「双極症(双極性障害)についての100の質問」企画、第57回目です。
今回のテーマは、
「双極症、同病の人とのお付き合い。躁状態での付き合いに困る双極人へのヒント」
です(・∀・)
以下、質問者さんからのメッセージです。
「入院時に知り合った同じ双極症の人と連絡先を交換してしまいました。躁状態になると頻繁に連絡がきます。いい人なのですが関係を断ち切ったほうがいいでしょうか?」
入院中は、同じ空間で毎日を過ごす、作業療法など各種プログラムに同席することなどを通じて、ほかの患者さんと親密な関係になることがあります。
連絡先の交換について、医療者は何らかのトラブルを懸念して患者さんに控えるように伝えることが多いと思われますが、実際にトラブルになり互いの精神状態に影響するケースもあれば、知り合って良い関係を築き、治療にも良く働くケースもあります。
相手が健常者の場合のお付き合い(友人・恋愛)について、精神疾患を患う人同士のお付き合い(恋愛)についての過去記事も参照してください。
参考:双極症、気分の波の中での友人や恋人との付き合い方。距離の取り方・頼り方。
参考:双極症、精神疾患のある異性とのお付き合いは控えるべき?病気への影響は?
Contents
躁状態の対人関係で想定されること
双極人が躁状態となると、対人関係にどのような変化があるのか、受け手側にどのような影響があるかを見てみます。
・連絡の回数が増える
⇒返事が大変、うっとうしく感じる
・早朝や夜間にも連絡が来る
⇒生活リズムを乱される、配慮が無いと感じる
・遊びの予定の回数が増え、遠出する、長時間に及ぶ、夜中まで遊ぶ、お金をパーッと使う
⇒生活リズムを乱される、疲労が強まる、相手に合わせて出費がかさむ
・ニコニコして上機嫌
⇒受け手側の精神状態にもよるが、大きな問題はない
・ささいなことにイライラする、怒りっぽい
⇒いつ怒り出すかビクビクする、思っていることを正直に言いにくい、その人を避けたくなる
・自己中心的な振る舞いをされる
⇒病気の症状と頭では理解していても自分を軽んじられたように感じる、ストレスがかかる
躁状態の友人のペースに合わせた付き合いをし続けると、生活リズムは乱れ、ストレスは強まり、自身の気分エピソードの再発リスクが高まります。
まずはルール作り
前掲の参考記事にも書いていますが、その友人と気分エピソードごとのルールを作ることが大事です。
今回のケースは双方とも双極人ですから、互いの気分症状の程度やどんな刺激やストレスで気分エピソードが再発しやすいかを念頭に置いたルール作りが必要です。
今までの付き合いの中での困りごと、もしくはうまく行った付き合い方などを振り返って、可能なら相手と一緒に検討してみましょう。
この質問者さんの困りごとのように、連絡が頻繁に来て対応に困るなら、下記のようなルールを決めます。
・ラインやメールなら返信は1日に1回にする、通知はオフにする
・電話ならかけていいのは〇時までと決める、それ以降はかかってきても出ない
・気分症状が落ち着くまではやり取りを休止する
この取り決めは、2人ともがその関係を、波はあれど続けていきたいと希望していることを前提とし、そのために必要なものとの認識が互いに必要です。
一方的に「このときはこうする」と押し付ける形は望ましくありません。
ただ、ルールを決めても全く守れず、治療に真摯に取り組む姿勢も見られなければ、自身の状態の安定を優先し、関係をいったん切ることもひとつです。
その人と付き合っていきたいかどうか
十分に症状がコントロールされていないと、どうしても対人関係に影響する時期は今後もあり続けます。それは相手だけでなく、質問者さん側も同様です。
それでもその人と付き合いを続けていきたいかどうかが、質問の答えになると思います。
質問者さんは「いい人なのですが」と断られていることから、相手の方は寛解期には特に付き合い上の問題はなく、むしろ付き合っていて楽しかったり、嬉しかったり、何か学びのある方なのでしょう。
病気の有無にかかわらず、相手に以下のような点があるならその関係は維持する価値があると思います。
・相手の中に人柄が良い、尊敬できるなど、ポジティブな面を少なくとも一つ見出している
・一緒にいて癒される、楽しいなどポジティブな感情が湧く
・共通の趣味や話題がある
・相手から学べることが何かある
これらはうつ病エピソードや躁病エピソード中には見えなくなることがありますが、気分症状の中にある人の姿をその人本来の姿と判断すること、その判断によって付き合いを断つことはNGです。
質問者さんは今現在困っておられるので「関係を切りたい」と思われることは仕方のないことですが、一度は「いい人」と感じた人です。
その人が落ち着きを取り戻してから今後の関係を決めたとしても遅くはないでしょう。
ただ、借金や暴力など躁状態のトラブルに巻き込まれると、相手がいくら寛解に至っても自身の気持ちが立て直せなくなるので、トラブルには巻き込まれないように距離を置くようにしましょう。
※前述の通り、ルール決めをしても全く守れず、治療もルーズであれば関係の継続は困難です。
まとめ
色んな考え方がありますから、ここで書いたことはたった一つの正解ではありません。
しかし「病気の症状」を理由に、せっかくつながれた人と人が別れてしまうことはとても残念なことです。
「病気」を抱える「友人・その人」として相手を認識するようにしましょう。
もし、病状のコントロールが非常に不良であれば、しばらく距離をとり、しかし、また思い出した時に連絡を取ってみてほしいです。その時には、今よりずっと安定した友人が再会を喜んでくれると想像します。
以上、「双極症、同病の人とのお付き合い。躁状態での付き合いに困る双極人へのヒント」について解説してみました(‘◇’)ゞ