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双極症「社会との接点がない」のは問題?外出・対人交流の意義と対処のヒント。

2019/06/22
双極症(双極性障害)100の質問
精神科医・さくら(@sakura_tnh)です。自身の知識と経験を活かし、人をワンランク上の健康レベルに底上げ=幸せにすることを目指しています。

「双極症(双極性障害)についての100の質問」企画、第61回目です。

今回のテーマは、

「双極症、社会との接点がないのは問題?外出・対人交流の意義と対処のヒント」

です(・∀・)

以下、質問者さんからのメッセージです。

「双極症ですが、社会との接点がありません。外に出て行く気力もないし、人と接するのも億劫です。無理してでも外に出て行くべきですか?」

外出や対人交流に対する意欲や体力が枯渇し、自宅や自室にこもりがちになることは、とくにうつ病エピソード中にはよく見られることです。

まず最初に、「無理してでも」という点は「NO」と断っておきます。

ただ、「無理」のレベルによっては少し頑張ってみてほしいと後押しするかもしれません。

双極症における社会との接点を持つことの意義やヒントを書く前に、双極症の特徴についておさらいしておきましょう。

双極症は意外にうつ状態の時期が多い

「双極症は気分の波のある病気」ということは、精神疾患に関わりの無い人でもその多くが知っていることかもしれません。

一方で、「双極症は軽躁・躁状態の時期は短く、うつ状態で過ごす時期が多い」ということはあまり知られていないことでしょう。

「すごく元気な時もあるんでしょう?それならプラマイゼロじゃないの?」

などと思う人もいるかもしれませんね。

現実的には、Ⅰ型よりうつ状態の期間の割合の多いⅡ型では、うつ状態で過ごす時間が病気にかかってからの期間の半分以上を占めます。

参考:双極性障害でⅠ型とⅡ型を診断し区別することの3つの必要性とは?

もちろんこれはうつ状態の時期が比較的短い人から比較的長い人までを含んだ平均値ですから、うつ状態が相当な割合を占めるケースもあるでしょう。

また、寛解期と呼ばれる気分症状を認めない時期でも、診断基準を満たさないレベルのうつ症状が持続していることがあり、その場合は寛解期と言えども何らかの日常生活への支障はあるでしょう。

質問者さんの現在の気分がどうなのか詳細は分かりませんが、少なくとも軽躁病・躁病エピソード中ではなさそうです。

うつ病エピソード中、もしくは寛解期ではあるけれど、軽度のうつ症状が残っている状態と考えます。

うつ病エピソード中の場合

現在うつ病エピソード中であるとすると、以前の記事にも書きましたが、いずれの社会復帰や病前の日常生活に近い状態を取り戻そうと思うなら、ずっと家の中で過ごすこと、誰とも接しないで過ごすことは良いこととは言えません

参考:双極症、うつ病相ではできる範囲で活動すべき?or 寝ているべき?

もちろん、現在の症状の程度にもよりますから、下記の記事のように「外出」や「対人交流」を段階分けして、今の自身に取り組める活動から始めましょう。

参考:双極症、うつ病相での病状レベル別「やることリスト」その①
参考:双極症、うつ病相での病状レベル別「やることリスト」その②

・知人に近況報告のメールやラインをする

・TwitterなどのSNSで誰かとやり取りする

・知人に近況報告の電話をする

・知人に自宅に来てもらって1時間ほど一緒に過ごす

・月に1回、外で誰かとランチをする

・週に1回、図書館で1時間ほど過ごす

チョイスした活動に慣れてきて、症状の悪化も無ければ、ステップアップした次の活動に移りましょう。

よく、「症状が改善⇒活動できるようになる」と認識している人がいますが、「できる活動をする⇒症状が改善」の側面もあります。

両者が絡み合って回復していきますので、無理のない範囲で「活動する」ことを意識してほしいと思います。

寝たきりレベルのうつ状態のとき

もし、現在、身の回りのこともできないような状態なら、社会との接点を持つことはその先の目標になるので、上記のようなスモールステップを踏めるレベルへの回復に集中します。

