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双極症「つい不規則な生活になり、薬をきちんと飲めない」人への具体的対処法。

2019/07/01
双極症(双極性障害)100の質問
精神科医・さくら(@sakura_tnh)です。自身の知識と経験を活かし、人をワンランク上の健康レベルに底上げ=幸せにすることを目指しています。

「双極症(双極性障害)についての100の質問」企画、第67回目です。

今回のテーマは、

「双極症、つい不規則な生活になり、薬をきちんと飲めない人への具体的対処法」

です(・∀・)

以下、質問者さんからのメッセージです。

「一人暮らしです。服薬の大切さは分かっていますが、つい不規則な生活になってしまい、きちんと薬を飲むことができません。何かいい方法はありますか?」

服薬の大切さを理解する

しょっぱなから厳しい言葉になります。

「大切さは分かっていますが」と書かれていますが、腑に落ちていないと感じます。

大きなダメージを受けてから服薬の大切さを身に沁みて知る人は多いですが、このブログで繰り返し伝えているように、そうなる前にもう一歩深い理解をしてほしいところです。

生活リズムを整える

本当に病状をコントロールしたい気持ちがあるのなら、生活リズムを整えることは薬物治療と並ぶ治療の一環ですから、今日から改善しましょう。

質問者さんの「不規則な生活」の詳細は分かりませんが、

・日ごとに起床時間や就寝時間が大きくばらつく

・日ごとに一日の作業量や活動量が大きくばらつく

・だいたい毎日、昼過ぎまで寝て明け方に寝る

・だいたい毎日、作業や活動をし過ぎている

上記の日ごとにばらつくタイプか、毎日遅寝遅起きタイプかと推測します。

以前は、人が活動しやすい時間帯でタイプ分けして「朝型」「夜型」などと言われていましたが、最近では人間にはクロノタイプが4つあると言われており、睡眠や活動に適した時間帯はそれぞれです。

こちらの記事も参照してください。

参考:朝、決まった時間に起きれない。想定される3つの状況での定時起床のヒントとは?

以下が簡単なクロノタイプの説明です。

①ライオン型

人口の15〜20%を占め、いわゆる朝型で、朝から昼までが活動的

・必要な睡眠時間は7時間
・適した就寝時間は22時
・適した起床時間は5時半〜6時

②クマ型

人口の50〜55%を占め、中間的なタイプで午後より午前中の方が活動的

・必要な睡眠時間は7時間以上と長め
・適した就寝時間は23時
・適した起床時間は7時

③オオカミ型

人口の15〜20%を占め、夜に活動的で、朝は弱い。

・必要な睡眠時間は7時間
・適した就寝時間は24時
・適した起床時間は7時半

④イルカ型

人口の10%を占め、夜に活動的。珍しいタイプ

・必要な睡眠時間は6時間と短めで浅い
・適した就寝時間は23時半
・適した起床時間は6時半

お気づきの通り、夜型のオオカミ型でも、24時が推奨就寝時間です。

「私は夜型でいつも3時ごろまで起きてます」

というのは、本人はうまく生活しているつもりでも、体に大きな負担を強いていると考えた方がいいでしょう。

人間がその力を安定して発揮して過ごすには、少なくとも24時には眠り、また、朝も早くても5時までは寝ていることが大事です。

これは双極症の無い人でも同様の話ですが、生体リズムの乱れが病状に直結する双極人には最低限守っていてほしいポイントです。

当然ですが、服薬をきちんと行うにしても、リズムが整っていないと守れないでしょう。

どのクロノタイプにせよ、ご自身に合ったペースで「規則正しい生活」を行うことが大事です。

内服のチェック体制を整える

質問者さんは1人暮らしとのことで、内服管理はご自身でしていらっしゃるのでしょう。

同居の家族がいなくても、親や兄弟、または親しい友人でも、一日一回「今日の気分はどう?」と連絡を取り合って、その中で内服確認をしてもらうといいと思います。

状態が安定していること、薬を今日も飲めたことを共有すれば、互いに安心ですし、家族の病気への認識が深まり、再発の兆候が見られた際に一緒に対処していく気持ちも高まります。

または、内服の管理アプリや、壁掛け式・ポケットタイプのお薬カレンダーを利用することも一つです。

夕方の薬をうっかり忘れていても、寝る前に飲めばOKであることが多いので、よく忘れる人は主治医や薬剤師に、忘れた時の対処について確認しておきましょう。

この辺は基本ですので、工夫無しにきっちり飲める人以外は早期にチェック体制を整えましょう

処方内容を見直す

あなたの内服薬は一日何回でしょうか?

