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双極性障害、躁状態での対人トラブルを後悔。病気の開示・謝罪のヒントとは?

2019/05/24
双極症(双極性障害)100の質問
精神科医・さくら(@sakura_tnh)です。自身の知識と経験を活かし、人をワンランク上の健康レベルに底上げ=幸せにすることを目指しています。

「双極性障害についての100の質問」企画、第34回目です。

今回のご質問は、

「双極性障害、躁病エピソードでの対人トラブルを後悔。病気の開示・謝罪のヒントとは?」

です(・∀・)

以下、質問者さんからのメッセージです。

過去の過ちにおける人間関係への対処法について。ビジネス・交友・恋愛における人間関係にトラブルを起こしてしまいました。このような場合に、どのように相手に開示し、謝罪をすれば良いか迷っております。以下に自分の案を記載しましたので、よろしければご意見いただきたいです。

質問者さんは、躁病エピソードの症状から、「仕事の取引先」「友人」「恋人」とトラブルを起こしてしまい、気分が落ち着いてきたところで、これらを非常に後悔されているようです。

双極性障害には主に、うつ病エピソードと軽躁病・躁病エピソードがありますが、後者では気分高揚、多弁、誇大さ、怒りっぽさ、抑制が効かなくなるなどの症状から、対人トラブルを含め、様々なトラブルを起こしがちです。

まず、知っておいていただきたいのは、躁状態での「トラブル」「失敗」「やり過ぎたこと」「本来の本人なら絶対にしない言動や振る舞い」を

本人は相当に悔いたり、恥じたりしている

ということです。

トラブルの内容やそのために失ったモノゴトによっては、本当に誰にも相談できずにうつ病エピソードに転じた時に、そのことで心を痛める人もいます。

周囲の人は躁病エピソードで本人に振り回されたり、不快な思いをさせられたりしたことで、本人にネガティブな感情を抱きがちです。

その心情ももちろん理解できますが、周囲の人も少し落ち着かれたら、通常気分時の本人を思い出してもらい、すべてを許せはしなくても、少しでも「病気による言動・振る舞い」なんだと理解していただけたらと思います。

質問者さんは具体的に謝罪の文面を考えておられるので、それを示しつつ、病気の開示や謝罪のヒントを解説していきます。

①仕事の取引先へ

〜のような言動を大変失礼しました。大変不快な思いをさせてしまったと深くお詫び申し上げます。言い訳がましく大変恐縮なのですが、私の病気が招いた症状ゆえの要因もあることが判明しました。具体的には、私が双極性障害という病気ということが判明し、その症状の一つとして判断力の低下と社会的規範を逸脱した行為をしうるケースが存在するとのことでした。このような背景を説明しましても、許されぬ行為とは理解しておりますが、謝罪と背景のご説明を勝手ながらさせて頂くことをお許しください。もしよろしければ5分ほどだけでもお伺いして謝罪に伺えればと思っております。難しければ結構ですが、ご機会を頂けますと幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

自身の言動・行動を振り返り、丁寧に謝罪されています。相手に無理強いはしないけれど、「可能なら直接会って話をさせてもらいたい」と伝えることも良いと思います。

会ってみて、「いつもの○○さんだ」と認識してもらうこと

が、ネガティブな心証を変える何よりのことです。

相手が相当立腹している場合は、メールや手紙だけでやり取りが終わり、会ってもらえないかもしれませんが、それは相手も人間である以上仕方のないことですから、時間をおいてまた声かけするといいと思います。

上司にはこのような謝罪をしたこと、アポイントのお願いをしたことは伝えておきましょう。

気になる点としては、「双極性障害」であると病名をハッキリ伝えるかどうかは十分検討する必要があると思います。

一方で、謝罪をしても、病的であったことを何も説明しないと「ただの非礼な人」「常識に欠ける人」「仕事相手としてやっていけない」と判断されてしまうでしょうから、何らかの説明は要ると思います。

「ストレスから精神的におかしくなっていたようです。治療を受けて今は落ち着いています。あの時は本当にご迷惑をおかけしました」

「一過性に精神的な不調をきたしていました。そのために失礼な振る舞いをしてしまい、すみません」

上記のように、具体的な病名は伝えずとも精神的不調が背景にあったと説明することはできるので、このような表現も参考にされてください。

同僚や上司に対して

少し脱線しますが、職場復帰に際しては、同僚や上司にも何らかの説明は必要です。

取引先の人だけでなく、職場の近しい人にも何かしら影響があったと考えられますし、今後、病状に配慮してもらえるかどうか病気のコントロールに直結するからです。

参考:双極性障害の人が働く際に、会社に配慮してほしい7つのポイントとは?

