「双極症(双極性障害)についての100の質問」企画、第84回目です。
今回のテーマは、
「双極症、うつの自分にも、躁の自分にも嫌気がさす。ラクになる考え方のヒント」
です(・∀・)
以下、質問者さんからのメッセージです。
「うつ状態でまったく何もできない自分に嫌気がさし、躁状態で羽目をはずしてしまう自分にも嫌気がさしています。どちらも本当の自分ではないと思いたいです。自分で自分が信用できません。存在自体消してしまいたくなります。どのように考えたらラクになりますか?」
双極症は、うつ状態でも躁状態でも、明らかに普段の(通常気分時の)その人とは違う人になってしまいます。
質問者さんが悩まれている、気分エピソード中の自分自身を受け入れがたい感情は、双極人の多数が共感することではないでしょうか?
大きなトラブルには至らず、仕事などが捗るタイプの軽躁状態であれば、その状態の自分を「本当の自分」「理想の自分」と考える人もいると思いますが、人によっては、このような状態であっても「嫌気がさす」と感じるでしょう。
ましてや、無力で自責的になりがちなうつ状態や、対人・金銭的なトラブルを起こしやすい躁状態は、その時の自分自身を消し去りたくなるのも分かります。
ラクになれる考え方
まず、第一に、人によってどのように考えたらラクになれるかは異なります。
うつ状態や軽躁・躁状態のときの自分を否定する方がラクに過ごせる人もいるかもしれません。
しかし、そうなると、寛解期にしか「自分」は存在しないことになります。
また、どんな状態の時であれ、自分を自分で否定することは悲しいことです。
うつ状態の時は、ただでさえ自分を責める気持ちが湧きますから、追い打ちをかけるようなものです。
じりじりと回復の力が削がれてしまいます。
軽躁・躁状態の時は、なんとかこれ以上気分が上がらないように活動を抑制し、刺激を避けることになりますが、そのような自分との戦いに挑んでいる時にも、自分を否定する考えはマイナスにしかなりません。
よって、ここでは、どの気分レベルの自分も受け入れる方向でラクになれる考え方を示したいと思います。
どの状態の自分も「自分である」と受け入れる
まず、
「どんな気分レベルであっても、病気に思考や行動を左右されてはいるけれど、自分は自分である」
と考えましょう。
次に、
苦しさに耐えている、病気の回復のために努力している自分を認めてあげましょう。
具体的には、下記のような言葉を、1人でいる時、洗面所で鏡を前にした時、寝る前に横になった時などに思い浮かべるか、実際に口にしてみましょう。
「私って、病気のない人なら耐えられないような症状に耐えて、落ち着くためにコツコツと頑張っているよなぁ」
「うつ状態の時って、寝込んでしまってほとんど何もできないけど、しっかり休息してエネルギーを溜めてるんだよね。やるべきことをできてるよね」
「家族や友人に配慮してもらって申し訳ない気持ちになるけど、いつも感謝を伝えられていることはいいことだよなぁ」
「まだ波に翻弄されているけど、これから少しずつコントロールできるようになっていくんだよね。その道を、時に立ち止まったりするけど、前に進めているよね」
「うまく行かなかった場面はあったけど、もがきながらここまで来たんだ。我ながらすごいよなぁ。ここで諦めるのはもったいないよなぁ」
セルフコンパッションといって、自分自身に思いやりをもって接することが、多くの場面で精神的な安定をもたらし、自尊感情を高める効果もあることが知られています。
参考:自分に思いやりと慈しみをもつ「セルフ・コンパッション」の概要と効能とは?
参考:セルフ・コンパッションの「3つの要素」と「8つのエクササイズ」を解説☆
双極症になって、次々と現れる問題に打ちのめされ、自分への思いやりの心なんて「何ですか、それ?」状態になっている人も多いでしょう。
セルフコンパッションの概要と具体的なやり方を知っておくことは双極症の悩みだけでなく、今後の人生において有益なことです。先ほどの記事をぜひ一読してみてください。
自分を思いやる、労わるフレーズの例を挙げましたが、それを口にしながら、両手を胸の前でクロスして全身を包み込む動作をしてみましょう。
これは、「セルフハグ」と言って、セルフコンパッションの具体的な方法のひとつです。
ほかにも具体的なテクニックがあるので、興味のある方はこちらもご覧ください。
参考:自分を思いやる「セルフ・コンパッション」を高める6つのテクニックとは?
双極人と触れ合う
セルフコンパッションの3つの要素のうちの1つに「共通の人間性」という要素があります。
これを少し対象を狭くして「双極症」についての表現にしてみましょう。
いかがでしょうか?
「まあ、そう言われるとそうだなぁ」と思ってもらえたのではないでしょうか?
また、「たった1人、自分だけの双極症」と向き合っていた気持ちが、少し和らいだと感じてもらえたのではないでしょうか?
視野狭窄していることに気づく
苦しい時は、見ている範囲がすごく狭くなっていることが多いものです。
「自分」だけに注目してしまう。
その中でも「病気」だけに囚われてしまう。
「過去に起こったこと」ばかり思い浮かぶ。
などなど。
質問者さんの問いを他の双極人を設定して考え直してみましょう。
うつ状態でまったく何もできない自分に嫌気がさし、躁状態で羽目をはずしてしまう自分にも嫌気がさしています。どちらも本当の自分ではないと思いたいです。自分で自分が信用できません。存在自体消してしまいたくなります。
上記の内容を、ほかの双極人が相談してきたと仮定してください。
あなたはこの人にどう声掛けしますか?
そう考えてしまうことには同意しつつも、うつ状態でも躁状態でも、闘病という大仕事をすごく頑張っていることを認め、勇気づけようとするのではないでしょうか?
今の時代、色々な形で同じ病気の人と交流することができるようになっています。
先ほどのように、想像するだけでも「双極人の共通性を感じる」、「視野狭窄を解除する」効果は得られますが、実際にやり取りすることも良いですよね。
もしそういった場に参加するなら、状態が比較的落ち着いている時に参加することをオススメします。
まとめ
どう考えたらラクになるかは人それぞれですが、どんな状態であっても「自分は自分」と考え、そして、苦しさに耐えている自分を認め、大切な友人にするように自分を思いやることがココロを少し軽くしてくれる考え方・方法かと私は思います。
双極人は、重い荷物を背負って、これからも目の前の道を一歩一歩、歩いていきます。
できるだけの工夫をして、その荷物を少しでも軽くして、サクサクと歩いていきたいものです。
以上、「双極症、うつの自分にも、躁の自分にも嫌気がさす。ラクになる考え方のヒント」について解説してみました(‘◇’)ゞ