寛解期だけど、うつ症状が少し残っている場合

このケースであれば、やはり、何もしないままでいるよりは動いた方が良いと思います。

双極症の非薬物治療においては、「対人関係・社会リズム療法」に効果があるとの科学的な証拠があります。

この治療は簡単に言うと「対人関係の過剰なストレスを避ける」「過剰な社会的な活動により生活リズムが乱れないようにする」というものですが、その裏返しは、「対人関係を持たない」「活動をしない」ではなく、

「適切な対人関係を持つこと」

「ほどよい活動をして生活リズムを安定させること」

です。

自宅にこもって誰とも会わない生活は、上記の両者ともを損ねていることに気づきます。

よって、双極症の回復にとって望ましくない生活と言えます。

また、「孤独感」はメンタルヘルスの大敵です。

ネット上の匿名の関係でも孤独感は和らぎますが、リアルでの関係にはやはり敵いません。

双極症に自殺が多いことはご存知のことと思います。

ただでさえつらい気分症状に、孤独感が上乗せされることはとても心配なことです。

自閉スペクトラム症(ASD)などが背景にある場合

元々の発達特性として、対人交流で大きなストレスを感じたり、困難を感じる場合、もしくは対人交流より1人で興味のあることに没頭して過ごすことに価値を置く場合は、ここまで述べてきたことと少し違う発想が必要です。

質問者さんは「社会との接触や対人交流をすべきなのにできていない」と考えていらっしゃるようなので少なくとも上記の後者には該当しないかもしれません。

ASDが背景にある場合、対人交流に重きは置かないとしても、外出して日光を浴びたり、自然に触れたりすることはメンタルヘルスにとても大事なことなので、「外出」は今の状態に適した程度から少しずつしていきましょう。

職場やデイケア、趣味の集まりなど、いずれ集団に身を置きたい場合は、その特性により定型発達者よりはストレスを感じやすいことを念頭に、より段階を刻んだスモールステップで取り組んでほしいと思います。

「無理にでも〜しないといけませんか?」の背景

今回の質問者さんは具体的な状態が分かりませんので、一般論として書きます。

まず前提として、本人がすべきかどうか悩んでいる事柄について、客観的に見て明らかに無理なことであれば、ハッキリ「NO」と言います。

ここから厳しい内容に感じる方もおられると思いますので、今しんどい方は閉じてくださいね。

「無理にでも〜しないといけませんか?」

という質問からは、「今はしなくていいですよ」という返答を望んでいる印象を受けます。

「無理にでも」と問われたら「無理してまではしなくていいですよ」と言うほかありませんよね。

私は「無理にまでする必要はありませんが、今の状態でできることはしましょう。それが回復への手立てです」と助言しますが。

また、そう質問するということは、そろそろそういったことに手をつけるべきタイミングかと本人も考えている状態なのだと思います。

たしかに本人はもちろん、家族や主治医が客観的に見ても、ステップアップのタイミングかどうかの判断は難しいことが往々にしてあります。

試してみて、「時期尚早だったという結果」⇒「少し前の段階に戻る」というケースも多々あると思います。

しかし、それは試してみてこそ分かることです。

厳しく感じられるかもしれませんが、私自身も過去の苦しい時に「少し頑張ればできること」を意識してやってきました。

繰り返しますが、誰が見ても「無理」なことは勧めません。

ただ、回復に必要な、少しの「頑張り」のことを問うているのなら、その背中を押すでしょう。

その「頑張り」があなたの状態にどう影響するか、注意深く見ていきますので、背中を押された時は、想像している活動の1%でいいので、行動し始めてほしいと思います。

以上、「双極症、社会との接点がないのは問題?外出・対人交流の意義と対処のヒント」について解説してみました(‘◇’)ゞ

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