前回記事の続きです。
参考:双極症の当事者が、治療や支援について「感じていること」「希望していること」とは?
先日、双極症(双極性障害)の当事者お二方と貴重な話をさせていただきました。
再度ご紹介させていただきます。
まずは、「双極ライフ」で有名な松浦秀俊さん(@bipolar_peer)、そして、うつ病診断だったころに出版にご経験のあるらぴさん(@9ru9ru_rapid)です。
前日に思い立っての突然の声掛けにも関わらず、お会いしてもらえてとても嬉しかったです。
ひとつのテーマではなく、話の中で印象的だったエピソードなどを、箇条書きでまとめていきたいと思います。
すべてのお話を文章にはできませんでしたが、雰囲気だけでもお伝えできれば幸いです(*^^*)
Contents
先の約束の難しさ
今回の会について「急なお誘いですみませんでした」と伝えたところ、松浦さんは、
前もって約束していると、当日どんな調子か読めない。
直前のお誘いはむしろアリ。
という趣旨のことを話されました。
多くの精神疾患において、例えば1か月後の約束が守れるかどうかは(当日に心身の状態が約束を果たせるレベルなのか否かは)、悩ましい問題です。
双極症の場合は、先の予定についての話をしている時に、気分が通常モード、もしくは軽躁以上であれば、
「大丈夫!行くね!」
「OK!楽しみにしてます」
などと安易に返事してしまい、当日が近づくにつれて、
「なぜ約束してしまったのか、とても行けそうにない」
と落ち込み、自責的になることもしばしばです。
その点、
「明日なんだけど、一緒にランチしない?」
などと誘ってもらえたら、非常に返答しやすく、OKしておいて直前にお断りするような心苦しいことは減りますね。
過去記事にも書きましたが、病気のことを打ち明けている近しい人や職場の人とは、「先の予定についてのルール」を作っておくことがポイントです。
今回の話のように、「直前にお誘いしてもらう」のもひとつ。
「ドタキャンになってしまっても相手に迷惑のかからない約束に限る」
「約束を持ち掛けるのは自分からにする。調子のいいときに誘う」
などもよいルールかと思います。
どれだけ早く、適切な治療&回復ルートに乗れるか
Ⅰ型とⅡ型では症状の差異があり、また同じ病型でもコントロールの難しさは個人差が大きいです。
その点を踏まえた上でも、発症してどれだけ早いうちに適切な治療や支援を受けられるかは予後に影響します。
お二人のお話を聞き、改めてそのことを実感しました。
前回記事にも書きましたが、双極症の診断に至るまでの年数は最近ではかなり早くなってきています。
らぴさんの発症時と松浦さんの発症時では、精神科医の双極症の認識はもちろん、診断基準も変化していることもあり、単純に比較はできませんが、松浦さんは早くに適切な治療・回復コースに乗れた人なのかなと感じました。
松浦さんを知る人はご存知の通り、体調のコントロールを徹底してされていますから、長期にわたり仕事を継続できていらっしゃる理由は、単純に治療・回復に早く行きつけただけではないことは明白ですので悪しからず。
らぴさんについては、双極症の診断に至るまでの紆余曲折があり、聞いているだけでも大変苦労されたことが伝わってきました。
双極症の人が「うつ病の治療」を受けることのリスク、またその影響が長くにわたり続くことをらぴさんは教えてくださったように思います。
また、私の知る限りでも、
知人に精神科医療に関わる人がいて早期に医療・支援を受けられた患者さん
逆に、
精神科受診に否定的な家族がいて受診の遅れた患者さん
色々な方がおられますが、こればかりは運だなと感じることもあります。
ただ、双極症についての情報を啓発していくことで、患者さん自身も、周囲の人たちも、今より少し、医療や支援に結び付くことが早くなる、また、適切に制度やサービスの利用ができるようになると考えます。
双極症×「○○」
双極症についての情報や支援が必要なのは当然として、現在では双極人の属性により、深堀りした情報やサービスが必要になってきていると感じます。
診断基準の問題はあるにせよ、双極症と診断される人は増えてきています。
それに伴って、そういった需要が出てくるのは当然と言えば当然のことですね。
(双極症に限らず、メンタル疾患と診断されながらも、社会生活やプライベートを充実させようとする人は多いです)
松浦さんは「双極トーク」改め「双極ワーク」として、「双極症×働く」をテーマに活動されていますが、その東京のイベントに、全国津々浦々から参加する方がおられるという話に驚きました。
(ホント、すっごく遠くから!)
松浦さんは支援者であり当事者でもあるという立ち位置におられ、単に「双極症と働く」をテーマにした会が地元に無いからというだけでなく、松浦さんの存在に魅かれて東京まで足を運ぶ人も多そうです。
前回記事でも書きましたが、地方では医療機関や公的なサービスにしても選べるほどは無く、民間の現代的なサービスや集まりはとても気軽に利用できる距離にはないという方は多いです。
そのスキマを埋めたいと考えている医療者・支援者・当事者はきっと多くて、私が耳にしていないだけで、おそらく色んなことがスタートしているのだと思います。
当事者発の様々な発想やサービスが今後はどんどん世に出てくると想像します。
それは、リアルもあり、ネット上でもあるでしょう。
ささやかながら、Twitterなどもそのような場の一端を担っていると感じます。
「双極症×働く」の次は、どんな「双極症×○○」を目にするのか楽しみです。
(友人・恋愛・結婚などの対人関係もの、趣味、芸術など??)