休職しているならその診断書に主治医の判断で「双極性障害」とそのまま書かれているかもしれませんし、「適応障害」「急性ストレス反応」のような濁した病名が書かれているかもしれません。

双極性障害について詳しい方がいたら、その言動・振る舞いから薄々勘付かれているケースもあるかと思いますが、ご自身がどう伝えたいかという意向も踏まえて、勤務先にどう説明するかは主治医や家族と作戦を練っておきましょう。

②友人へ

あの時は色々とごめん。意味わからんこと色々言ってしまったと思うんだけど、実は双極性障害という病気らしくて…。言動がとにかく一貫しなかったり、気分や発言がコロコロ変わったり、というのが症状らしい。それで迷惑や不信感をすごい募らせてしまったと思う。本当に申し訳ない。言い訳でしか無いんだけど、報告だけさせてもらえたらと。良かったらひさびさに詫びの意味も込めて飯でも行けたら嬉しいんだけど、どうかな。

一貫して自身に非があったというスタンスで、よく考えて書かれたメッセージだと感じます。

躁病エピソードでのトラブルを「病気のせいでやってしまったこと」と思うことは当然で、実際そうです。

ただ、謝罪をする場面ではそれを「病気の症状」という情報を伝える程度にとどめ、「病気のせいで」を前面に出さないことが大事です。

一つ目のケースと同様に、まずはこのメッセージに返信をもらえるか会う機会を作ってもらえるかどうかがカギになりますから、できるだけ丁寧に、柔らかい文体で書くことをおすすめします。

躁状態でのトラブルから友人関係にヒビが入ることもよくあることです。

本人が意図したことではありませんが、友人たちからすると、他ならぬ「あなた」「言ったこと」「やったこと」と認識されていますから、仕事関係の人と同様に何らかの説明は必要でしょう。

付き合いの長い、ある程度何でも話し合うような関係であれば、病名を伝えることもいいと思います。

その際、病名をネット検索され、根拠の無い話に飛びつかれる恐れがあるので、双極性障害についての簡単な本や冊子を渡し、「時間のある時に読んでほしい」と言葉を添えるとベターです。

友人は今後、双極性障害を抱えながら生きていくにおいて、大事な戦力となる人かもしれません。

慎重に、誤解を生まない説明をしてほしいと思います。

そのためには、先ほど友人に渡すと提案したような本をご自身でもしっかり読まれ、正しい知識を身につけておくことが大事です。

③恋人へ

(ここはどんな内容を送るかではなく、連絡すべきかを相談させて頂きたいです…)
結婚を考えていた彼女にフラれました。電話で1時間ほど嫌なところをひたすら言われ、一度期間を開けたのですが、1ヶ月後にLINEして、相手に配慮もせずに電話したいと言ったところ、「勘弁してください」と言われて連絡が取れなくなりました。今振り返っても、相手に配慮もできず、自分本位にひたすら行動し、相手が発しているサインにも気づかなかったと反省しています。個人的には復縁は難しくとも、事情の説明ときちんと謝罪、和解をしたいと思っています。ただこれは自分のエゴなのでは?とも思います。

元恋人に対しても、よく経過を振り返られ、反省すべきところはされ、その上で復縁は難しくとも、謝罪・和解をしたいとのこと。

誠実で、また、現実的な考えであるとも思います。

友人の項に書いたことと重複しますが、元恋人は、躁状態で人が変わったかのようなあなたのことを

「これが本性だったのか」

と感じたり、

「いくら病気だとしても、心底で思ってもいないことは口にしないはず。普段からそういったことを思ったり、やりたいと思っていたのだろう」

などと誤解しているかもしれません。

お付き合いをしていた人、特に結婚を考えていたような相手に対しては、失った信頼を取り戻したいと願うのは当然のことですし、可能ならやはり時間を取ってもらって対面で話をすることが大事です。

まずは、「復縁は無理だと思っているけど、面と向かって謝罪だけはしたい」ことを前面に押し出して、いくら説明しても謝罪しても相手が頑として話を聞かなかったとしても、約束を取り付けられ、とりあえずその場に来てもらえたらベストだと思いましょう。

今回は劇的な躁病エピソードの影響で恋人と決裂してしまったわけですが、人の感情はささいなことでも冷めることがあるものです。
(みなさん、冷めたor冷められた経験はありませんか?)

本当にその人と結ばれる運命なら、また時間を置いてても再会できると考え、ひとまずは治療に専念し、今度恋愛する機会に恵まれたら、同じことを繰り返さないように備えておくことが今、質問者さんにできることだと思います。

まとめ

3つの対人場面を想定して解説しましたが、大事なことは、躁状態での本人の言動・振る舞いを

許してくれるかどうか、また、以前のように付き合ってくれるかどうかは相手次第

ということです。

厳しく聞こえるかもしれませんが、相手がどう考えるかをコントロールすることは困難です。

和解の働きかけをして、レスポンスが無かったり、拒否的な返答があった場合には、ご自身が病気やその症状を受け入れることがすんなりとはいかなかったように、

「相手がそのことを受け入れるにはまだ時間がかかること」

と認識し、立て続けに働きかけることはやめ、時間を置いてまたトライしましょう。

・・・でも、いつかまた、どなたとも分かり合えることをこっそり願っています。

以上、「双極性障害、躁状態での対人トラブルを後悔。病気の開示・謝罪のヒントとは?」について解説してみました(‘◇’)ゞ

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