双極性障害100の質問

双極症の男女比は半々?「性別」によって異なる特徴や、注意すべき点を解説。

お豆腐メンタルな精神科医・さくら(@sakura_tnh)です。自分の知識・経験・エネルギー・時間を最大限に活かすことで、人をワンランク上の健康レベルに底上げ=幸せにすることを目指しています。

「双極症(双極性障害)についての100の質問」企画、第78回目です。

今回のテーマは、

「双極症の男女比は半々?性別によって異なる特徴や、注意すべき点を解説」

です(・∀・)

以下、質問者さんからのメッセージです。

双極症の罹患率は男女比が半々と聞きましたが、症状に男女で違う部分などありますか?

シンプルながら奥の深い質問です。

うつ病では女性が男性の2倍かかりやすいことが知られていますね。

一方の双極症は、男女の比率が同じくらいと言われています。

Ⅱ型に関しては女性がやや多いとも言われていますが、診断基準の変遷の影響もあり、さらなる研究が待たれます。

さて、質問者さんが疑問に感じられるように、双極症では、性別によって症状や経過、治療などに異なるところはあるのでしょうか?

いくつかの研究を紹介しながら、解説します。

「女性」に主眼を置いて書きますので、「男性」はその傾向と逆と読んでくださいね。

女性はラピッドサイクラーになりやすい

前回、年に4回以上の気分エピソードを繰り返すラピッドサイクラーについて書きました。

参考:双極症「ラピッドサイクラー」で日内での気分交代はある?向き合い方のヒント。

そのラピッドサイクラーになりやすい因子として下記のようなことがあります。

・女性である

・甲状腺機能低下がある

・Ⅱ型である

・慢性化傾向にある

・抗うつ薬の使用がある

・非定型うつ症状がある

女性であることに加えて、上記の項目にいくつか該当する場合はラピッドサイクラー化のリスクが高いと考えて治療をすることが必要です。

月経、出産、更年期の影響

月経、出産、更年期などは女性ならではのライフイベントです。

これらを「生殖サイクルイベント」と呼び、双極症では気分エピソードと関連することが知られています。

ウェスタンシドニー大学のTania A Perich氏らの研究は、対象が18歳以上の女性158例と小規模ですが、以下のことが判明しています。

・双極症女性の77%に、月経周期や、出産後、更年期の期間中に気分エピソードの増加を認めた

・生殖サイクル関連の気分変動を認めた女性は、それらを認めなかった女性と比べて、双極症の発症年齢が低年齢で、不安障害の併存、ラピッドサイクラー化、混合状態のリスクが高かった

・出産後に気分エピソードを認めた女性では、認めなかった女性に比べて、月経周期、更年期において、気分症状がより重い可能性を認めた

参考:Perich TA, et al. Aust N Z J Psychiatry. 2016 Sep 28.

生殖器サイクルイベントは、上記のように病状や経過に影響するため、双極症の女性では、これらのことにより注意する必要があります。

境界性パーソナリティ障害(BPD)の併存は女性に多い

Griffin Memorial HospitalのRikinkumar S. Patel氏らの研究では、双極症とBPDの併存について検討しています。

・BPD併存ケースは、女性が多く(84.2%)、18~35歳(53.9%)であった

・BPD併存ケースでは、入院期間の長さ、入院費用の高さ、薬物乱用率の高さにおいて、有意な差が認められた

・BPD併存ケースでは、自殺リスクが高かった

Patel RS, et al. Medicina (Kaunas). 2019;55. pii:E13.

双極症ではBPDを含めたパーソナリティ障害の併存ケースが多いのですが、BPDは女性に多い疾患であり、双極症の女性においてもBPDの併存が多いです。

併存ケースでは、薬物乱用や自殺のリスクが高いため、BPDの症状にも配慮が必要です。

自殺リスクは男性の方が高い

ヨーテボリ大学のC. Hansson氏らの研究では、双極症の自殺リスクとなる因子について調べています。

双極症患者1万2,850例 (男性 4,844例、女性 8,006例) を対象とし、追跡調査を行ったところ、1~10年間の追跡期間中に90例 (男性55例、女性35例) が自殺しました。

統計学的に有意な自殺のリスク因子は下記の通りです。

・男性である

・単身生活者である

・自殺企図歴がある

・他の精神疾患の併存がある

・最近の気分エピソード

・犯罪、有罪判決歴

・最近の精神科入院治療

・最近の非自発的入院

Hansson C, et al. Acta Psychiatr Scand. 2018 Aug 3.

