今回は「自殺」がテーマです。
精神医療に関わらない人、身近に精神疾患を患う人がいない人にはピンとこない話かもしれません。
でも、お時間が許すならどうか一読してほしい。
今後、あなた自身に、もしくはあなたの大事な人に「自殺」の危機が迫ることが無いとは言えないから。
予防医療の普及を目的に書かれたホリエモンの「健康の結論」を読んだ感想と私の考えたことを交えてまとめてみました。
Contents
日本の自殺の現状を知る。
予防医療では「防げる死は防ぐ」ことが最重要課題です。
自殺も、みんなが正しい知識を持ち、正しい対処ができれば防ぐことができる「死」です。
毎年9月に国が「自殺予防週間」のキャンペーンをやっていますが、啓発活動は大事です。
私も自殺予防週間中に「自殺」をテーマにブログを書きました。
参考:自殺予防週間に思うこと&あなたもそばにいる誰かを支えてほしい。
自殺の差し迫った人の「死にたい」という訴えの奥には、
「死んでしまいたいほど辛い」「これほど辛くないなら生きていたい」という気持ちがある
と考えられます。
要するに、その苦痛を取り除けたなら死は回避できる可能性があるわけです。
まず、自殺にまつわる数字や基本的な情報を抑えます。
自殺に関する調査結果など
①約4人に1人が生涯に一度は自殺を考えたことがある。
②約5人に1人が身近な人を自殺で失う経験をしている。
③自殺企図者の約90%が自殺直前にうつ病などの精神疾患にかかっている。
①②の割合はかなり多く感じませんか?
それほど、「自殺」は身近なことで、「自分には関係が無い」との感覚は現実とはかけ離れていると言わざるを得ません。
続いて、最近注目される若い人の自殺についてです。
若年層の死亡原因は自殺が多い
☆15〜39歳の死因:自殺が事故やがんより多い
☆15〜34歳の死因:自殺率は事故による死亡率の2.6倍
実際の自殺者の数は、中高年層の方が若年層より多いのですが、
15歳〜34歳の若い世代で死因の第1位が自殺となっているのは、先進国では日本のみです。
また、死亡率も他の国に比べて高いことが問題です。
※40歳〜44歳、45歳〜49歳、50歳〜54歳の年齢階級では年間の死亡数が2,000人を超えている。一方、15〜19歳で434人、20〜24歳で1,178人、25〜29歳で1,423人、30〜34歳で1,520人、35〜39歳で1,762人
続いて、自殺を考える人はどういった問題により追いつめられるのか、そしてどんな要因が自殺のリスクを高めるかを見ます。
自殺者は解決困難な問題を複数抱えている
①生活面
虐待、いじめ、家庭内暴力(DV)など
②メンタル面
うつ病、統合失調症、躁うつ病、アルコール依存、ギャンブル依存など
③社会面、経済面
多額の借金、失業など
こういった問題が重なると自殺のリスクは高まります。
人を自殺に向かわせる9のリスク因子
①男性である
②高齢者or思春期の年代である
③うつ病を患っている
④自殺企図の既往がある
⑤アルコールを乱用している
⑥合理的な思考が障害されている
⑦社会的支援が欠如している
⑧具体的に自殺を計画している
⑨配偶者、パートナーがいない
⑩身体疾患を持つ
このうち7以上該当すると自殺リスクはかなり大きいと判断しますが、多く該当しても大丈夫なケース、該当数が少なくても自殺してしまうケースもあります。
7以上該当するケースは専門機関への相談、支援者の介入が急がれますが、7未満の該当でも慎重に経過を見る必要があります。
3つの条件がそろうと死にたくなる
先に見た通り、約4人に1人が生涯に1度は自殺を考えますが、実際に行動に移す人はわずかです。
一方、以下の条件がそろうと行動に移すリスクが加速度的に高まります。
①所属感の減弱
孤独、孤立の状態。自分が死んでも誰も困らないと思い込む。
②負担感の知覚
自分の存在が周りの人の迷惑になっている、重荷になっている、などと感じている。
③自殺潜在能力
暴力を受ける、自傷行為、過量服薬、アルコール依存等で自身の破壊行動に慣れている。
③のようなことが日常的にあると、心理的ハードルが低くなり、自殺行動を簡単に引き起こしてしまいます。
逆に、自殺行動を起こすことへのハードルになるのは以下の4つです。
自殺願望から行動化に至る4つの心理的なハードル
①将来への希望がわずかでもある
②仕事への責任感
③家族や友人など、周囲への配慮
④死に対する恐怖、自分を傷つけることへの抵抗感
これらが自殺を思い留まるポイントとなります。
自傷は辛い自分を切り離す行為
日本では10代の約10人に1人は自傷経験があると言われています。
自傷行動のほとんどはリストカットです。
「自傷=精神的な苦しさを解消するための代替手段」
死にたいほど辛い気持ちを体から切り離すという行為です。
「リストカットくらい大したことはない」と本人も周囲も思いがちですが、自傷はエスカレートする傾向にあり、悪条件が重なり、明確な意図は無いまま死に至るケースもあります。
何度も軽い自傷を繰り返している患者さんに対しては、医療者でも危機感が薄れがちです。
「またか」と思わず、頻度が増えていないか、内容がエスカレートしていないか慎重に見ていかなければなりません。
Twitterなどで「死にたい」と呟く人は多いです。
知人に自傷を日常的にしている人がいる、という人も多いでしょう。
その人たちは、
「リストカットくらいで本気で死ぬ気は無いだろう」
「死にたいと言う人に限って死なないもの」
などと思われがちです。
自傷や死にたい気持ちを経験すると「10年以内に自殺するリスクが数百倍になる」と言われています。
自殺は実は身近にある死です。
正しい知識を持ち、あなた自身も、あなたの大事な人も守りましょう。
次回は自殺を防ぐ、正しい対処法を見ていきます。