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双極性障害を抱えながらの「恋愛」や「結婚」に悩んでいる方への7つのヒント

2019/05/11
双極症(双極性障害)100の質問
精神科医・さくら(@sakura_tnh)です。自身の知識と経験を活かし、人をワンランク上の健康レベルに底上げ=幸せにすることを目指しています。

「双極性障害についての100の質問」企画、第26回目です。

今回のご質問は、

「双極性障害の場合、恋愛やパートナー探しにはどういう風な努力や心構えが必要ですか?」

です(・∀・)

以下、少し長いですが質問者さんからのメッセージです。

双極性障害2型、回復期です。30代になったので結婚出産の焦りもあるし、周りからプレッシャーもかけられます。なるべくかわすようにはしてます。私は気分の波を少なくすることが大事だと考えています。小さな幸せに目を向けるようにしており、日常生活は基本楽しいです。

以前は、いろいろ出会いの場に赴いていましたが、

①恋愛はエネルギーを消費する
②喜んだり、悲しんだり感情の波がつきもの。それにより、日常生活に支障をきたしたり、症状が悪化しないか怖い。
③環境の変化がストレスに感じる。
④去年婚活パーティーのあと鬱症状が出て、仕事に支障をきたした経験あり。
⑤病気や性質を理解してもらえる人と出会えるか怖い。今までフラれること多数。(病気だけが原因ではないのは承知です。)

以上の事を考えると異性に恋愛的な関係を持つのが消極的になりました。できることならば、病気に理解がある方と暮らしていけたら、より幸せで楽しいだろう、とは考えています。経済的にも、親の老後、自分の老後も心配ですし。しかし、今まで努力して築き上げてきた生活が恋愛で壊れるのが怖いです。

この病気の場合、恋愛やパートナー探しにはどういう風な努力や心構えが必要ですか?アドバイスお待ちしてます。

恋愛や結婚については、諸々の背景・事情が絡みますから、一般的なお話となることを最初に断らせていただいた上で、いくつか考えられることを書いてみます。

①そもそも・・・

そもそもですが、家族からプレッシャーをかけられて云々で結婚を考えるのは避けた方がよいでしょう。

病気の有無に関係なく、他者の意向に影響されて人生の重大な決断を行うことは、後々不快な思いをすることにつながりかねません

結婚後に何かトラブルやうまく行かないことが発生した場合に、「私は本意でなかったのに、結婚することを勧めてきた親のせいだ」などと腹を立てることは、双方にとって不利益です。

「何かコトが起きたら親の責任にしよう」などと思っているのでない限りは、周囲の意見を参考にするとしても、自分の意志で人生の方向性を決めましょう

※親に言われて決めたことでも、それでとてもうまく行って感謝することもあるでしょうから、あくまでひとつの考えとしてです。

まずは、ご自身が結婚やそれにつながる恋愛をしたいのかどうかを考えましょう。

②恋愛はストレスにも刺激にもなる

質問者さんは現在、病状が落ち着いてきており、ささやかな出来事に幸せを感じ、日々を楽しく過ごせていらっしゃるようです。

せっかく落ち着いているのだから、恋愛によってメンタルに大きな影響があることを危惧されるのも当然のことですね。実際、過去に恋愛絡みで調子を崩した経験もあるようですから。

病気が無くとも、恋愛によって人の心は揺さぶられるものです。最初から穏やかで凪のような恋愛〜結婚はごく少数派でしょう。

心が揺れるからこそ、恋愛には価値があり、自己の成長を促してくれたり、他者との関係を学ぶ機会にもなりえますが、双極性障害と付き合う中ではその心の揺れが病状に悪く響かないかが心配されます。

人によっては、友人関係でも病状に影響することもありますから。

うつ転、躁転にどんなストレスや刺激が大きく関与するかは人それぞれです。発病からの経過を振り返ってみて、恋愛が病状に著しく影響している人は「注意する刺激」ととらえておく必要がありますね。
(もちろん恋愛や結婚を諦める必要はありません)

③相手にどんな人を選ぶか?

