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双極性障害は「高め安定」or「低め安定」どのあたりを目標にするとよい?

2019/05/17
双極症(双極性障害)100の質問
精神科医・さくら(@sakura_tnh)です。自身の知識と経験を活かし、人をワンランク上の健康レベルに底上げ=幸せにすることを目指しています。

「双極性障害についての100の質問」企画、第28回目です。

今回のご質問は、

「『低め安定』を目指す医師も多いと聞きますが、患者(特に�U型患者)の中には『高め安定』がいいという人もいます。さくら先生はどのあたりを目指すのが良いと考えますか?」

です(・∀・)

これは難しい質問ですね。

どのへんで安定させたいか・安定したいかは、医師も・患者さんも、それぞれに異なる見解、希望、目標を持っているものです。

ケースバイケースな話とはなりますが、私の考えも含めて解説してみます。

「低め安定」「高め安定」の定義?

まず、「低め安定」「高め安定」は医学的な用語ではありません。

みなさんはそれぞれどういう認識でしょうか?

「低め」・・・通常気分内の「低め」=通常気分でうつ状態寄りの気分レベル

「高め」・・・通常気分内の「高め」=通常気分で軽躁状態寄りの気分レベル

上記のようにとらえますと、そもそも治療は「通常気分」「気分症状寛解」を目指し、それを維持するものなので、「低め」でも「高め」でも問題ないわけですよね。

通常気分内にいられるなら、治療はうまくいっている・日常の対処行動がうまくできていると言えます。

もし、以下のようにとらえている人がいるなら注意です。

「低め」・・・うつ状態で通常気分寄りの気分レベル

「高め」・・・軽躁状態で通常気分寄りの気分レベル

この「低め」を目指したい人はまずいないと思いますが、この「高め」を目指したくなる人は多いと思います。

通常気分以上の、爽快さ、意欲、活動性、睡眠時間の減少などを期待する方は少し心配です。

軽躁・躁状態への嗜癖(しへき)があると見た方がよいです。

なぜ、軽躁・躁状態に移行するのが良くないかは下記記事を参照ください。

参考:双極性障害、躁状態を防ぎたい!躁状態への移行に気づく5つのコツとは?
参考:躁状態では自己制御が困難。躁状態への移行をコントロールする10か条とは?

この記事では、前者の認識として書いていきます。

そもそも「低め」「高め」で安定させられるか?

例えば、主治医に、

「私、高め安定が希望です。よろしくお願いします」

と言ったとして、

「了解しました。お望みのままに!」

と答えられる精神科医は少ないと思います。

逆も然りで、うつ状態には落ちない程度に通常気分内の低めに調整することは、患者さんによっては毎週ペースの通院を要するかもしれません。

低めにしろ、高めにしろ、その方向への過度な薬物調整や生活への助言を行えば、当たり前ですがどちらかの気分に傾くことになります。

※もちろん、患者さんによっては微細な気分のコントロールが可能な方もいるでしょう。

よって、「目指す」と言っても100%叶うことは難しいと認識しておき、どちらかの気分に振れた兆候を感じたら即対処することが肝要です。

「低め安定」を目指す医師が多い2つの理由

どの気分レベルを目指すかの話で、主治医から「低め安定」を提案された方は多いと思います。
(厳密に調整できるかは別として)

その理由は主に2つあります。

①うつ状態より、軽躁・躁状態の方が患者さんの不利益が大きいと考えるため

まずは1つ目の理由です。

患者さんはうつ状態の方がつらいと感じる人が多い一方で、医師や支援者は軽躁・躁状態の方を不安視します。

うつ状態でも苦痛や失うものはもちろんありますが、軽躁・躁状態での人的・経済的・社会的損失の方を重大と考えます。

通常気分内でも軽躁寄りのレベルを目標にして、薬剤調整や生活の助言をした場合、軽躁・躁状態に移行するリスクは高くなります。

よって、医師はどちらかというと、低め安定を提案しがちです。

②うつ状態への移行より、軽躁・躁状態への移行の方が速やかに起こるため

続いて2つ目の理由です。

一般に、軽躁エピソードは突然に始まり、1〜2日のうちに症状が急速に悪化しピークまで至ります。

一方の、うつ病エピソードは数日間〜数週間の経過で進行することが多いです。

どうでしょう?

今までの気分の波を振り返ると、たしかに軽躁への移行は急に始まって、なかなかその悪化を回避できなかったと感じる方は多いのではないでしょうか?

ということは、

気分の変化の兆候が見られ、その気分がピークに達する前に対処が叶うのはうつ病エピソードの方ですね。

これが医師が低め安定を目指しがちな2つ目の理由です。

まずはさざ波はあれど「通常気分」を目指すこと

同じ双極性障害と言えど、経過や気分変動(躁状態、うつ状態にゆれる)の特徴、気分変動時の病識(病気の自覚)がどこまで維持されるかは人それぞれです。

まずは低めであろうが、高めであろうが通常気分内に安定すれば万々歳で、その中でのさざ波は、健常な人でも感じるものと考えて、落ち気味のときはどう過ごす、上がり気味のときはこう過ごす、などのマイルールを落ち着いている時期に書き出して備えておくことです。

安定しやすい気分レベルを目標にする

もし、あなたが①比較的コントロールしやすい病状である�A薬物治療が奏効している�B自己対処が抜群である、などのスペシャルな条件下にあり、「低め安定」「高め安定」のどちらかに寄せられるなら、希望の気分レベルでずっと過ごせるわけで、それに越したことはありません。

その際は、個々人により、寄せやすく、安定を得られやすい気分レベルを目指すとよいでしょう。

①には影響できないとしても、②や③の方は医師や支援者と協力の上、レベルアップし、みなさんが希望の「気分レベル」を維持できるようになることが理想ですね。

以上、「双極性障害は『高め安定』or『低め安定』どのあたりを目標にするとよいか?」について解説してみました(‘◇’)ゞ

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