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双極症、良くなりたい気持ちはあるが「つい怠けてしまう」人の改善策とは?

2019/06/26
双極症(双極性障害)100の質問
精神科医・さくら(@sakura_tnh)です。自身の知識と経験を活かし、人をワンランク上の健康レベルに底上げ=幸せにすることを目指しています。

「双極症(双極性障害)についての100の質問」企画、第65回目です。

今回のテーマは、

「双極症、良くなりたい気持ちはあるがつい怠けてしまう人の改善策とは?」

です(・∀・)

今回はお2人から類似の質問をいただきました。

以下、質問者さんからのメッセージです。

Aさん:「自堕落な生活から抜けられません。主治医には昔に比べてだいぶ良くなってきたので少しづつできることを増やしていきましょうと言われているのですが、何年も乱れた生活を送ってきたので、基本的な生活習慣の改善すら挫折してしまいます。最終的な目標は働けるようになることですけど、心のどこかで「このままのほうがラク」という思いがあります。ただの怠け癖ですが、どうしてもラクな方に逃げてしまいます。そんな自分が情けなくて仕方がありません。改善策はありますか?」

Bさん:「10年患ってきたのですが、その期間中はほぼ引きこもりで、闘病に対してあまり積極的に活動できていませんでした。今まで自ら情報を集めるという事もなく、主治医からの勧めなどもあまりなかったのもあり、どうすれば寛解するかというよりも対症療法の状態でした。さくら先生のブログを拝見して、寛解するためには自ら行動しないといけないのだと気づく事ができましたが、自身を律することができず怠けてしまい、なかなか行動に移すことが難しいです。どうすれば寛解のために動くことができるか自分でもわからず、毎日時間を無駄に過ごしています。どのように改善すると良いでしょうか?」

Aさんはいずれの就労を目指して、Bさんはまず寛解に至ることを目指しているようです。

お2人とも、そのためには自ら行動することが必要であることも、頭では理解されているようです。

Aさんの場合は、気分は安定しているのだけれど、うつ状態での過ごし方が定着してしまい、せっかく寛解に至っているのに、ステップアップできていない状態と推測します。

Bさんの場合は、現在うつ状態で、そこから脱するための活動ができていない状態と推測します。

いくら周囲が働きかけても・・・

さて、Aさんの主治医は行動することを勧めている一方、Bさんの主治医は病状のせいもあってか行動をすることをあまり勧めてはいないようです。

ここで分かることは、医師がどう関わろうが、本人が動かなければ同じだということです。
(もちろん、医師側の「上手な働きかけ」も大事ですが)

Aさんは主治医から助言を受け、Bさんは主治医からは具体的な言葉は無いのかもしれませんが、このブログを読んでくださり、お2人とも現状で取り組むべき活動は把握していると思われます。

いつも読んでくださっている方は分かると思いますが、改善策はひとつですよね。

できることから行動することです。

「え?だから、行動し出すための方法を聞いてるんでしょ?」

と思われた方。

以前の記事でも書きましたが、

脳科学的には、

「意欲が高まる」⇒「行動できる」

ではなく、

「行動し出す」⇒「意欲が高まる」

が正しいです。

お2人ともその意識が欠けていると思います。

Aさんは「行動したものの続かなかった」というニュアンスかもしれませんが。

本当に現状を改善したい時に「周囲に求めるべきこと」

大変厳しいことを書きますが、本当に良くなっていきたいなら、

「怠けグセ」「自分が情けない」「自分を律することができない」

などと、できない理由や自己否定的なイメージを言葉にし、できないことを自分に納得させたり、他者に同意を求めることは、まずは少しでいいので減らしましょう。

「そうだね。今はまだ仕方ないよね」

「怠けじゃないよ。病気なんだから」

いかがでしょう?

心の中で自分に対してこう言っていませんか?

もしくは、誰かにこう言ってもらいたい気持ちはありませんか?

