのかがわからなくなります。そのせいで避けられてしまう人や遠ざかってしまう人も少なくありません。二人の人間がいるような落差はどうしようもないのでしょうか?世の中にもっとそれについての理解を求めてもいいのでしょうか?」
です(・∀・)
双極性障害では、気分の波とともにセルフイメージも大きく変化するため、周囲の人はもちろん、本人も戸惑うことがしばしばあります。
上記の質問を「3つの問い」に分けて解説していきます。
Contents
どちらが本来の自分の性格なのか?
まずは、うつ状態の自分と躁状態の自分、どちらが本来の自分の性格なのかという点についてですが、
「どちらも本来の自分の性格とは言えない」
が答えになります。
そもそも、性格とは
きわめて多義的な概念であるが,心理学では一般に人間の行動の背景にあって,個人に特徴的な行動様式や考え方などを規定している持続的な態度の系をいう。
参考:コトバンク
病的な自分は本来の自分の性格と地続きのようでありながら、その実態としては、「本来の自分の性格」とは呼べない「モノの捉え方」「言動」「振る舞い」を認めます。
本来の自分の性格は「通常気分」の時の「モノの捉え方」「言動」「振る舞い」から規定されるものと考えられ、それは生まれ持った性質に、育ってきた環境や経験が加わって形成されたものです。
よって、気分が揺れているときは「本来の自分」について悩みがちですが、
うつ状態では「この悲観的で何もやる気のしない自分が本当の自分だ」
躁状態では「明るく外向的で活力に満ちた自分が本当の自分だ」
などと、気分の影響を受けた考え方になってしまうため、その問いかけは浮かんで来たら「考えても仕方のないこと」と、横に置いておくのが一番です。
人が遠ざかってしまうのはどうしてか?
質問者さんは、気分の波とともに人が変わったようになることで「他者から避けられる」「他者が遠ざかっていってしまう」と感じているようです。
まず、「避けられる」「遠ざかる」ことがどうして起こるのかを考えてみます。
①本人の言っていること・やっていることが一貫しないため
うつ状態と通常気分と躁状態では、言動や行動が変化します。
・ある時はこう言っていたのに、ある時はこう言うから、話がしにくい・信用できない
・ある時に約束したことを、またある時に破られた
・会う時によって振る舞いが違いすぎて、その変化を受け入れられない
などと周囲の人は感じ、本人を避けてしまうかもしれません。
②他者が病気を理解していないため
そういった気分変動に伴う言動や行動の変化は「双極性障害」という病気からくるものであることを、周囲が知らなかったり、病名は知っていてもその理解に乏しいことはよくあります。
人は理解の範疇を超えるものを目の前にすると自分の不安をかき立てられるため、安心を回復するために、不安を呼び起こす対象を避けてしまう傾向にあります。
元々親密な関係でなければなおさらのことですが、理解を深める努力は期待できず、面倒になることを避けて本人に関わらなくなることがあります。
病気になった側からすると、「避けないで」「つらい」「分かって」「許容して」と思うものです。
一方で、この病気になる前の自分を思い返せば、「同じように避けていたかもしれない」と思う人が多数でしょう。
現状では、治療者・支援者・当事者が一体となり、コツコツと世間に理解を求めていくほかありません。
③あまりの変化にショックを受けたため
これは親密な関係のときに考えられることですが、病前の本人のことを理解し、大切に思っていた人ほど、「人となり」の変化、とくに躁状態の本人の様子にショックを受けることがあります。
親密な関係なので、①のケースよりいっそう理解を求めたいところではありますが、病気になった当人でも病気を受け入れるまでにかなりの葛藤と時間を要するものです。
元から知識があったり、周囲に同じ病気の人がいたりすれば、理解は早いかもしれませんが、基本的には、周囲の人が病気を理解・受け入れするにも時間がかかることを認識しましょう。つらいかもしれませんが、待つ姿勢も大切です。
④致命的なトラブルを起こしてしまったため
これも躁状態で起こりやすいことですが、誇大的な言動、暴言、威圧的な態度、攻撃性、暴力、浪費、性的逸脱行為などにより、人間関係に致命的なトラブルを起こしてしまったケースです。
「病気だから」と理解・許容してもらえるといいのですが、心情的に難しいこともやはりあります。
参考:双極性障害、躁状態の性的逸脱行為がコントロール困難。どうしたらいい?
2人の人間が自分の中にいるような落差。その理解を世の中に求めていってもよいか?
2人の人間が内包されていることによる苦悩の解消法は、結局のところ、気分の波をコントロールしていくことに尽きます。
薬物調整に加え、生活習慣の見直し、睡眠不足・過活動・刺激物質などの刺激を避けることなど、日々こつこつと取り組んでいく必要があります。
また、病気でなくとも、人はゆるやかに気分の変動を繰り返すものです。
よって、あまり「2人の人間」に注目しすぎず、周囲に迷惑のかからない気分変動の中で揺れる程度なら、
「楽しいことがあったらテンションが上がるし、悲しいことがあれば憂うつな気分になる。みんなある程度はこんなものだ」
と考え、自分の中の少〜し上下に揺れてしまう2人と共存していきましょう。
「世の中に理解を求めていってもよいか」という点については、もちろん
イエス!!
です。
声を大にして
イエス!!
です。
「双極性障害っていう病気は、気分の上がり下がりでその人の雰囲気まで変わってしまうみたいよ」
「通常気分に戻れば、いつもの○○さんに戻るんだから、今は見守っていてあげよう」
「トラブルになりそうなときはこちらから引いておこう。落ち着いてから話し合いをしよう」
などと、思って対応してもらえたら、双極人はそうとう生きやすくなるでしょうし、病気のコントロールにも前向きになれると考えます。
私も微力ながら、「双極性障害」を知らない、もしくは誤解している人に啓発活動をしていきたいと思っております。
前述の話ですが、誰しも「未知のこと」「自分の安心を脅かされるもの」には警戒心を持つものですから、理解を押し付けるのではなく、相手のペースに合わせて伝えていくことが大事です。
以上、「双極性障害、本来の自分の性格が分からなくなってつらい人への3つのヒント。」について解説してみました(‘◇’)ゞ