結婚を前提としていなければ、インスピレーションで人を好きになることも多いでしょうけれど、結婚のパートナー選びとなると、病気の有無に関わらず慎重になるものです。
(大胆に判断・決断する人もいますが)

また、病気の有無に関わらず、その結婚がうまく行くかどうかは結婚生活が始まってみないと分からないことです。

相手の理解や協力はもちろん、自分自身の協力や行動も大事ですから、「相手選びが完璧なら間違いない結婚生活を送れる」とは考えないようにしましょう。

さらには、相手にも色々な背景があるものですから、あなたに特別な配慮を要することがあるかもしれないことも覚悟しておきましょう。

前置きをした上で理想を言えば、以下の2点を満たしている人なら安心ですね。

①双極性障害という病気を理解してくれている

②日常で気を付けるべきポイントを共有してくれ、必要時には声掛け・対処してくれる

上記を満たす人なら、そもそも、あなたのことを大事に思ってくれていて人には色々な事情があることにも理解がありつらい時にはあなたを支える気概がある人でしょう。

④病気のことを伝えるタイミングは?

ただ、病気のことをどの時点で話すかは難しいです。実際には交際が始まっていよいよ結婚の話、という段になって病気のことを伝えるか伝えないかで悩まれる方が多いかと思います。

伝えた結果、理解を求められなければ、話は白紙になるかもしれません。

個人的には、お付き合いの序盤で軽く打ち明けておくことをすすめます。

「メンタルの病気で」
「定期的に通院してて」
「薬を飲んでる」

くらいの簡単なワードで説明して、相手の反応を見るとよいと思います。

もしくは、「友人が双極性障害で〜」などと話してみて、どんな反応をするかも参考になると思います。

この段階で明らかに差別的なことを言う人は、精神疾患に限らず、偏った見方をする人である可能性が高いので気を付けましょう。

⑤子どもを持つこと前提の場合

今は色んな考え方の人がいますが、もし双方が子どもを持つことを希望しているなら、遺伝に関する記事でも書きましたが、子どもに遺伝するリスクがあることを伝えておくことをすすめます。

個人的には、後から知ることになるよりは、事前に伝えておく方がお互いのためかと思います。

参考:双極性障害は「遺伝」する病気なの?「遺伝」について心配される3つのこと。

※繰り返しになりますが、上記の記事に出てくる数字はあくまで参考であり、数字だけにとらわれないでくださいね。

⑥「結婚」に何を求めるか?メリット&デメリットを考える

前述しましたが、結婚、またはそれに準ずる人とのつながりは、人として成長し、多くのことを学ぶ機会になります。

そう思えれば、結婚を目指すと決めて、その上で病気のコントロールをどうしようか考えるといいですね。

恋愛感情によるストレスや刺激、大きな環境変化など、心配はあれど、主治医や家族と協力して乗り越えていってほしいとおもいます。

一方で、ご存知の通り、今の時代は「結婚」の価値が下がっているのも事実です。

以前は「孤独感を和らげる」「経済的なメリットがある」などの理由から、既婚者の方が未婚者より健康レベルが高い傾向にありました。

しかし、2017年のアメリカの研究では、今の若い世代においては既婚者の方が健康レベルが低いとの結果が出ています。原因ははっきりしませんが、結婚によるストレスがメリットを上回っていることが考えられます。

今の若い世代ではSNSなどで手軽に人とつながれ、シェアハウスなどの住まい方も広まり、必ずしも「結婚」に人とのつながりを求める必要が無くなってきていますし、パートナーとの関係も多様化しています。

よって、そういった観点から、どういった生き方、人とのつながり方が自分にとって健康であり、幸福なのかを考えて、オリジナルの人生設計をするのがいいですね。

もちろん、長い人生においては、想定していないことが起こったり、経験を重ねる中で考え方が変化することがありますから、その時々にベスト(またはベター)な選択をしていくとよいと考えます。

⑦個人的な経験について

自身の場合は、うつでほぼ寝たきりで、現実検討力や判断力が低下していた時に突発的に決めた結婚でした。

自分のメンタルのせいもあり、結婚後も長くグズグズの状態で、理解のある夫のおかげ(+私のちょびっとの努力)でいくつかの危機をなんとか乗り越えてきて、ここ数年でやっと家族になってこれた気がしています。

これはひとつのケースですが、事前に入念に準備しておいたからうまくいくとも限りませんし、逆も然りです。

ある程度の準備はしておく方がいいのは言うまでもありませんが、そこで足踏みし過ぎることはあまり有意義ではありません。

結婚してから「理想とする家族になるために2人で協力して、どう行動していくか」が大事ではないかと思います。

結婚してみないと何事も分からない、ということを改めて実体験からお伝えしておきます。

そして、死ぬ間際に「結婚してよかった」と思うかどうかは今は誰にも分からないことも、最後にそっと添えておきます。

以上、「双極性障害を抱えながらの「恋愛」や「結婚」に悩んでいる方への7つのヒント」について解説してみました(‘◇’)ゞ

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