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双極性障害、同居する家族に病気を上手に伝えたいときの5つのポイントとは?

2019/05/27
双極症(双極性障害)100の質問
精神科医・さくら(@sakura_tnh)です。自身の知識と経験を活かし、人をワンランク上の健康レベルに底上げ=幸せにすることを目指しています。

「双極性障害についての100の質問」企画、第37回目です。

今回のご質問は、

「同居する家族に、双極性障害を伝えるコツはありますか?特に、見た目が元気な躁状態では自分でコントロールできない症状を理解してもらえません」

です(・∀・)

同居の家族がいる場合は、少なくとも一人に、理想を言えばすべての家族に、病気についての最低限の知識と、正しい認識を持ってもらいたいものです。

それが、本人の予後に大きな影響を与えることは言うまでもありません。

闘病の心の支えになるだけでなく、現在気分レベルの何段階目にいるかを一緒に確認し、早め早めの対処をすることの意義は大きいです。

参考:双極性障害の患者さんに医師がやって欲しい3つのこと〜日常編〜
参考:双極性障害の患者さんに医師がやって欲しい3つのこと。診察編。

それぞれの気分エピソードを家族はどうとらえるか?

質問にあるように、うつ病エピソードでは、気分が落ち込み、意欲を失い、臥床しがちになり、見るからに「病人」という風になりますから、「双極性障害」の理解は困難でも、少なくとも「しんどそう」とは感じてもらえるでしょう。

軽躁病エピソードでは、本人も「元気で爽快」と感じているくらいなので、周囲から見ても、「いつもより元気だな」くらいにしか受け取られないものです。

躁病エピソードでは、本人には病気の認識は無いことが多い一方で、周囲からすると「いつもの本人とは別人」「浪費がひどい」「しゃべり過ぎている」「イライラしていてこわい」「急に新しいことを始めようとして目が離せない」「運転が危ない」などと感じられ、双極性障害の理解は無くても「病的」だと認識されることはしばしばあります。

家族さんが躁状態の問題についてあまり関心が無いところから、質問者さんは軽躁状態にとどまるタイプなのかもしれません。

もちろん、軽躁状態にとどまるからと言って、その苦痛・苦悩が軽いということは決してありません。

正しく病気を理解してもらうには?

双極性障害についての概要(疫学や症状、経過、治療、日常の心がけなど)を正しく知ってもらうには、基本的なことではありますが、以下の2点が大事です。

①診察に同席してもらう

家族に診察に付き添ってもらい、主治医から直接、病気について話してもらうことが一番です。

本人から家族に伝えるのとは違ったアプローチとなりまずし、年配の方だと医師の言うことは素直に聞いてくださる方も多いので効果的です。初診時だけでなく、要所要所で同席してもらうと有益です。

②本を読んでもらう

双極性障害についての家族向け初心者向け読みやすい本を渡して読んでもらうことも大事です。

本人が直接伝えるより、病気についての情報がまとまっていますし、家族のペースで読み進めてもらうのがいいです。

質問者さんは、上記のことはすでにやられた上で困られていると推測します。①も②も拒否されたか、①も②も実行してくれたものの、家族の理解が不十分なのでしょう。

少し厳しい内容になりますが、理解を得るために大事なことを説明します。

自身の伝え方を振り返ってみる

「家族が分かってくれない」

という訴えを、リアルでもネットでもよく見聞きしますが、家族が人のつらさに反応しない冷たい性格であったり、何らかの特性のために理解が難しかったり、

「家族」に「原因」がある

というニュアンスを言葉の端々に感じることが多々あります。

「理解してもらえない」ことの原因の(少なくとも)一端は「自分にある」

と思うことが現状を打開する突破口になります。

「病気なのに厳しいことを言わないでほしい」
「病気なんだから理解してもらえて当然でしょ」

と、イラっとした方は注意です。

コミュニケーションがうまくいかない場合、一方だけに問題があることは少ないものです。

日常のちょっとしたことでも、思いが伝わらずに不満を持った経験は誰にでもあるでしょう。

「双極性障害の理解」という、重大な案件については尚更、受け手側への配慮が必要です。

受け手側への配慮

受け手側(家族)に対してどのような配慮が必要か見ていきましょう。

①家族も病気を受け入れるには時間がかかると心得る

あなたと同様に、病気の受け入れには段階がありますから、家族が少しでも向き合おうとしてくれているなら急がないことです。

②一気に全てを知ってもらおう、全ての面において協力してもらおうとしない

質問者さんが仰るように、特に躁状態のつらさは周囲からは分かりにくいものです。
(躁状態が過ぎ去ったあとの様々な後始末についての苦労は分かりやすいと思いますが)

