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双極症、処方薬の種類が多い気がして不安。薬は何種類以上だと多いのか?

2019/08/15
双極症(双極性障害)100の質問
精神科医・さくら(@sakura_tnh)です。自身の知識と経験を活かし、人をワンランク上の健康レベルに底上げ=幸せにすることを目指しています。

「双極症(双極性障害)についての100の質問」企画、第82回目です。

今回の質問は、

「双極症、処方薬の種類が多い気がして不安。薬は何種類以上だと多いのか?」

です(・∀・)

質問者さんの処方内容は控えさせていただきますが、以下のような処方とのことです。

・気分安定薬 1種類
・抗精神病薬 1種類
・睡眠薬 2種類
・抗不安薬 1種類

どうでしょう?

多く感じますか?少なく感じますか?

それとも適切な範囲の種類数だと感じますか?

まずは、双極症で使用される薬を種類ごとに確認してみましょう。

双極症で使われる主な薬

一般名(商品名)で表記しています。

①気分安定薬

炭酸リチウム(リーマス)、バルプロ酸(デパケン)、カルバマゼピン(テグレトール)、ラモトリギン(ラミクタール)など

②抗精神病薬

オランザピン(ジプレキサ)、アリピプラゾール(エビリファイ)、クエチアピン(ビプレッソ)、アセナピン(シクレスト)、リスペリドン(リスパダール)など

③抗うつ薬

エスシタロプラム(レクサプロ)、ベンラファキシン(イフェクサー)、ミルタザピン(リフレックス)、セルトラリン(ジェイゾロフト)など

④睡眠薬

ゾルピデム(マイスリー)、エスゾピクロン(ルネスタ)、スボレキサント(ベルソムラ)、ラメルテオン(ロゼレム)、レンドルミン(ブロチゾラム)、フルニトラゼパム(サイレース)など

⑤抗不安薬

エチゾラム(デパス)、アルプラゾラム(ソラナックス)、ワイパックス(ロラゼパム)、ロフラゼプ酸エチル(メイラックス)など

①の気分安定薬、②の抗精神病薬のいずれかの薬、またはどちらも1種類ずつ使われているのは特に珍しくない処方です。

特に躁状態では、早急に症状を軽減するために、①②いずれも十分量を使用します。

薬物治療の理想は、①か②のうち1種類のみを内服することで長期的に病状が安定することです。

例えば、「リチウム○mgを寝る前に1回」のようなシンプルな処方です。

③の抗うつ薬については、ケースによっては使用しますが、躁転や気分の不安定化、ラピッドサイクル化のリスクがあるため慎重に使う必要があります。

三環系抗うつ薬と呼ばれる抗うつ薬はそのリスクが高いため、基本的にはNGです。
(上にあげた抗うつ薬には三環系抗うつ薬は入っていません)

以下の過去記事も参照ください。

参考:双極症、ラピッドサイクラー(急速交代型)は治る?治療法はあるの?2019

④の睡眠薬は、必須の薬ではありませんが、気分エピソード時に、寝付けない、早朝に覚醒してしまう、短時間睡眠で十分な睡眠が確保できないことに対して処方されます。

寛解を得られた維持期においても睡眠時間の確保は双極症のコントロールに重要ですから、うつ状態、躁状態、維持期のいずれの時期においても睡眠薬を処方されている人は多いかと思います。

ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は耐性や依存の問題がありますから、できればスボレキサント、ラメルテオンなどの非ベンゾ系の新規の睡眠薬でコントロールできること、さらには頓服薬のみの処方が理想ではあります。

参考:双極症、状態安定のためにベンゾジアゼピン系睡眠薬を飲み続けることの是非。

⑤の抗不安薬は、日中の不安やイライラ、焦燥感に対して、定期処方されるか、「不安時」などの頓服薬として使われます。

抗不安薬として例を示した薬はいずれもベンゾジアゼピン系の薬ですから、睡眠薬と同様に、使うとしても必要最小限の量を一時的な使用に留めることが大事です。

1か月以上「朝夕」などで処方されている場合などは、状態の改善が得られれば、徐々に減らし、必要時の頓服薬のみにしていきます。

何種類以上だと多いのか?

この問いに明確な答えを示すことは難しいです。

気分症状の悪化時には、同じ系統の薬が一時的に2種類使われることはあります。

A薬の効果が今一つだった時、副作用が強くて継続が難しい時など、B薬に変更するために、A薬にB薬を上乗せ、もしくはA薬を減らしB薬を追加することで一時的に2種類になることもあります。

寛解期(維持期)で考えてみますと、①~⑤の薬が各1種類なら特別に多いとは言えませんが、①と②の薬のみでコントロールできないかの検討は必要です。

いずれかの系統の薬が2種類以上となっている方も多いでしょう。

試行錯誤の上で出来上がった現在の処方を変えることが難しいケースもあると思われますが、定期的に整理を考慮すべきです。

ほとんどの薬は1種類を使用しての効果や副作用については研究による知見が得られていますが、同系統の薬を2種類を使うことでの効果や副作用についての知見は乏しいです。

・効果は2倍とはならない

・副作用が出現しやすくなる

・効果があった時、どの薬が効いたか特定が難しい

・副作用が出た場合、どの薬の影響かを特定するのが難しい

一般的には上記のように考えて、長期間にわたり同種類の薬を2剤以上を使うことは避けたいところです。

多剤処方の減算

ちなみに現在は、

「3種類以上の抗不安薬、3種類以上の睡眠薬、3種類以上の抗うつ薬、3種類以上の抗精神病薬」

または

「4種類以上の抗不安薬および睡眠薬」

の処方を行った場合、処方量と処方箋料が減算されるようになっています。

減算されるようになったから薬剤を整理するようになったというのは情けないですが、それくらい精神科界隈では重要視されているテーマです。

まとめ

多剤処方については以前から問題視されており、近年では精神科医は多剤処方への意識を高め、できるだけ処方薬をシンプルに、かつ、量も最小限となるように心掛けるようになってきています。

ただ、見掛け上は理想に叶った処方内容でも、容易に再発してしまうのでは本末転倒です。

そのようなケースの場合は、できるだけシンプルな処方を目指しつつも、薬の種類や量と再発のリスクと天秤にかけて、必要であればいずれかの系統の薬が2剤になることは許容しないといけないかもしれません。
(そのケースでも常に薬剤整理ができないかの検討は必要です)

質問者さんのように、患者さんが漠然と「処方されている薬が多くないか?」と不安になる、疑問に感じることはよくあることだと思います。

主治医から「これはこういった理由で必要」「一時的にこの系統は2種類使う」などの説明があれば、このような不安や疑問は出ないはずです。

よって、主治医の説明不足が背景にあるでしょう。

また、主治医は患者さんが仰らないと、その不安や疑問に気付けないかもしれません。

患者さんサイドからも、主治医に聞いていただくことが大事です。

以上、「双極症、処方薬の種類が多い気がして不安。薬は何種類以上だと多いのか?」について解説してみました(‘◇’)ゞ

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