自分に同意すること、他者に同意してもらうことで「行動しない・したくない」自分を肯定、強化することになります。

(※回復基調で次のステップに移れるくらいの状態の方を想定した言葉です。重度のうつの方や、現状でとても無理な活動をしようとしている方は想定していませんのでご容赦ください)

私自身、うつ状態からの回復期にダラダラと過ごしてしまった時期がありました。

その時は「どうせ自分はダメだから」「このままでもういいんだ」など、お2人と同じようなことを考え、それを他者に向かって口にしたり、ネガティブなブログに書いたりしていました。

当時の私が「行動したくないための言い訳について、他者に同意を求めるな」なんて言われたら「弱音を吐くことも許されないのか!」なんて反発したかもしれません。

でも、振り返ってみると、自分がそこから抜けられたのは、「行動すること」の積み重ねでした。

今なら分かります。

家族や支援者、主治医に求めるべきことは、現状のままでいいとの「お墨付き」ではなく、

①現状の活動で客観的に見て問題なさそうかのチェック

②活動への助言

③応援

です。

本当に行動していきたいなら、その想いを周囲に伝えること、「応援してほしい」とお願いすることです。

周囲からの一日一回の声かけがあるかどうかでも行動できるかどうかに影響するでしょう。

人は変化を恐れる生き物

人は、悪い方向への変化だけでなく、良い方向への変化についても不安になるものです。

「今のままがラク」という気持ちはある意味、生き物としてふつうの気持ちなんですね。

また、Aさん、Bさんのように、

「今のままがいいとは思っていないけれど、最悪でもない」

という状態は、一番モチベーションが上がらない状態かもしれません。

(※これは安定化して理想的な生活のできている人が現状維持を期待するのとは別の話と考えてください)

変化することができない理由を探し求めてしまうものです。

エネルギー的には十分行動できる段階にあるとすると、お2人の現状は「行動できない」のではなく「行動したくない」ことの表れと考えられます。

今後のビジョンを思い描いてみる

ご自身のこれからのビジョンを思い描いてみましょう。

できれば、病気があること前提でないビジョンをまず考えてみてください。

・どんな生活をしたいか

・どんな仕事をしたいか

・どんな趣味を楽しみたいか

・どんな場所へ出かけたいか

・どんなことを学びたいか

・どんな人間関係を築きたいか

今の時代、人生は長くなったとは言え、時間は有限です。

せっかく行動できる状態にまで回復してきているわけですから、今後のビジョンがクリアになれば、動き出さずにいられないと思います。

「行動」を堅苦しく考えない

行動と言っても、前掲の記事にあるようなスモールステップのささやかな活動からでOKです。

それすらできないと仰るのなら、ここでいくらメッセージを送ってもお2人に影響することはできません。

でも、こうやって質問をくださっていること自体、現状を打開したい想いがあるのだと信じています

具体的なヒントはブログやTwitterでいつも書いている通りです。

・「今」の状態で少し頑張ったら取り組める、ささやかな活動から取り組むこと

・あれもこれもではなく、ひとつのことから取り組むこと

・体調などの記録とともに、できたことを記録すること

・できたことを寝る前に思い返して自己効力感を高めること

・周囲に公言して、周囲にも援助してもらうこと

習慣化チャレンジの企画もおすすめ

そろそろ本格的に行動開始したいだろうお2人には、7月1日よりTwitterで開始する「#66日間習慣化チャレンジ」に参加してほしいと思います。

参考:少し自分を変えたいあなたへ♪「#66日間習慣化チャレンジ」と習慣化の7つのヒント。

上記の記事にも今お2人が取り組みたいことへのヒントが詰まっていますので参考にしてください。

まとめ

主治医を含め、家族や支援者はもどかしい気持ちでお2人を見ていることと思います。

せっかく次のステップに移れそうなのに、もったいないな。

でも、あまり強く言ったり、しつこく言ったりしたら、病状に差し障るかも。

回復基調の時期に適切に行動できないと、周囲の人は「声かけしてもムダだな」と半ばあきらめてしまうかもしれません。

それは双極人にとっての大きなデメリットになります。

今、少ししんどいけれど、一日一日を頑張ってみること自身のためだけでなく、家族や支援者の励みにもなることを覚えておいてほしいと思います。

最後のヒント、

「一日の疲れが翌日に持ち越さない程度の活動」

が今やるべき活動の目安です。

お2人と、同じ状況で足踏みしている人を陰ながら応援しています。

以上、「双極症、良くなりたい気持ちはあるがつい怠けてしまう人の改善策とは?」について解説してみました(‘◇’)ゞ

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