興味深いことに、統計学的に有意な自殺のリスク因子は、男女間で異なっていたようです。

単身生活、物質使用障害の併存、非自発的な入院、前年に少なくとも1回の気分エピソードがあったことは、男性では自殺の重要なリスク因子であった一方、女性ではリスク因子とはならなかったとのことです。

また、刑事有罪判決、パーソナリティ障害の併存、前年に少なくとも1回のうつ病エピソードがあったことは、女性に有意な自殺の重要なリスク因子であるようです。

これらの情報で完璧に自殺リスクの予測ができるわけではありませんが、性別によって異なるリスク因子を意識しておきたいものです。

双極症と交通事故などのリスクは男性の方が高い

台湾・長庚大学のVincent Chin-Hung Chen氏らは、双極症の患者さんが交通事故を起こすリスクについて調べています。

・双極症患者、3,953例が対象

・双極症患者の交通事故などのリスクは対照群と比べて1.66倍高い

・交通事故などのリスクの低さは、女性、高齢者(80歳以上)、高度に都市化した地域の居住者、抗うつ薬の使用と関連していた

Chen VC, et al. J Affect Disord. 2018;226:124-131.

双極症では、女性の方が男性より、交通事故などを起こすリスクは低いようです。

詳細は不明ですが、軽躁病・躁病エピソード時、男性よりも女性の方が危険運転をする可能性が低いのかもしれません。または、元々の免許の所持率に性差があることも影響しているかもしれません。

高齢者や都市部に住む人は車の運転が少ないからかと推測します。

双極女子は肥満が多い

クイーンズ大学のAnusha Baskaran氏らの研究は、双極症患者さんの肥満の男女差とその背景因子について調べています。

結果は以下の通りです。

・双極症患者は対照群と比較して、メタボリックシンドロームの割合が高かった

・双極症の女性は、双極症の男性や対照群の男女と比較して腹部肥満の割合が高かった

・双極症の経過と症状に性差が確認され、女性では男性より、うつ病エピソードの頻度が高く、好発年齢より高齢で発症しやすく、気分の変動に季節性がみられ、再発しやすかった

・上記以外の双極症の女性の腹部肥満のリスクには、生殖に関するエピソード、性的・身体的虐待などの経験、ライフスタイル、医原性などが考えられた

参考:Baskaran A et al. Bipolar Disord. 2014 Feb;16(1):83-92. Epub 2013 Oct 29.

双極症の女性は、双極症の男性および一般集団の男女と比べて、心筋梗塞などの心血管疾患による死亡リスクが高いことが知られています。

女性は男性より、うつ病エピソードの頻度が高いこと、再発しやすいことなどが肥満のリスクになるようです。

女性患者さんは男性患者さんより、糖尿病や高脂血症などの内科疾患に気をつける必要があります。

抗精神病薬による治療反応の性差

ジプレキサ(オランザピン)やビプレッソ(クエチアピン)など、双極症にも抗精神病薬はよく用いられます。

女性は、男性で推奨される薬の量より少ない量で効果があると言われていますが、その詳細については不明な点が多いです。

ただ、女性では男性より、有意に薬剤の副作用としての体重増加がみられることが分かっています。

また、女性では閉経が薬物の効果に影響するため、閉経後に抗精神病薬の増量を必要とする場合もあるようです。

参考:Seeman MV. Neuropharmacology. 2019 May 8.

その他いろいろ

双極症だけでなく、一般に精神疾患患者さんでは、女性の方が、

・入院頻度が低い

・自殺率が低い

・法的問題への関与が少ない

・家族や友人との人間関係が良好な場合が多い

などとされています。

また、女性は妊娠・出産などの男性には無いライフイベントがあり、そのために

・病状のコントロールが困難になる

・薬物治療にもより配慮や工夫が必要になる

という側面があります。

※男性でも妻が妊娠・出産する際や、幼い子どもの育児によるストレスがかかるのは同様です。

ほかにも、病状に影響されて性的逸脱に至った場合に、男性に比べて、対人トラブルや性感染症のリスクだけでなく、望まない妊娠などのリスクがあることも事実です。

双極症の気分の波に、月経前のホルモン変化による精神症状が加わるリスクも高いです。

PMSやPMDDについては下記記事を参照ください。

参考:「私は双極症ではないか」と疑う人へ+「月経前不快気分障害」と双極症の関連。

※最近では男性も女性のように周期的な身体・精神的不調があると言われていますが、明確ではないので割愛します。

まとめ

双極症の発症率に性差はほとんど無いとは言え、その経過や治療においては性別による多様な特徴やリスクを考慮する必要があります。

ここで書いたことは現時点で分かっている性別による傾向であって、これを読んでいる人が女性だから、男性だからと言って、すべての項目に該当するわけではないことをご理解ください。

以上、「双極症の男女比は半々?性別によって異なる特徴や、注意すべき点を解説」について解説してみました(‘◇’)ゞ

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