これも当たり前のことですが、一日の服薬回数が多いほど、管理が煩雑になり、

・うっかり飲み忘れる

・服薬時間を取り違えて飲んでしまう

などのトラブルが起こりやすくなります。

双極症でよく処方される薬剤の一日の服薬回数(+α)を、添付文書上の記載からまとめました。
(適用外使用のもの含む)

・リチウム(リーマス)

1日に2〜3回、症状が改善して維持療法を続ける場合は1日に1〜3回

・ラモトリギン(ラミクタール)

1日に1〜2回

・バルプロ酸(デパケン)

1日に2〜3回、徐放錠なら1日に1〜2回

・カルバマゼピン(テグレトール)

1日に1〜2回

・クエチアピン(ビプレッソ)

徐放錠のビプレッソは1日1回就寝前、食後2時間以上あける

・オランザピン(ジプレキサ)

1日1回

・アリピプラゾール(エビリファイ)

1日1〜2回

その他、睡眠薬や抗不安薬、場合によっては抗うつ薬を併用しているかもしれません。

双極症の薬物治療の理想は、処方がリチウムなどの単剤のみとなり、寝る前に内服するだけで、安定して過ごせることです。

単剤にはならなくとも、1日1回で済むタイプの薬の組み合わせであれば、就寝前にまとめると飲み忘れはかなり防げるかと思います。

実際には、そこまですっきりした処方になっていない方も多いと思いますが、せめて内服回数を減らし、毎日きっちり薬を飲むことのハードルを下げることが大事です。

最も回数が多くて朝昼夕食後、眠前の4回です。
(糖尿病や漢方の食前薬があればさらに増えますが)

まずは1日3回に、可能なら1日2回に回数を減らすことで、内服が守られ、毎日一定の血中濃度が保たれ、症状がコントロールできると良いです。

おそらく、質問者さんはきちんと内服できていないことを主治医に伝えられていないでしょうから、まずはそれを正直に伝えて、処方の工夫をしてもらいましょう。

きちんと飲めていないことを隠していると

内服を守れていないことを主治医に伝えていないと、患者さんの不利益となることは病状が安定化しないこと以外にもあります。

医師は患者さんがきちんと内服できていないかもしれないことを想定しており、内服の確認は必ずします。
(治療開始から100%きちんと飲めている人は少数です)

そこで、患者さんが「欠かさず、決められた時間帯に飲めています」と仰ると、例えば採血でリチウムの値が低く出た場合、

「この人は血中濃度が上がりにくいタイプだ。もう少し量を増やさなければ」

と考えたり、

「十分な量を試しても病状に効果が無い。ほかの薬を試そうか」

と考えたりします。

必要以上の薬が処方されることになったり、今の薬で合っていたかもしれないのに、次々にほかの薬を試すことになってしまったりします。

または、家族さんからの情報で飲めていなかったことを知ると、その後、医師は内服を守れているか、より確認するようになり、患者さんは不快な思いをしますし、せっかくの診察時間の一部が内服確認のために消費されることになります。

「薬を決められた通りに毎日飲むこと」

その難しさは医師も重々承知していますから、協力して、話し合って、内服しやすい仕組みづくり、確認の仕組みづくりをしてほしいと思います。

習慣化の工夫

本日より、ツイッターで「#66日間習慣化チャレンジ」という企画をしていますが、内服もひとつの「習慣」です。

参考:少し自分を変えたいあなたへ♪「#66日間習慣化チャレンジ」と習慣化の7つのヒント。

習慣化の第一のヒントは、その行動をできるだけ単純化・簡素化することです(内服回数を減らす)。

第二のヒントは、今すでに習慣になっていることに新しい習慣をくっつけることです。

例えば、夜寝る前にはほとんどの人が歯磨きをすると思います。

「そろそろ寝よう。歯磨き歯磨き・・・」と、ほとんど無意識に行っているはずです。

これくらい無意識レベルになっている習慣の前後に「服薬」という習慣をくっつけましょう。

第三のヒントは、自然と内服する流れになる仕組みづくりです。

洗面所で歯磨き後に飲むのなら、洗面所に小皿を置き、そこに1回分の薬を入れておきます。

歯磨き後に歯ブラシを戻す場所のすぐそばがベストです。

薬を手に取り、洗面所の水で飲みます。

空いた小皿に次の日の薬を入れて寝ます。

翌日も無意識に、自然な流れで、内服ができる仕組みです。

まとめ

リチウムは、添付文書上は維持期にしか1日1回にはできないのですが、午前中に受診して血中濃度を測るときは朝内服すると数値が高く出てしまうこともあり、寝る前1回の形をとる医師が増えているかと思います。

腎障害についても1日2回より1日1回内服の方が影響は少ないため、特に長期で飲むこと前提ですから、1日1回が理想的です。

白血球が増加する副作用は1日2回の方が影響が大きいとの報告がありますが、白血球の増加は大きな問題にはなりませんので、過敏にならなくても良いかと思います。
(内科受診時に白血球の増加する疾患を疑われることがあるので、おくすり手帳は必ず提示しましょう)

医師側は医師側でできる工夫はしますので、患者さんは患者さんのできる工夫をしていただき、長期にわたる気分安定を得てほしいです。

個人的には、いずれは統合失調症の持効性注射剤のように、4週に1回の注射で病状をコントロールできるようになれば、患者さんの毎日の手間も、医師側の「ちゃんと飲めてるのかな?」というやきもきも解消されていいのにな、と思います。

(リスペリドンの持効性注射薬は、双極症の維持期において補助的使用が有効だったという報告はあるものの、現状は適用外ですし、2週に1回タイプ、ほかの薬を内服している前提のものです)

以上、「双極症、つい不規則な生活になり、薬をきちんと飲めない人への具体的対処法」について解説してみました(‘◇’)ゞ

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