生活リズムや習慣の大事さと、正すことの難しさ
双極症では「対人関係社会リズム療法」が有効とされています
・・・が、
生活リズムや生活習慣について、主治医や支援者から度々改善を促されながらも、なかなか行動に移せない人は多いと思います。
「分かっちゃいるけど」
夜更かしをしたり、昼まで寝たり、夕方以降にカフェインを摂ったり、つい深酒してしまったり。。
(だって人間だもの・・・と言いたくなりますよね)
座談会では、お子さんのいる松浦さんと、
「子どもに合わせた生活をしていると、否応なしに理想的な生活リズム・習慣になる」
ということで頷き合いました。
一定の時間に起床・就寝する、早い時間に外遊びに付き合い日光を浴びる、遊びや外出に付き合うことで体を動かしている、などなど。
子どもがいるいないに関わらず、できる人にはできることですよね。
ただ、私は大人だけの時と生活がガラッと変わりましたし、ずっと大人だけの生活だとしたら、生活を大きく変えられたか自信がありません。
※乳児期には夜中に起きる必要があり、生活リズムが乱れる。また、子どもがいることで心理的にも身体的にもストレスが強まることはもちろんあります。子どもの有無で病状が好転するかどうかは読めません。
今回は幼い子供がいることが生活リズムを強制的に正してくれる話になりましたが、ほかにも否応なしに生活リズムを正される環境はあると思います。
なかなか自分一人では是正できない人は、どんな環境下なら生活リズムが変化するか考えてみることをおすすめします。
双極症ならではの感性
元々の創造力や芸術的な才能が、双極症の症状と相まって、その結果、素晴らしい作品を作り上げる人たちがいます。
そのレベルの高低は別として、躁的な状態に傾いた時に、何か心の奥から湧き上がるものを感じたことのある人は多いでしょう。
それがトラブルの種になるケースもありますから、何とも難しいのですが、その湧き上がってくる何かをうまく扱えれば、人の心を揺さぶるものを生み出すことができるのでしょう。
らぴさんとは今年の春ごろに一度お会いしていましたが、ラピッドサイクルな気分の波に悩みながらも、創造力を発揮できる機会を虎視眈々と狙っていらっしゃるようでした。
「今後やりたいこと」をテーマに話していたときに、らぴさんから次々と出てくるアイデアは未来的で、聞いている私もワクワクしました。
双極症の有名人にも芸術的な才能に長けた方は多いですが、病気のない人なら感じえない感覚を体験することは芸術の分野ではプラスに働くと感じます。
軽躁・躁の病相では満ち溢れるエネルギーから集中して作品に取り組み、また、絵画であれば色彩に富む表現になることも。
一方のうつ病相は意欲が低下し、大変苦しい時期ですが、その苦しさを芸術に昇華する人も多いと思います。
クリエイティブなタイプの双極人で難しいのは、
「治療により気分の波がコントロールされると、クリエイティブさが損なわれる」
と、治療に及び腰になる点です。
(もちろんすべての人がそうであるわけではありませんが)
一方で、激しい病状をそのままにしておくことはリスクが高いため、妥協点を探っていくことになります。
クリエイティブ系の人は、どんなものを生み出せるかが人生の満足度に大いに影響しますから、治療者としては悩ましいのですが、作品を見せてもらうと素直にすごいと感じますね。
お会いしてみて
お二人にお会いしてみての率直な感想です。
らぴさんとは2回目。
らぴさんは独特な雰囲気をお持ちで(もちろん良い意味で^^)、その場の空気を優しくしてくれる、存在感のある方です。
穏やかな口調ながら、伝えたいことをしっかり伝えようとする意志が感じられる人。
笑顔が素敵な女性です。
松浦さんにお会いするのは初でしたが、SNSのアイコンや取材記事でお顔は存じ上げておりました。
実際に会ってみて、写真で見ていた通りの優しい印象の方で、遠方から会いに行った人がきっとたくさんのものを得られるだろうなと感じる、お話の上手な方でした。
終始和やかに、美味しい食事をしながらお話させていただけました。
お会いした日はお二人とも気分症状は比較的落ち着いた状態でしたから、会うときによって印象が変わることがあるかもしれません。
(私も??)
この辺も、できるだけ周囲にはフラットに見せるのか(家族や近しい友人にはありのままだとしても)、その時その時の状態をある程度ありのままに表現するのか、悩みどころではあります。
ただし、それに正解は無く、それぞれの心地よい方、生きやすい方を選ぶことが大事かと思います。
なんにせよ、まずまずのコンディションで集えたことが幸いなことでした。
「病気になったからこそ」
夢見ることはそれぞれでも、初対面で打ち解け、盛り上がれたのは、「双極人」という共通項があったからに他なりません。
「精神の病気」というとネガティブな印象を持たれる方が多いでしょう。
もちろん、手放しでこの病気になってよかったと言う人は稀です。
しかし、「病気になったからこそ」得られるものがあると私は信じていますし、おそらくお会いしたお二人もそう感じていらっしゃると、勝手な想像をしています。
今はとてもそう思えない、双極症の波に振り回されている方が、
少しでも新しい発想ができるよう、
わずかでも次のステップに進めるよう、
3者それぞれに活動をしていきます。
また、その成果を持ち寄ってお話できる日を楽しみにしながら。
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました(*^^*)
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