それでも、うつ状態のつらさを理解し配慮してくれているなら、ひとまずヨシとすることもお互いがしんどくならないための考え方です。

③理解を示す、協力をするかどうかは家族が決めること

「これだけ伝えたから分かってもらえるだろう」
「これだけつらいんだから協力してもらえるだろう」

というのは、あくまでご自身の考えです。

家族がどう判断するか、行動するか立ち入ることが難しい領域であることは心に留めておきましょう。

続いて、家族に理解を促すためのいくつかのコツをお伝えします。

少しでも理解してもらいやすくする5つのコツ

①場所と時間を選ぶ

込み入った話のできる場所と時間を選んで声掛けしましょう。

時間的、精神的余裕のない時に話し合いをすることは理解してもらうことの成功率を下げてしまうでしょう。

ここでも逆の立場で考えてみてください。

外出前にバタバタ準備をしている最中に「大事な話があるんだけど」と言われても、なかなか余裕を持って応じられないものです。

事前に「〇分くらい時間をとってほしい」とお願いして、話し合えるタイミングを狙いましょう。

②できるだけ冷静に話す

「何で分かってくれないの!」などと感情的にならないことです。

逆の立場になってもらえれば分かりますが、あることの深刻さを認識できていない時に、相手から「当然分かるべきこと!」とばかりに怒りや悲しみの感情をぶつけられると、心はより閉じてしまいます

※ここでは、泣いたり怒ったりすることで理解してもらえる可能性は低いケースを想定しています。
(質問者さんもすでにそういった方法は試したことがあるはずです)

あなたの目的は「家族に双極性障害のつらさや病気の特徴」についてしっかり知ってもらい、病状コントロールの協力をあおぐことです。

感情をぶつけることは得策ではありません。

もちろん、こらえていても涙が出たりはすると思いますが、できるだけ冷静に努めましょう。

③短く伝える

あれもこれもと話したくなるものですが、病気の概要と、どんな困難があるかを短く伝えましょう。

家族の理解度や反応を見て、情報を付け足すか、またの機会に続きの話をするかを判断します。

④希望することを明確にする

家族は、あなたの話を聞いて具体的にどうすればいいか分からないために、あなたが満足するような反応ができないのかもしれません。

・通院に付いてきてほしい
・薬やお金の管理を手伝ってほしい
・気分が上がっているように思ったら指摘してほしい

希望することを多くても3つまでにまとめて伝えましょう。

⑤文書にして伝える

病気の話に家族が動揺して、その場では理解が十分できないこともあります。

できれば、話すことを考えるついでに紙に伝えたいことをまとめておき、最後に渡しましょう。

次に、家族が病気を理解しないことの背景について書きます。

元々の関係が悪い場合

病気が発覚する以前、理解を得たい家族との関係はどうでしたか?

お互いを尊重し、困ったことがあれば相談し合い、助け合う関係でしたか?

上記の問いに「NO」と答えるほか無い人は、当然のことながら、ご自身の困りごと(双極性障害)について、家族が前のめりになって知ろうとしたり、家族から「できることがあればサポートする」と言ってもらえない可能性が高いでしょう。

逆の立場になって考えれば、協力的・支持的な関係に無かった家族に何か重大なことが起こった時に、急に心から親身になることができるでしょうか?

病気に限らず、何らかの困難に直面した時にバラバラだった家族が一致団結することは可能性としてはあるけれど、少数でしょう。

元々の関係が悪かった場合には(それが家族の責任に負うところが大きいのか、本人の責任もそれなりにあるのかは別としても)、理解・協力をあおぐことは、少しずつ、焦らずやっていくしかありません。

家族に理解を求めるを諦めること

最後に、こんなことを書かないといけないのは悲しいことですが、人間色々、家族も色々ですから、あなたが双極性障害になったことをどうしても受け入れられなかったり、関心が持てなかったり、家族自身のことで精いっぱいの暮らしであったり、というケースもあるでしょう。

その場合は、

「とりあえず今は家族に理解を求めることを横に置いておく」

こともひとつです。

そこに多大なエネルギーを要したり、心を痛めるくらいなら、家族以外に理解者を求める、もしくは、まず自身でできる日々の行動を実践していくことだと思います。

以上、「双極性障害、同居する家族に病気を上手に伝えたいときの5つのポイントとは?」について解説してみました(‘◇’)ゞ

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